【ヤングジョッキーズシリーズに向けて】2015年デビュー、野中悠太郎の葛藤

2017年05月16日(火) 18:00

野中騎手1

ヤングジョッキーズシリーズ出場騎手たちをご紹介。今回は野中悠太郎騎手!


藤田菜七子騎手が来て…『やばいな、俺終わっちゃうな』

赤見:もうすぐYJSが始まりますが(野中騎手は本日5/16川崎TRから参加)、どんなお気持ちですか?

野中:すごく楽しみですね。僕ら若手騎手にとっては有り難いイベントだなと思います。地方の若手騎手の方たちともプライベートで交流があるんですけど、出ているみんなに負けたくないです。

赤見:地方で騎乗したご経験は?

野中:地方は高知と浦和しかないんです。高知はめちゃくちゃ乗りやすかったですね。新人王で乗せてもらったんですけど、内を開けるとは聞いていましたが、みんな他の場から来ているジョッキーばかりだったせいかそれほど気にならなかったし、とにかく乗りやすかったという印象でした。逆に浦和は難しかったですね。聞いてはいましたけど、コーナースタートってすごいですよね…。相当難しい印象です。僕は川崎(5/16)、門別(7/27)、船橋(10/26)に参加する予定で、特に門別に行けることが楽しみです。普段なかなか行く機会がないですから。

赤見:今年デビュー3年目になりました。自己分析すると現状はいかがですか?

野中:全然ダメじゃないですかね。自分ではそう思ってます。特に1年目は年間4勝でしたし、精神的にもけっこう苦しかったです。2年目で多少は良くなったんですけど、でも全然足りてないなって。

赤見:全然ですか?最近は人気薄で穴を開けてるイメージが強いですけど。

野中:そうなんですけど、2着3着なんですよね。どうせ穴開けるなら、勝って穴開けたいっていう気持ちが強くて。周りの方からも、「穴持ってくるよね」って言ってもらって嬉しいんですけど、でも頭で来ないとと思ってます。

赤見:デビュー当時と比べて、変わったなと感じる部分はありますか?

野中:前は大事に乗り過ぎていたというか、消極的だったんですよね。そういうレースをしているのを見てる先輩から、もっと若手らしく乗った方がいいんじゃないかって言われて。自分でもわかっていても、なかなか切り替えられなかったんです。でも、4月に国枝厩舎のダイワチャーチルで勝たせてもらった時に、自分から動いて行って勝てたんですよ。強い馬って、こういう競馬をすれば勝てるんだなって馬に教えてもらいました。そのレースで吹っ切れたというか、精神的に楽になりましたね。この経験が大きかったです。

野中騎手2

ダイワチャーチルに騎乗し後続に7馬身差をつけて圧勝(撮影:下野雄規、(C)netkeiba)

赤見:先ほどのお話に出て来た、アドバイスをくれた先輩というのはどなたですか?

野中:北村宏司騎手です。同じトレーナーさんに見てもらってて、一緒にトレーニングしているんですけど、「お前は掛かることにネガティブになりすぎだ」って言ってもらったり、いろいろアドバイスをもらって、自分の中で咀嚼して騎乗に繋げていこうと思ってます。

赤見:掛かることを意識し過ぎているんですか?

野中:掛かることというか、綺麗に抑えよう、綺麗に乗ろうとし過ぎているって田辺騎手にも言われましたし、その辺ちょっと人に見られてることを意識し過ぎているのかなって。最近はそういうのはあんまり気にしないようにしようと思ってます。後輩たちを見ていても、勝っている子は若手らしくガシガシ乗っている子が多いので、その辺は自分には足りないところなのかなって思いますね。

赤見:見た目も落ち着いた感じですよね?

野中:いやー(笑)、そうですね、大人しいとは言われますね。九州男児に見られません(笑)。

野中騎手4

「大人しいとは言われますね。九州男児に見られません(笑)」

赤見:兄弟子の丸山元気騎手とはまったく違うキャラですよね。

野中:対極ですよね(笑)。(兄弟子が)明るい人なので、余計に僕が大人しそうなイメージなのかもしれないです。性格は違いますけど、兄弟子とはよく話しますね。競馬のことはもちろんですけど、プライベートなこととかもよく話します。すごくいい先輩ですよ。

赤見:そして同じ根本厩舎には、1期下に藤田菜七子騎手もいますもんね。

野中騎手3

同じ根本厩舎所属の丸山元気騎手と藤田菜七子騎手(C)netkeiba

野中:すごくがんばってますよね。ただ、最初はちょっとやりづらかったというか、落ち込みましたけど。菜七子のせいじゃないんですけど、最初からものすごく注目されてた分、『やばいな、俺終わっちゃうな』って、その時期は本気で病んでましたね。まだデビューして1年でしたし、その頃は菜七子の方が数も乗って、重賞とかも乗っててすごいなと思いつつ、自分は本当にやばいなって。菜七子は可愛い後輩なんですけど、環境的にキツかったです。

赤見:そこをどう克服したんですか?

野中:成績を残すしかないので、これまで以上に真剣に競馬に向き合うようになりました。本気で努力して腕を磨いていかないと、と前向きに捉えて。結果的にはいい刺激だったと思います。

赤見:そんな落ち込んでいる最中、藤田騎手に川崎競馬場の特徴をアドバイスしてましたよね?

野中:僕は川崎で乗ったことがないんですけど、(川崎の)瀧川寿希也騎手と知り合いだったので、何かアドバイスできることがあればと思っていろいろ聞いて伝えました。今だと僕が逆に聞きに行きますけどね(笑)。菜七子は全国いろいろな競馬場で乗ってますから。

赤見:毎年新人騎手がデビューする中で、存在感を示していくのは難しいですよね。

野中:そうですね。さっきも言いましたけど、騎手は成績を残すしかないんです。それ以外で目立つ方法はないんですよね。後輩でもたくさん上手な騎手はいるので、そういう部分は盗んでいきたいです。最近は騎乗数も増えて、少しずつ乗せてもらえる厩舎も増えて、周りの方々には本当に感謝しています。

野中騎手5

「騎手は成績を残すしかないんです。それ以外で目立つ方法はないんですよね」

赤見:ちなみに、穴を開ける時ってどのタイミングで感じますか?

野中:なんとなく返し馬の感覚で、これいけるかなって。ただ、乗ってからじゃないとわからないですね。返し馬でキャンターに行ったあとに、これなら行けるんじゃないかって。

赤見:1頭1頭違うとは思いますが、もう少し具体的なヒントを下さい!

野中:ヒント…、そうですね、僕のイメージなんですけど、ダートで穴を開ける馬ってちょっと硬い馬が多いんですよね。歩きだけではちょっとこなそうだなって思うんですけど、割と走れるっていうか。あと馬が結構走る気持ちがある方が、タランとしている馬よりもいいかな。ちょっと硬くても、自分からどんどん走ってくれる馬の方が、僕としてはあるかなって感じます。

赤見:ありがとうございます!では今後の目標をお願いします。

野中:今年の初めに、年間600鞍以上、勝ち鞍30以上という目標を立てたので、それをしっかりと達成したいです。デビュー当初はキツかったですが、今競馬に乗るのがすごく楽しいです。2年目の夏くらいから楽しくなって来ました。今年3年目になるので、しっかり成績を残しつつ、馬券を買って下さるお客さんに貢献できるようにがんばります。

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常石勝義

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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