“国の動きを止めるレース”の新スポンサーに日系企業、賞金も増額

2018年02月21日(水) 12:00


◆2018年からは「レクサス・メルボルンC」として施行

 シンガポールとオーストラリアから相次いで、「国際競走」に関するニュースが飛び込んできた。

 まずはシンガポールから。今年5月20日にクランジ競馬場で行われるクランジマイル(芝1600m)が、招待競走として開催されることになった。14日に、主催するシンガポールターフクラブが明らかにしたものだ。

 シンガポールではかつて、シンガポール航空インターナショナルC(芝2000m)、クリスフライヤー・インターナショナル・スプリント(芝1200m)という2つの国際競走が催されており、前者を2006年にコスモバルクが、2007年にシャドウゲイトが制し、日本の競馬ファンにもお馴染みのイベントとなっていた。

 しかし、2015年の開催を最後に、両競走ともに廃止されていたのである。シンガポールターフクラブは、「シンガポール競馬の注目度と質を高めるという目的を達成し、使命を果した」ことが廃止の理由と説明したが、2競走のスポンサーだったシンガポール航空が当時、中東湾岸キャリアの攻勢を受けて財務面で厳しい時期を迎え、後援を続けることが困難な状況に追い込まれており、代わりのスポンサー探しも難航が予想されていたことから、廃止が決まったというのが大方の見るところであった。

 そのシンガポールターフクラブが、国際競走の復活をアナウンスしたのが、昨年8月のことだった。2019年から、従来と同じ5月の第3週目に、クランジマイルとライオンシティC(芝1200m)を国際競走として施行。前者には300万シンガポールドル(約2億4600円)、後者には135万シンガポールドル(約1億1077万円)の賞金を用意することを明らかにしたのである。

 シンガポールターフクラブのチョン・ブー・チン会長が14日に明らかにしたのは、クランジマイルに限り当初の予定を1年前倒しにし、今年から4頭の出走馬を海外から招待するというプランで、これを2019年の完全国際化へ向けたステップにしたいとしている。ただし、クランジマイルの今年の賞金は150万シンガポールドルに留まる模様だ。

 一方、オーストラリアから届いたのは、G1メルボルンC(芝3200m)のスポンサー変更と、賞金増額の話題だった。

「国の動きを止めるレース」と称されるメルボルンCは、2004年からエミレイツ航空がスポンサードしてきたが、2017年をもって同社が撤退。2018年からの新たなスポンサーに決まったのがトヨタ自動車で、メルボルンCは同社の高級車ブランドであるレクサスの名を冠し、「レクサス・メルボルンC」として施行されることが、主催者のヴィクトリア・レーシング・クラブから13日に発表されたものだ。

 当面の契約期間は5年で、レクサスはレースだけでなく、前日に市内で催されるパレードや、枠順抽選会なども含めて、イベントを包括的に後援することになる。

 ヴィクトリア・レーシング・クラブは同時に、メルボルンCの賞金を増額するプランがあることも明らかにしている。 

 同競走は2012年から総賞金620万豪ドル(約5億3587万円)で施行されており、豪州における最高賞金競走の座にあった。だが、昨年10月にシドニーのランドウィック競馬場に、総賞金1000万豪ドル(約8億6430万円)のジ・エヴェレスト(芝1200m)が誕生。メルボルンCは豪州首位の座から陥落していた。そのジ・エヴェレストは、今年10月に行われる第2回競走の総賞金が、1300万豪ドル(約11億2359万円)に増額されることが、既に発表されている。

 メルボルンCの今年の総賞金は、後日発表になる予定だ。ただしヴィクトリア・レーシング・クラブ関係者は、「ジ・エヴェレストと張り合うつもりはない」とコメント。競馬関係者の間でも、賞金増額はありがたいこととしながらも、158年という長い歴史を誇り、国民的行事となっているメルボルンCと、創設2年目のジ・エヴェレストを、同じ枠組でとらえるべきではないという意見が大勢を占めているようだ。

 レクサス・メルボルンCの総賞金がいくらになるのか、正式発表を待ちたいと思う。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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