第6話 キズナ

2012年07月09日(月) 18:00

▼前回までのあらすじ
福島県南相馬市の小規模牧場・杉下ファームは、2011年3月11日の東日本大震災で津波に襲われた。代表の杉下将馬が救い出した「シロ」という愛称の繁殖牝馬は、牧場に戻って牡の仔馬を産み、息絶えた。直後に原発事故が起き、将馬は仔馬を連れて、知人女性が継いだ神社に避難した。仔馬は、境内の厩舎で乳母と暮らすようになる。4月のある日、仔馬のいる放牧地に大きなイノシシが迷い込み、仔馬に突進してきた。

『キズナ』

 ジグザグに駆けていた仔馬が放牧地の奥でターンし、猛り狂ったように突っ込んでくるイノシシに真っ直ぐ向かって行った。

 将馬のそばにいた家族連れから悲鳴が上がった。

 ぶつかる、と思った刹那、仔馬が舞うようにイノシシの上を飛び越えた。

 イノシシは勢い余って牧柵に突っ込み、大きな音を立てて転倒した。すぐさま立ち上がって仔馬に突進しかけたが、・・・

続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

登録済みの方はこちらからログイン

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

島田明宏

作家。1964年札幌生まれ。ノンフィクションや小説、エッセイなどを、Number、週刊ギャロップ、優駿ほかに寄稿。好きなアスリートは武豊と小林誠司。馬券は単複と馬連がほとんど。趣味は読書と読売巨人軍の応援。ワンフィンガーのビールで卒倒する下戸。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』など多数。『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』で2011年度JRA賞馬事文化賞、小説「下総御料牧場の春」で第26回さきがけ文学賞選奨を受賞。最新刊はテレビドラマ原作小説『絆〜走れ奇跡の子馬』。

関連サイト:島田明宏Web事務所

新着コラム

コラムを探す