存在感を誇る『英国競馬の華』ロイヤルアスコット開催展望

2015年06月10日(水) 12:00

 英国競馬の華と言われるロイヤルアスコットの開催が、来週に迫っている。

 王室が主催しエリザベス女王をはじめとした王族が連日足を運ばれるという、舞台設定の華やかなさに、5日間で8つのG1を含む18もの重賞競走が行われるという、番組の豪華さが加わり、1年の競馬カレンダーの中でも抜きんでた存在感を誇る開催となっている。

 改めて強調するまでもなく、今年も競馬ファンならば見逃せないカードが満載だ。本来ならば全重賞を展望したいところだが、ここではG1競走のみ、見どころを簡単にご紹介していきたいと思う。

 初日(16日)の開幕カードは、恒例のG1クイーンアンS(芝8F)だ。ここは、前々走のG1ドバイターフ(芝1800m)、前走のG1イスパーン賞(芝1850m)を含めて、昨年8月から6連勝中の仏国調教馬ソロウ(セン5)と、暮れのG1香港マイル(芝1600m)、前走のG1チャンピオンズマイル(芝1600m)を含めて、こちらも昨年11月から6連勝中の香港調教馬エイブルフレンド(セン5、父シャマーダル)を、昨年のG1英二千ギニー(芝8F)勝ち馬で、今季初戦のG1ロッキンジS(芝8F)快勝のナイトオヴサンダー(牡4)が迎え撃つ。日本から参戦のルルーシュ(牡7)にとっては、相当に分の悪い相手だ。

 ソールパワー(セン8)が、レース史上初となる3連覇に挑むのが、初日の第3競走に組まれた、グローバルスプリントチャレンジ第5戦のG1キングズスタンドS(芝5F)だ。初日の第4競走に組まれた、欧州3歳マイル王決定戦のG1セントジェームスパレス(芝8F)。ここには、G1英二千ギニー(芝8F)とG1愛二千ギニー(芝8F)を連勝中のグレンイーグルス(牡3)という絶対的存在がいて、オッズ1.5〜1.6倍という圧倒的1番人気に支持されている。

 2日目(17日)のメイン競走が、日本のファンにとっての今年のロイヤルアスコットのメイン競走となるG1プリンスオヴウェールズS(芝10F)だが、ここが、かつて、世界のG1競走でこれほど難解なレースはなかったのではないかと思えるほどの、史上空前の大混戦模様となっている。

 既にご案内のように、日本から昨年秋のG1天皇賞(芝2000m)勝ち馬スピルバーグ(牡6)が参戦。更に北米から、昨年の全米年度代表馬カリフォルニアクローム(牡4)が、豪州からザチャンピオンシップスのG1クイーンエリザベスS(芝2000m)勝ち馬クライテリオン(牡4)が遠征。これを、英愛仏の精鋭が迎え撃つという構図で、つまりはそれだけでも力量比較が困難な上に、有力馬たちがそれぞれに不安材料を抱えていることが、混戦に拍車をかけているのだ。

 例えば、前売り1番人気に推されている昨秋のG1チャンピオンS(芝10F)3着馬フリーイーグル(牡4)は、今季初戦に予定していたG1タタソールズGC(芝10F110y)を風邪で回避。果たしてどこまで出走態勢が整っているのか、疑問符がつく。この路線のG1・2勝馬ザグレイギャツビー(牡4)は、そのG1タタソールズGCで圧倒的1番人気を裏切り4着と、不可解な敗戦を喫している。エクト(牡4)も、ここが今季初戦の上、そもそもこのメンバーに入って勝ち切る力量があるのかという、根本的問題がある。ウェスタンヒム(牡4)も、G2・G3だと強いが、G1だとひと息足りない馬だ。

 そんなこんなで、オッズ20倍以下に、スピルバーグを含めて10頭以上がひしめくという、カオス状態となっている。

 3日目(18日)のメイン競走は、長距離路線の最高峰G1ゴールドC(芝20F)だ。ここは、5歳馬ながらキャリアわずか4戦。しかし、昨秋のG2ブリティッシュチャンピオンズ・ロングディスタンスC(芝16F)、今季初戦となったG3ヴィンテージクロップS(芝14F)を含めて、負け知らずの4勝を挙げている、フォーゴットンルールス(セン5)が、1頭抜けた人気となっている。長距離界にニュースターが誕生するかどうかが焦点だ。

 4日目(19日)の第3競走に組まれているのが、今年新設された、3歳限定の短距離G1コモンウェルスC(芝6F)だ。前売りは「3強」状態を示唆しているが、中でも主役と目されているのが、デビューから無敗の5連勝でアスコットのG3パヴィリオンS(芝6F)を制した後、前走ヘイドックのG2サンディレインS(芝6F)で2着に敗れ連勝が止まったリマト(セン3)だ。相手候補の筆頭が、北米調教馬ながら昨年のロイヤル開催にも遠征し、LRウィンザーキャッスルS(芝5F)を完勝したフーテナニー(牡3)である。秋にはG1BCジュヴェナイルターフ(芝8F)を制して、距離に対する融通性を実証。今季初戦となったキーンランドの一般戦(芝5.5F)も6.1/4馬身差で楽勝しての遠征となっている。3番手評価が、昨季のG1チーヴァリーパークS(芝6F)勝ち馬で、前走G1英千ギニー(芝8F)でも3着に健闘したティギーウィギー(牝3)で、ここまでの3頭が差のないオッズで続いている。

 4日日の第4競走が、3歳牝馬によるG1コロネーションS(芝8F)だ。ここは、この原稿を書いている9日の段階で、5日に行われたG1英オークス(芝12F10y)出走組の動向が不確定なため、主要ブックメーカーが発売を停止しているのだが、おそらくは、昨秋のG1マルセルブーサック賞(芝1600m)勝ち馬で、前走G1愛千ギニー(芝8F)2着のファウンド(牝3)、G1仏千ギニー(芝1600m)勝ち馬エルヴェディヤ(牝3)、G1英千ギニー(芝8F)2着馬ルシーダ(牝3)の、3頭による争いになるはずだ。

 そして、最終日(20日)のメイン競走として行われるのが、グローバルスプリントチャレンジ第6戦のG1ダイヤモンドジュビリーS(芝6F)だ。ここは、初日のG1キングズスタンドSと両睨みながら、こちらに廻る公算大と言われている豪州調教馬ブレイズンボウ(牡3)の評判が高い。この路線の水準の高い豪州で、昨年11月のG1クールモアスタッドS(芝1200m)、今年3月のニューマーケットS(芝1200m)と、この路線のG1・2勝の実績を誇る馬である。

 G1・8競走のみ、駆け足で展望してきたが、これ以外にも、04年のドワイエン、10年のハービンジャーといったG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS勝ち馬が、前哨戦として走っていた最終日のG2ハードウィックS(芝12F)や、11年のG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS勝ち馬ナサニエルが直前に使っていた、4日目のG2キングエドワード7世S(芝12F)なども、見逃せないカードである。

 5日にわたる競馬の祭典を、皆様もぜひお楽しみいただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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