昨年大躍進の和田竜二騎手と、迫る数字を叩き出した荻野極騎手

2018年01月27日(土) 12:00


◆武豊騎手のデビュー2年目の時と比較してみたら

 先週の当コラムに、「よく勝つジョッキーになるための必要条件は、上位人気に推される馬に乗る機会を増やすこと」なんていうことを書きました。「そんなの当たり前だろ」と言われる話だとは思いますが…。

 今週はその続き。またまた当たり前の話ですが、人気薄の馬に乗ってもなかなか勝てないというデータをご紹介します。以下は、去年1年間に、各騎手が9番人気以下の馬に乗ったときの成績。数字は左から、そういう馬の騎乗回数、全騎乗回数(全騎乗回数に占める割合)、1、2、3着に来た回数です。

C・ルメール 4 803 (0.5%) 1-0-0
戸崎 43 920 (4.7%) 0-1-2
M・デムーロ 2 661 (0.3%) 0-0-0
和田竜 232 1010 (23.0%) 6-5-10
福永 61 729 (8.4%) 1-2-4
川田 41 582 (7.0%) 0-3-6
内田博 192 953 (20.1%) 1-2-4
田辺 94 679 (13.8%) 0-3-3
岩田 173 828 (21.0%) 3-5-10
武豊 48 604 (7.9%) 0-3-2
藤田菜 216 379 (57.0%) 2-3-2
荻野極 293 713 (41.1%) 5-9-8
野中 393 599 (65.6%) 2-2-12

 昨年のリーディング上位10人に、藤田菜七子騎手、同騎手と同期の荻野極騎手、1年先輩で同きゅう舎所属の野中騎手を加えてみました。それにしても、上位10人と若手3人の“騎乗割合”がこれほど違うとはねぇ。

 ただ、上位10人の中では、やはり和田竜騎手が異彩を放っています。9番人気以下の馬でも10回に1回近い割合(厳密に言えば9.1%)で3着以内に来ていました。

 これに近い数字を叩き出したのが荻野極騎手。9番人気以下の馬を3着以内に持ってきた割合が7.5%あります。同騎手は見習騎手の中で最多の47勝をマークしましたが、そのうち10.6%は9番人気以下の馬によるもので、これが成績を押し上げた、とも言えるでしょう。

 ところで、武豊騎手のデビュー2年目、1988年の成績を見ると、669回騎乗した中で、1番人気馬に騎乗した機会が135回(20.2%)もあり、46勝をマークしました。この年は113勝していますから、そのうちの34.1%が1番人気馬騎乗時に挙げたものだったわけです。それに対し、9番人気以下の馬に騎乗したのは51回だけ。全騎乗数の7.6%にとどまり、成績は3勝2着3回3着1回でした。武騎手の場合、デビュー間もない頃から人気馬への騎乗依頼が次々に寄せられていたことを裏付けています。

 ちなみに、去年の荻野極騎手は1番人気馬に33回騎乗(全騎乗数の11.3%)、7勝2着7回3着5回という実績を残しました。

 人気薄の馬で好成績を挙げて存在感をアピールすれば、人気馬への騎乗依頼も多くなる、かもしれません。でもそれはなかなか難しそう。数字を見る限り、騎手の世界で若手がのし上がるのは並大抵のことじゃないと改めて痛感しています。

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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