2016年06月22日(水) 18:01
▲今週は「プリンスオブウェールズSの騎手目線での回顧」と「宝塚記念への手応え」
6月15日、海外GI3連勝に挑んだエイシンヒカリの挑戦が6着に終わった。厩舎陣営やユタカさんとレース後に話したわけではないが、個人的な見解として、人気を背負った逃げ馬の難しさ、そして何よりエイシンヒカリという馬の難しさを感じた一戦だった。
自分はもちろん、エイシンヒカリに騎乗したことはない。ただ、5馬身差で勝利した3歳未勝利戦からその強さにはずっと注目していたし、外ラチまで行ってしまったあの一戦(2014年10月19日・アイルランドT)を引き合いに出すまでもなく、難しい面があることもわかっていた。おそらく、いかに直線までスイッチを入れずに走れるかがあの馬にとっての肝で、「強さと脆さが同居した馬」というのが、自分のあの馬に対する印象だった。だから、プリンスオブウェールズSで注目したのも“前半のリズム”。焦点はその一点だと思っていた。
▲今や国内にとどまらず、海外でも存在感を見せるエイシンヒカリ(撮影:高橋正和)
実際、スタートしてしばらくは、すごくいいリズムで逃げていたと思う。でも、道中「あっ!」と思う瞬間があった。馬のハミの取り方が明らかに変わり、そこまで頭を起こし気味に走っていたのが、ハミに向かってグッと首を突き出すようにして走り出したのだ。ユタカさんもレース後、「最初は良かったんだけど、徐々にハミを噛み出して…」とコメントされていたが、一度そうなってしまったら、前に馬を置かずにリズムを取り戻すのは至難の業だ。
では、なぜ馬にそういった変化が起きたのか。考えられる理由は2つあり、ひとつ目は2番手の馬の動きだ。外目の2番手を追走していたのはウエスタンヒム(3着)で、鞍上はフランキー・デットーリ。競走馬という生き物は、斜め後ろにピタッと付かれると気持ちのスイッチが入りやすくなってしまう。俗にいう「突かれる状態」だ。
案の定、フランキーは外から巧みに寄せてきた。人気を背負った逃げ馬の宿命といえばそれまでだが、そこには“楽に逃げさせない”というフランキーの意志がはっきりと見て取れた。競馬だけに、ある意味フランキーの動きは当然ともいえるが、そうなると敏感なタイプの逃げ馬はつらい。
もうひとつは馬場。とはいっても、欧州独特の馬場に脚を取られたのではなく、・・・
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2013年にJRA賞最多勝利騎手に輝き、日本競馬界を牽引する福永祐一。まだまだ戦の途中ではあるが、有言実行を体現してきた彼には語り継ぐべきことがある。ジョッキー目線のレース回顧『ユーイチの眼』や『今月の喜怒哀楽』『ユーザー質問』など、盛りだくさんの内容をお届け。
福永祐一
1976年12月9日、滋賀県生まれ。1996年に北橋修二厩舎からデビュー。初日に2連勝を飾り、JRA賞最多勝利新人騎手に輝く。1999年、プリモディーネの桜花賞でGI初勝利。2005年、シーザリオで日米オークス優勝。2013年、JRA賞最多勝利騎手、最多賞金獲得騎手、初代MVJを獲得。2014年のドバイDFをジャスタウェイで優勝。
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