スケールアップして素晴らしい馬体に/セントライト記念

2015年09月20日(日) 18:00


この秋の中山のソフトで少しタフなコンディションは望むところ

 振り返ると「セントライト記念」は、関東馬が8連勝もしている非常に珍しい3歳重賞である。

 関西馬が遠征して来ないからだろう、と考えるのは早計。8連勝の期間に関西馬は計「49頭」も出走している。だが、その成績は【0-4-5-40】なのである。

 理由は簡単。菊花賞を勝ち負けするような関西の有力馬は、方向も方角もまるで違うセントライト記念に出走することはなく、王道の「神戸新聞杯」に出走するからであり、遠征して来る関西馬は、たとえば今年のグリュイエールブランドベルグのように、菊花賞の出走権利が欲しいからだった。

 それを示すように、セントライト記念の出走馬からは、もう「13年間」も菊花賞の勝ち馬は生まれていない。

 ところが今年、サトノラーゼンベルーフ、(菊花賞出走とは限らないが)キタサンブラック。獲得賞金額から楽に菊花賞出走が可能な、かつ有力馬となりそうな馬が3頭もセントライト記念に出走してきた。

 近年、菊花賞とは縁の薄い中山の重賞に出走していて、大丈夫なのだろうか。結論は、まったく問題ない。01年のマンハッタンカフェ以来ずっと、セントライト記念の出走馬から菊花賞馬が誕生しないのは、単に出走馬のレベルが低いだけである。

 なぜ、池江厩舎のサトノラーゼン、ベルーフがセントライト記念に回ってきたのか。推測するしかないが、こっちの方が相手有利で、確実に結果が出せるというような現実的な理由ではなく、ノーザンFを中心の社台グループの菊花賞出走予定馬が何頭もいるので、オーナーサイド(生産牧場)の使い分けの意向が大きいと思われる。

 サトノラーゼン、ベルーフが長距離輸送を気にするなら心配だが、まったくそんなことはなく、すでに再三関東に遠征している。2頭の能力を素直に評価して大丈夫と思える。

 ただし、配当面と、秋の変わり身に期待して、東のブライトエンブレムから入りたい。皐月賞は4着止まりだが、ドゥラメンテには約3馬身も離されたとはいえ、3着キタサンブラックとは同タイムの1分58秒8。才能勝負の最初の一冠とすれば上々の内容だった。

 裂蹄で日本ダービーは断念したが、夏の立て直しに成功。素晴らしい身体になって秋を迎えることになった。

 母ブラックエンブレムも春はもう一歩の善戦止まりながら、秋の秋華賞を制している。活力あふれる馬体、存在感の増した動きを見ると、母と同じような成長曲線を描いている可能性が高い。スパッと切れるというより、札幌2歳S、弥生賞で示した長続きする末脚が最大の持ち味と考えると、この秋の中山のソフトで少しタフなコンディションは望むところだろう。春よりスケールアップしているのは間違いない。このあとの菊花賞3000mへの適性は見解が分かれるが、中距離2000m前後がベストに近い可能性はきわめて高い。強気なスパートに期待する。

 サトノラーゼン、ベルーフ、この距離ならのキタサンブラック。関西馬3頭の評価は下げられないが、気配のいいミュゼゴーストは穴馬に加えたい。

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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