セレクションセール開催、新種牡馬のキズナやエピファネイアの産駒が上場

2018年07月18日(水) 18:00

生産地便り

セレクションの落札風景


サマーセールも含め、市場取引への移行が一段と加速

 日高で今年初めてとなる1歳市場「セレクションセール」が17日、新ひだか町静内の北海道市場にて開催された。

 前日16日を展示に充てて、セリ当日の比較展示は行なわず、午前10時からセリ開始という日程である。前日から来場者が多く、駐車場が満杯になるほどの盛況ぶりであった。

 主催者発表では、購買登録者数が前年比46名増の584名に達し、それだけ多くのバイヤーが1歳馬を求めて足を運んできているということである。

生産地便り

セレクション会場風景

 一週間前のセレクトセール1歳セッションは史上空前の活況を呈し、「セレクトで買い切れなかった」購買者も少なくなかったはずだ。

 午前10時にセリが開始された。前日に展示を実施しているため、この時間帯からのスタートはひじょうにありがたい。

 今年は従来のセレクションセールを二分割する形で、今回と、来る来月下旬のサマーセール初日(サマープレミアム)とに分割し実施することになった。したがって、今年のセレクションセールは、上場頭数が193頭(昨年は226頭)と前年より33頭の減少であった。
 
 結果はJRA日本中央競馬会の11頭(牡7頭、牝4頭)を含め149頭が落札され、総額23億4835万2000円(税込)の売り上げとなった。落札頭数が前年比35頭の減少となったことから、数字上ではかなりの落ち込みだが、売却率は77.20%と、好況に沸いた昨年(81.42%)には及ばないものの、まずまずの売れ行きであった。

 最高価格馬は30番アポロティアラの2017(父ロードカナロア、牡、鹿毛)の4100万円(税込4428万円)。母はフェアリーSを含む中央2勝馬で、新ひだか町三石の(有)山際牧場の生産・販売申込馬。落札者は了徳寺健二ホールディングス(株)。

生産地便り

最高価格馬、アポロティアラの2017(父ロードカナロア)立ち姿
生産地便り

最高価格馬、アポロティアラの2017(父ロードカナロア)の落札風景

 次点は2頭並んだ。まず124番アートスタジオの2017(父ヘニーヒューズ、牡、栃栗毛、生産・販売申込者ともに(有)矢野牧場、落札者・吉冨学氏)、146番ユメノオーラの29(父エピファネイア、牡、青鹿毛、生産・販売申込者ともに田中スタッド、落札者・松本好雄氏)の3400万円(税込3672万円)と続いた。

生産地便り

アートスタジオの2017(父ヘニーヒューズ)の立ち姿
生産地便り

ユメノオーラの29(父エピファネイア)の立ち姿

 牝馬では、154番フラワーロックの29(父ロードカナロア、青鹿毛)の3100万円(税込3348万円)がトップであった。生産・販売申込者は(有)酒井牧場、落札者は小林祥晃氏。

生産地便り

牝馬で最高落札価格となったフラワーロック29(父ロードカナロア)の立ち姿

 税込3000万円超の落札馬を拾って行くと、今の日高の人気種牡馬の傾向がある程度分かる。ロードカナロア(30番)、ジャスタウェイ(57番)、キズナ(82番)、ヘニーヒューズ(124番)、エピファネイア(146番)、ケープブランコ(149番)、ロードカナロア(154番)、キングカメハメハ(167番)、ダイワメジャー(175番)、エピファネイア(187番)、ルーラーシップ(193番)。ざっと見渡したところこの11頭が価格上位馬ということになるが、話題性のある新種牡馬の産駒の多い傾向が顕著である。

 この結果について、主催者の日高軽種馬農協・木村貢組合長は「最も気にしていたのが売却率ですが、77.20%と、それほどの落ち込みにならなかったことにホッとしています」と語り「このセール結果だけではなく、サマープレミアム(今回とほぼ同数の選抜された1歳馬が上場される)、それに続くサマーセール4日間の数字を見て判断したい」とコメントしていた。

 セレクションセールは過去5年間、ずっと売り上げ、売却率ともに上昇し続けてきたが、今年はいくぶん落ち着き、ちょうど数字上では、昨年と一昨年の中間くらいの結果になった形だ。

 サマーセールには、史上最多頭数の申し込みが寄せられており、庭先取引から市場取引への移行が一段と加速しつつある。

 今年、サマーセール初日のサマープレミアムは、5日間に及ぶサマーセールの日程の長さに配慮し、選抜された馬を初日に固めて上場する方式を採用した初の試みである。今回のセレクションの結果と、サマープレミアムの結果を天秤にかけて、生産者はそれぞれ自分の馬をどの市場に持って行くのが最も有利になるかを判断することになる。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

関連情報

新着コラム

コラムを探す