一段上を見る勝利

2015年10月01日(木) 12:00


ショウナンパンドラのオールカマー制覇

 願望、それも心の奥底から沸き上がる願望が出てくれば、それは何かを変えるきっかけになる。偶然かもしれないが、日常の中でそれを発見できたらしめたものだ。意識は必らず明確なビジョンをつくり出そうと動き出すからだ。あとは、うまくいくと確信できるようになれるかどうかだけだ。懸念や不安を抱かず、一歩でも前に動けるようであれば、小さな夢を叶える可能性が出てきたと思いたい。

 夢の実現について、松下幸之助はこんな言い方をしていた。「常に一段上を見る。そして一段上の夢を着実にこなしていって、その結果として今があるだけです」と。どんな小さな、ささいなことであっても、とにかく実現させることで次のステップアップにつなげていく。成功者の言葉と実践の中にこそ、夢を叶える真実があるのだと、勇気づけられる。「わが道、一を以て之を貫く」、つまり一つの道理で貫いていこうと決めたら、とにかく突き進む勇気を持ちたい。それを見せてくれる競馬から力をもらうことがあるではないか。

 今まさにステップアップをと戦っている馬たち。そんな中で「一段上を見る勝利」をつかんだショウナンパンドラ。オールカマーで牝馬として18年ぶりの優勝という快挙を称える前に、この秋にかける目標、天皇賞を見据えて、牡馬相手のGII戦を選んだところを注目すべきだろう。通常なら、秋の天皇賞へのステップには毎日王冠、京都大賞典を選ぶことが多いのだが、本番までのレース間隔を空けるためにとここを戦った。そしてつかんだ「一段上を見る勝利」。心の奥底から沸き上がる願望は明確なビジョンをつくり、今や確実に一歩大きく踏み出している。

 秋華賞で牝馬のタイトルを取ってから一年、この秋は、世代を超えた大きな夢を抱くところまで来ているのだ。ここまでの蹄跡を振り返るまでもなく、常に現実を確かめつつ、少し前をと歩みながらも、そこには確信があったように思う。強い願望がそうさせたかもしれないが、必ずうまくいくという思いが信頼につながっていったからこそ、いまがあるのだ。その戦い方のようにどこまで加速して行けるか。自分の願望をそこにかぶせてみるのも、競馬のひとつの見方かもしれない。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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