やはりどこか違う存在であったソウルスターリング

2017年05月25日(木) 12:00


◆大切なのは自分本来のリズムを守ること

 晴れて女王の座へ、ソウルスターリングのオークス制覇にはこの言葉がぴったりだった。春の二冠のいずれでも一番人気、全勝で迎えた桜花賞の3着で一変して暗転から再び明るさを取り戻せるかというところだったが、この陣営には、そんな心配はまるでなかった。心配しすぎない、過度に落ち込まないというお手本みたいなものだった。

 私たちを励ましてくれることわざはいっぱいあるが、悩みは深くとも、ひと言「明日は明日の風が吹く」と背中を押してくれる言葉には、立ち直る力をもらえる。失敗は誰にもある。要は、それをどう凌いで前を見つめるかなので、そのときに気分を切り替えさせてくれるこの言葉は、貴重な存在と言える。ちょっと気持ちがふさぎ込んだら、「明日は明日の風が吹く」とつぶやいてみるのもいい。

 ソウルスターリングの陣営の中でも、いつもムードメーカーとしての存在の大きい藤沢和調教師は、単勝1.4倍という支持に応えられなかった桜花賞の結果を、しっかりと受け止めていて、だから今度は大変という雰囲気はみじんも感じさせていなかった。道悪を気にしていつものこの馬のストライドではなかったので、あの結果は本来のものではない。週末の好天気は、この馬には何より。3歳牝馬同士のレースなら、2400米と言ってもスタミナ勝負にはならない。大切なのは、自分本来のリズムを守って走ること。そうすれば、だれよりも優れている一瞬の脚をくり出すことができると、オークスでの場面をしっかり頭に描いていた。そして、ルメール騎手のプレイは、全くその通りだった。緩い流れの中3、4番手でずっと我慢させ、直線は、先にモズカッチャンが出かかるのを見極めてから爆発的な末脚を発揮させていた。なんともあっさり勝ったように見える勝利は、すべてが、人馬のゆとりがそうさせたのだ。

 きゅう舎の中にいるときは、いつもラジオがきこえていて、外に出たときには遠くを見つめるのが好きというソウルスターリング。明日に吹く風がどうであるかではなく、きっとそうなるのを待っている、そんな風情に見えていた。やはりどこか違う存在だったのだ。「明日は明日の風を吹かせる」と言うべきだった。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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