2017年06月01日(木) 12:00
◆新たなダービーの勝ち方を示した
「勝算なきは戦うなかれ、勝算あれば実行あるのみ」という孫子の兵法を地で行くダービーの勝利だった。現役最多勝利を続ける藤沢和雄調教師が、どうしても勝てないダービーにどう取り組んでいるか、いつも話題になっていたが、レイデオロの勝利は、それをはっきりさせてくれた。
東京の2400米はタフなレースになるから、体のできていない若駒には辛い。勝算なきは戦うなかれで、人間の都合を押しつけてはならない。その馬本来の力をどう引き出すか、どう伸ばしていくかが肝心で、それは日程に縛られてはならない。あく迄も馬優先ということだが、まだだと思えばレースに出ても無理は強いない。
レイデオロのローテーションは、かつてほとんど見ることのなかったものと言ってよく、年明け、皐月賞をぶっつけで使ったのも、納得のいく充電期間を取ってのこと。結果は5着でも、高速決着の前々の競馬だったことからとそれを受け入れ、馬の気分を損なわずに走らせられたことを評価していた。ダービーに向う中間取材でも、皐月賞ではフィニッシュしてからの勢いが一番だったと評価していたが、それでもチームから気負った言葉は聞かれなかった。
そこで、実際のレースではどうなのかをじっくり観察したのだが、ルメール騎手はいつものように馬の気分に乗るようにスタートしてしばらくは後方に構え、ペースが緩いとみるや馬なりで上がっていき、3角を回るころには2番手につけていた。ダービーに限らずレースではいかに早く流れをつかむかが肝心と言うが、ルメール騎手のこの判断は見事と言うしかなかった。「勝算なきは戦うなかれ、勝算あれば実行あるのみ」を目の当たりにしている思いだった。
勝算の立つレイデオロの情況だったからこその戦い方であり、直線に入ってからの反応は実に素晴らしかった。やっぱりそうだったのだという感慨を覚えるシーンは、そう多くはない。その意味で今年のダービーは印象深かった。藤沢和雄調教師の影響を受ける者は多いと聞くが、レイデオロのダービー制覇は、新たなダービーの勝ち方を示したことになり、思うことの多いレースだった。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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