常識が通用しないG1戦線

2015年10月31日(土) 12:00


常識が覆されるならラブリーデイ?

 秋華賞で大外18番枠の馬が勝ったと思ったら、母の父=サクラバクシンオーという馬が菊花賞を制しちゃいました。最近までウイニング競馬のレギュラー解説者だったスポニチの岡本草太記者が28日付けの紙面に書いていたように、“常識が通用しない”今秋のG1戦線。データ作戦派にとっては厳しい戦いが続いています。

 とはいえ、ミッキークイーンもキタサンブラックも、枠順や血統を考えなければ“筆頭候補”だったわけです。どの常識が覆されるのか、それを見抜く力が問われているような気もします。データは常識を映す鏡。天皇賞もまずはデータから狙いを立てていくことにしましょう。

 常識が通用しない、という流れが続くなら、ラブリーデイだと思いますよ。なにしろ去年までの10年間で、前走が京都大賞典だった馬は1頭も1〜3着に来ていません。これを逆手に取るわけです。ただし、このタイプの馬が勝ったのは11年前。2004年のゼンノロブロイが京都大賞典2着から優勝しています。10年間来なかったくらいでそれを常識にしちゃうのはいかがなものでしょう?

 常識と言えば、東京芝2000メートル戦はディープインパクト産駒が強い、というのをご存知ですよね。2013年以降、先週までの同条件レース147戦の成績を調べたところ、ディープインパクト産駒は29勝を挙げていました。2位がステイゴールド産駒の12勝ですから、その倍以上。勝率は.197と2割近くに及んでいます。これだけの数字を見せつけられたら、もう常識と言っていいはず。ラブリーデイを負かすとすれば、やっぱりディープ産駒でしょう。

 ご存知のとおり、今回は18頭中9頭が同馬の産駒。1965年の有馬記念で、出走馬8頭中5頭をヒンドスタン産駒が占め、ワンツーフィニッシュ(1着シンザン、2着ミハルカス)を果たした、ということがありました。ここでもそういうことが起きるかもしれません。

 じゃあ、どのディープ産駒が来るのか?これは素直に、王道と言える毎日王冠出走組から選びたいですね。過去10年の天皇賞優勝馬のうち、前走が毎日王冠だったのは6頭。その各馬の毎日王冠の着順は1、2、1、9、2、3着でした。これからすると、エイシンヒカリかディサイファが浮上。秋の天皇賞を逃げ切るのは難しい、という常識もありますから、逆にエイシンヒカリの逃切勝ちは期待できます。

 ちなみに、ディープとステイゴールドの産駒以外で東京芝2000メートル戦に強いのは、ハーツクライ、キングカメハメハ(2013年以降でともに9勝)、マンハッタンカフェ(同8勝)、ゼンノロブロイ、ネオユニヴァース(同6勝)あたり。キンカメ産駒も健闘しています。ラブリーデイが来てもおかしくありませんね。

 というわけで、ここ10年の傾向を無視すればラブリーデイ、脚質で常識を打ち破ればエイシンヒカリ。どっちかが勝つような気がしてきたんですけど…。

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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