重賞初挑戦ながら接戦を制したラインシュナイダー/サマーチャンピオン回顧(斎藤修)

2017年08月17日(木) 18:00

ロスの少ない競馬で重賞制覇を果たしたラインシュナイダー(写真提供:佐賀県競馬組合)

 前日に行われたクラスターCには、地方馬にもグレード入着級の馬がいて、結果的にその2頭でのワンツーとなった。対してこのサマーチャンピオンの地方馬にはグレード実績のある馬は皆無。マサヤが地元で4連勝中とはいえ、南関東でA2特別勝ちまでという実績ではいかにも厳しい。

 そういうメンバー構成のダートグレードでは、中央勢が先行集団を形成し、地方馬はやや離れて後方集団という、まったく別のレースをしているかのような展開になることもめずらしくない。しかし佐賀では地元の期待馬が勝負に行くような場面がたびたび見られる。結果的に今回、中央の5頭が上位独占となったわけだが、地元馬の中では実力上位のマサヤが好スタートから先行集団を追走し、さらに高知のタッチスプリントも2コーナーあたりまでは5番手のグレイスフルリープに食らいついていった。普段走っている地元同士のレースとはペースも違うはずだが、勝負を諦めないこうしたレースぶりは見ていて気持ちがいい。

 好スタートはマサヤだったが、外枠からウインムートが無理せず先頭に立つと、すぐに隊列が決まって流れが落ち着いた。前半はゆったりしたペースで流れたが、向正面の中間あたりからペースアップすると、昨年の覇者グレイスフルリープが追い通しとなって脱落。3、4コーナー中間からは、それ以外の中央4頭の勝負となった。

 レーザーバレットはトップハンデ58kgゆえ末脚勝負というわけにはいかず、逃げたウインムートにぴたりとついていったものの直線を向いたところで脱落。3頭の追い比べとなって、残り100mを切ってウインムートの脚色が鈍り、最後は2頭の追い比べとなって、ラインシュナイダータムロミラクルをアタマ差で振り切った。

 最初の3Fが37秒4で、上り3Fが36秒3だから、ペースアップした後半でスタミナが残っているかどうかという勝負だった。

 中央馬の中では最軽量のハンデ54kgということもあって、もっともロスが少ない競馬ができたのが、勝ったラインシュナイダー。外枠から互角のスタートで、先行争いにならずすぐにペースが落ち着いたことから無理せず差のない3番手につけ、スムーズに競馬を進めることができた。前走まで27戦のうち24戦がダートの1400メートル戦。得意の距離で結果を出した。

 苦しい競馬でもっとも強いを競馬したのが、惜しくもアタマ差2着だったタムロミラクルだ。まずスタートで一完歩ほど後手を踏んだ。おそらく砂の深い内を通りたくないと考えたのだろう。外に持ち出すために位置取りを下げ、最初のゴール板を通過するあたりでは9番手。向正面から位置取りを上げていったが、そのタイミングで先行集団も徐々にペースアップしていた。ようやく先行3頭の直後にとりついたのは、3、4コーナーの中間過ぎ。ロングスパートで相当に長く脚を使っている。レースの上りが前述のとおり36秒3で、勝ったラインシュナイダーが36秒2。タムロミラクルはなんと35秒5で、さすがにそれ以上の脚を使うというのは無理だろう。佐賀記念かきつばた記念、そして今回と、地方のダートグレードはこれで3戦してすべて2着。地方の小回りコースもこなしているのだが、なんとも運がない。とはいえ、勝っていなければ今後もハンデや別定重量を背負わされることもなく、出走枠に入れればチャンスはあるだろう。

 1番人気で3着だったウインムートは、前走が初めてのダート。同じ1400mとはいえ、コースの形態も砂の質も違う。それでここも勝てれば相当なものだった。

 これでこのレースは2012年のテイクアベットから6年連続、勝った馬は重賞初制覇という結果。その前年、2011年に勝ったのは、JpnI勝ちでトップハンデ58.5kgのスーニで、翌年には59.5kgで3着に敗れている。それ以降、GI/JpnI実績がある馬の出走はなく(2013年にサマリーズが出走しているがJpnI実績は2歳時のみ)、したがってGIII/JpnIIIのタイトルでも相対的に実績上位となってハンデを背負わされることになる。GIII/JpnIIIで1、2勝程度の馬と、中央オープン勝ちの馬とでは、それほど能力の差があるわけでもなく、しかし重賞勝ちがなければそれなりにハンデに恵まれ、ここで重賞初勝利となるのだろう。今回も直線で競り合った3頭は、ここまで重賞未勝利、もしくは重賞初挑戦だった。来年以降の馬券検討の材料として覚えておきたい。

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