2012年09月03日(月) 18:00
▼前回までのあらすじ 福島県南相馬市の杉下ファームは、2011年3月11日の東日本大震災で津波に襲われた。代表の杉下将馬が救い出した牝馬は牧場に戻って牡の仔馬を産み、息絶えた。仔馬は「キズナ」と名付けられた。キズナは、美浦の大迫調教師とともに訪ねてきた馬主の後藤田によって1億円の高値で購入された。後藤田が所有する北海道の牧場で馴致、育成されたキズナは、2歳の春、美浦トレセンに近い育成場に移った。そこで将馬は、キズナを担当する女性調教助手に出会った。
『静と動』
キズナに乗った内海真子が投げつけたヘルメットは、綺麗な弧を描いて将馬の胸元に飛び込んできた。
それを受けとって途方に暮れていると、また真子が声を上げた。
「今すぐこの馬をあなたの牧場に連れ帰ってください!・・・
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島田明宏
作家。1964年札幌生まれ。ノンフィクションや小説、エッセイなどを、Number、週刊ギャロップ、優駿ほかに寄稿。好きなアスリートは武豊と小林誠司。馬券は単複と馬連がほとんど。趣味は読書と読売巨人軍の応援。ワンフィンガーのビールで卒倒する下戸。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』など多数。『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』で2011年度JRA賞馬事文化賞、小説「下総御料牧場の春」で第26回さきがけ文学賞選奨を受賞。最新刊はテレビドラマ原作小説『絆〜走れ奇跡の子馬』。 関連サイト:島田明宏Web事務所