疾風に勁草を知る

2014年06月05日(木) 12:00


◆「勁草」になっていたワンアンドオンリー

 平穏な日ばかりではないから、だれしもそれなりの覚悟を固めて対策を用意しておくことが望まれる。と言っても、困難に立ち向う気概があるかどうかが問題だが。「疾風に勁草(けいそう)を知る」と言う。勁草は強い草のことで、激しい嵐の日でも強い草ならすっくと頭をもたげて立っている、嵐の日にこそ強い草の真価が発揮されるものと示しているのだが、風のない日なら、強い草も弱い草もない。しかし、勁草のように生きる心がけはしておきたい。

 ダービーが終ってみて、「疾風に勁草を知る」を考えてみた。クラシックレースの中でも、ダービーはどれよりも激しい嵐だ。それまで最速の上がりタイムをマークしたものであっても、それだけに頼ったのでは通用しない。あるていど前へ前へと攻めが実現できたものでないと勝機が見い出せないのがダービーだ。ワンアンドオンリーは、それをやって見せた。それまでの戦い方を見ていると、早めに前に出て行くリスクが考えられた。だが、弥生賞、皐月賞と負け続けた経験が生きたのか、2番という好枠を生かす戦い方が功を奏した。ワンアンドオンリーは勁草になっていたのだ。ここまで来るのに、厳しい体験のなかったものでは勝てないというのが今のダービーのように思える。その点、イスラボニータの2着も大いに評価できる内容だった。

 どんなに好成績をおさめようとも、「疾風に勁草を知る」を実現したものでないと、本当の評価は下せない。

 過去の安田記念の勝ち馬一覧を見ると、短距離だけを走って年度代表馬に輝いたタイキシャトルに目が止まる。不良馬場を克服しての優勝もさることながら、渡仏してドーヴィルの欧州伝統のマイルGI戦、ジャック・ル・マロワ賞を勝ち、欧州の競馬関係者に大きな衝撃を与えたことを思い出す。一週前にシーキングザパールがモーリス・ド・ゲスト賞を勝っていたこともあったが、タイキシャトルは勁草だったことに間違いはない。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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