【陰のヒーロー】黒岩悠騎手(3)『キタサンブラックの第一印象“これは時間が掛かるな”』

2018年03月12日(月) 12:01

おじゃ馬します!

▲年明けに京都競馬場で行われた引退式でのキタサンブラック (C)netkeiba.com

昨年暮れの有馬記念を制し、見事引退の花道を飾ったキタサンブラック。JRAのGI7勝は史上最多タイの記録、通算獲得賞金の18億7684万3000円はテイエムオペラオーを超えてJRA歴代1位に。まさに歴史に名を刻んだキタサンブラック。その活躍の立役者こそが黒岩騎手です。デビュー前から引退まで調教を担当してきた黒岩騎手が、肌で感じてきた名馬への道のりとは? (取材:東奈緒美)


これはまたデッカイ馬が入ってきたな(笑)

 清水久詞厩舎の調教を手伝うようになったのはいつ頃からですか?

黒岩 たしか7〜8年前、先生が開業2年目くらいの頃だったと思います。

 どういったきっかけで?

黒岩 人手が足りなかったようで、手伝ってくれる人を探していたところ、ちょうど僕がフラフラしていたから、騎手クラブを通じて「暇じゃない?」「暇です」みたいな(笑)。だから、清水先生に直接お話をいただいたわけではないんです。

 そうだったんですね。トウケイヘイローの調教も担当されて、2013年のダービー卿CTでは、厩舎に重賞初タイトルをもたらしました。

黒岩 僕は騎手ですから、追い切りによく乗っていたんですけど、トウケイヘイローもそのなかの1頭で。いい馬でしたね。

 あの馬を通して、厩舎の信頼を勝ち得たのでは?

黒岩 ん〜、どうなんでしょう(苦笑)。今でこそ、スタッフのみなさんに「黒岩はちゃんと乗ってくれる」と認識してもらっている自覚はありますが、もともと清水厩舎はいい馬が多いですからね。だから、僕の力とかではなく、当たり前のことを当たり前にすれば、おのずと結果が出てくるというか。それを自分の力だなんて思ったら、その時点で終わりですからね。今もそうですけど、悩みながら、答えを探しながらやっているほうが楽しいですし。

おじゃ馬します!

▲「自分の力だなんて思ったらその時点で終わり。悩みながら答えを探しながらやっているほうが楽しい」

 馬の能力が前提にあり、そこからスタッフたちのリレーが始まって結果につながると。

黒岩 そうですね。全員がそういう意識を持って取り組まなければ、絶対に結果は出ないと思うので。

 さて、2015年の1月末にキタサンブラックがデビュー。デビュー前から跨っていたとのことですが、当時はどんな馬だったんですか? たしか、それほど注目を集める存在ではなかったような…。

黒岩 そうですね、まったく注目されていなかったと思います(苦笑)。最初の印象も、「これはまたデッカイ馬が入ってきたな」みたいな(笑)。乗り味自体はなかなかよくて、いい馬だったんですよ。でも、大きくて緩いものだから、坂路を上がっても自分の体を支え切れていない感じで、「これはまだまだ時間が掛かるな」という印象でしたね。・・・

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東奈緒美・赤見千尋

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

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