「ラップのマジシャンが解き明かす天皇賞(秋)のカラクリとは?」<第24回>夏目耕四郎

2018年10月22日(月) 18:00

夏目耕四郎

オグリキャップで競馬の面白さに目覚め、サイレンススズカと故・大川慶次郎氏の一言で自身の予想理論を開眼した夏目耕四郎氏。独自のラップ理論「ギャップレート理論」は根強いファンも多い。

フジテレビone「競馬予想TV!」やサンケイスポーツでの連載、書籍「夏目耕四郎のラップタイム重賞図鑑」など、さまざまな媒体でラップを用いた予想を展開している夏目耕四郎氏。「予想を始めた頃は、ラップを予想ファクターにする人が少なかった」というが、稀代の名馬と解説者の言葉がキッカケでラップに注目し、手作業でデータを集めて理論を確立していった。「今週末の天皇賞・秋は追走ラップが◎◎」と、笑みを浮かべる夏目氏の素顔に迫った。(取材・文=大恵陽子)

キッカケはオグリキャップとスーパークリークの激闘

 園田競馬場の向正面にある河川敷で夏目氏は少年時代、野球に打ち込んでいた。「競馬場という場所があって、馬の匂いがする」程度の認識は、中学生のときに偶然TVで見たレースで大きな興味へと変わった。

「1989年の天皇賞・秋で、スーパークリークとオグリキャップが1、2着のレースでした。『すごい世界がある』と感動して、それ以来毎週見るようになりました。体格的に騎手は厳しかったですが、高校3年間は地元の乗馬スクールに通っていました。ときどき馬房掃除もしたり、スクール内の大会では小さな障害を飛越しましたね」

 しかし、高校卒業後は専門学校に進学。競馬は趣味として楽しむ日々がしばらく続いた。そんなある日、競馬記事を読むために毎日買っていたサンケイスポーツに「編集補助アルバイト募集」という求人広告を見つけた。「もしかしたら競馬の仕事につながるかもしれない」との思いを胸に、整理部でアルバイトをスタートさせた。

「整理部はレイアウトや見出しを考える部署で、担当する分野はローテーション制だったのですが、競馬好きを認められて日本ダービーや有馬記念では特集ページの企画から携わらせてもらえました」

夏目耕四郎

競馬へのあくなき情熱と探求心が、現在の夏目氏のステータスを築き上げたことは想像に難くない。

ギャップレート理論の原点は故・大川慶次郎氏の一言

 東京で少しずつ競馬の仕事に近づいていたとき、運命の出会いがあった。

「競馬中継で解説の大川慶次郎さんが『この馬はスローの追い込み馬』っていったんです。僕がそれまでに持っていた知識は『追い込み馬はハイペースのときにしか来ない』だったので、ずっと胸に残っていたんです。その後に出現したのがサイレンススズカ。すごい脚で飛ばして逃げるけど、上がり3Fも最速でめちゃくちゃ強かった。『なんでこの馬はバテないんだろう?』という疑問と大川さんの言葉がグルグル回り始めて、『通過ラップが重要なんじゃないか』と考えたんです」

 気になり始めると、すぐに行動した。「もともとがデータ分析オタク」という夏目氏は、当時、渋谷にあったJRA関連施設に通い、大量のレースデータを集めた。

「映像と成績表を見ながら、ひたすら手書きで通過ラップなどを書き写して『マイノート』を作りました。結局、サイレンススズカは『逃げているけど、逃げていなかった』んですよね。他の馬だと速すぎる11.2秒を武豊騎手が手綱をブランとしたまま馬なりで走っているんです。それでいて末脚も使えるので、馬なり追走が速い馬なんだと気付きました。サイレンススズカは特別ですが、『その馬が使える上がり3F最速を繰り出すための追走区間ラップというのが個体によって違うんじゃないか?』という考えにいきつきました」

 そうしてギャップレート理論を少しずつ確立。競馬予想ブログを始めるとすぐに雑誌「競馬最強の法則」の目に留まり、さらにそこに書いた記事がフジテレビone「競馬予想TV!」スタッフの目に留まり、予想家として本格的に活動し始めた。

「毎週競馬をしているだけなので、今でも不思議な感じはありますね。予想家という職業があるとも思っていませんでしたから」

 29年前のちょうどこの季節、夏目少年が競馬中継をつけていなければ、予想家にはなっていなかったかもしれない。

夏目耕四郎

週末に行われる天皇賞(秋)で、夏目氏が注目馬にあげた一頭のスワーヴリチャード。2000m戦は春の大阪杯も勝っているだけに、勝機は十分といえそうだ。

秋の天皇賞で注目すべきは活躍顕著な4歳馬2騎

夏目氏の運命を変えた天皇賞(秋)が今年も迫ってきた。競馬場や距離、さらには重賞レースによってラップの傾向が変わると夏目氏は分析するが、秋の天皇賞はどんな特徴があるのだろうか。

「東京2000mは、向正面の直線もホームストレートも長いです。前半、中盤のペースはそんなに速くならず、上がり3Fの速い馬が有利です。ただ、秋の天皇賞はマイラーが出てきやすくて、彼らは『ペースが緩む』といってもそこまで遅くならずマイルのリズムで走るので、『上がり3Fで速い脚を使える、かつ道中の追走も速いペースで対応できる馬が強い』といえます」

 では、ここから導き出される今年の注目馬はどの馬だろうか。

「スワーヴリチャードです。春に安田記念を使いましたよね。あのレースは1400mに適性のある馬が多く出走するので、道中のペースがかなり速いんです。わざとそのペースを経験させて、休み明けで天皇賞・秋にぶつけてくるということは、メイチで獲りにきていると思います。スワーヴリチャード自身は2400mに適性ピークのある馬だと思うので、天皇賞・秋を勝とうと思ったら追走スピードが少し遅いんです。短い距離を叩いたことで馬が前向きになっていると思います。
あと、レイデオロも注目しています。スワーヴリチャードに先着していますし、オールカマーが強かったので、秋はこの4歳2頭でいいと思います」

 ラップをベースにした分析は予想だけでなく、アーモンドアイの牝馬3冠達成やオジュウチョウサンの平地勝利などをレース後に「その内容がどれだけ強いものだったか」という検証も行っている。

「なんだかんだで、1週間ずっと競馬ばっかり見ていますね(笑)」

 最後に、読者の皆さんにメッセージとウマい馬券のおすすめ活用術を教えていただいた。

「いろんな人の予想を見ると、競馬観が変わると思います。競馬は1着になる馬に本命を打たないといけない競技ではありません。3着の穴馬にしか本命を打たない人もいれば、『いつも本命は人気馬だけど、絶対くるよね』という人もいますからね。この人の本命はフォーメーションの3列目に塗ろう、とかっていうのもいいと思いますよ。
競馬は死ぬまで続けられる遊びなので、1日でも長く楽しんでいただきたいです。そのなかで、我々予想家などいろんな人の考えを参考にして競馬への知識をどんどん膨らませて楽しんでいただければ、僕らもやっている甲斐があります」

 必ず自分でも購入しているというウマい馬券の買い目を参考に、ぜひみなさんにも競馬を楽しんでいただきたい。

夏目耕四郎

本稿を執筆した同じ事務所の大恵陽子さんとの一コマ。今回の取材でも阿吽の呼吸を見せてくれた。

夏目耕四郎は『ウマい馬券』で天皇賞(秋)ほか厳選予想を提供します!

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