スローの前残りですべてがうまく運んだララベル/JBCレディスクラシック回顧(斎藤修)

2017年11月04日(土) 18:00

ララベルはパドックでも1頭だけ抜群に目立つ仕上がりだった(撮影:高橋正和)

 人気の中心になると思われたクイーンマンボの回避によって、3連覇がかかるホワイトフーガが単勝1.8倍の断然人気となった。中央6頭のうち3頭が地方初参戦、ワンミリオンスは休み明けということもあり、アンジュデジールが押し出される形での2番人気となった。

 どれがペースをつくるのだろうという逃げ馬不在のメンバーで先行争いにはならず。通常なら行き脚がつく2F目も速いラップにはならず12秒4で、1000m通過が62秒7というスローペース。最後の1Fを除いて、スタートから8F目まできれいに12秒台が並んだ。淀みのない流れは実際の数字以上に先行した馬には楽だったはずで、結果的に前残りの決着となった。出ムチを入れて2番手のプリンセスバリューはさすがに能力面できびしく4コーナーから後退したが、逃げたプリンシアコメータ、ぴたりと3番手のララベルが馬体を併せての叩き合いとなり、ララベルがアタマ差先着した。

 その直線、外のララベルが内にささってプリンシアコメータに接触し審議となった。結果、ララベル真島大輔騎手には2日間の騎乗停止の制裁が課されたが、降着にはならず。接触がなくてもララベルが先着していたという判断だったのだろう。

 勝ったララベルは、2歳時から活躍が期待され、南関東でトップクラスの活躍を続けてきたが、大事に使われたことで初めてダートグレード挑戦は、昨年4歳時のレディスプレリュードで4着。今年もマリーンCではホワイトフーガの2着があり、続くスパーキングレディーCでは、そのホワイトフーガを競り落としたものの、内から出し抜けをくらう形でアンジュデジールに差し切られていた。前走レディスプレリュードは明らかに仕上がり途上だったが、今回はパドックでも1頭だけ抜群に目立つ仕上がりだった。

 それにしても昨年のJBCレディスクラシックが、普段あまり強気のコメントをしない荒山勝徳調教師が「生涯最高のデキ」という状況にありながら、前日に脚部不安が出て競走除外。頂点を争う舞台で、今年もよく最高の状態にもってきたものと思う。

 ダートグレード初挑戦だった昨年のレディスプレリュード以降はダートグレードしか使われておらず、それでも惨敗が昨年12月のクイーン賞(10着)だけというのも、この馬の安定した能力の高さを示している。来春繁殖入りとのことで、このタイトルをとったことで、これで引退ということにしてもいいのではないかと個人的には思う。

 2着のプリンシアコメータは、1000万条件を勝って、前走が準オープンでコンマ2秒差の4着。牝馬のダートグレードでは何度も書いているとおり、「中央準オープンのダートで牡馬相手に勝ち負けをしている馬なら通用するレベルにある」というとおり。今回は、あとで詳しく触れるが、ホワイトフーガが凡走したことと、逃げてスローペースに持ち込んだことで結果を残した。

 驚かされたのは3着のラインハートだ。2着のプリンシアコメータに3/4馬身差まで迫ったこともそうだが、直線でのレースぶりがすごかった。前残りの流れで、3コーナーではまだ12番手。ラチ沿いを通って、4コーナーでもようやく前との差を縮めたかという程度の10番手あたり。直線を向いたところで前には行き脚の鈍ったティルヴィングがいて、その外へ。すると今度は、プリンセスバリューワンミリオンスが前で壁になった。その時点はそれほど進路を変更することなく、空いていた内に行けたはずだが、おそらくこの開催は砂が重いとされていた内には行きたくなかったのだろう。2頭分、外に持ち出してから追ってきて、プリンシアコメータの直後まで迫った。

 前2頭が39秒1で上がったところを、メンバー中唯一上り38秒台となる38秒4。中央では未勝利勝ちがダート戦だったが、以降の実績はすべて芝。しかも芝・ダートを通じて連対はすべて1400m以下だった。今後のダート牝馬路線でも活躍が期待できそうだ。

 ワンミリオンスは勝ち馬から2馬身ほどの差で4着。ブリーダーズゴールドCが回避となって、レディスプレリュードも仕上がりきらず回避。休養明けで馬体重-12kgの464kgはデビュー以来の最低体重で、万全の状態にはなかったようだ。ここを使ったことで、12月の船橋・クイーン賞にプラス体重で出てくるようなら、あらためての狙いになるだろう。

 アンジュデジールは中団を追走したまま、直線でも伸びる脚がなくワンミリオンスから3馬身離れての5着。ダートでも1400〜1600mあたりが適距離ではないだろうか。

 そして11着に沈んだホワイトフーガは、大井1800mコースでの不安がすべて出てしまったようなレースだった。外めの枠に入ればまだよかったかもしれないが、スローペースで道中は前後左右を囲まれてしまい、一旦下げて外に持ち出すということもできず。道中は掛かってしまう場面が何度かあり、直線を向いて追い出したが反応がなかった。

 ホワイトフーガは3歳時に同じ大井が舞台だったJBCレディスクラシックを制していて、たしかに53kgという斤量に恵まれていたということもあったが、そのときはブルーチッパーが飛ばして1000m通過が59秒4という超ハイペース。それゆえ中団でうまく流れに乗れたということがあった。牡馬一線級を相手にさきたま杯を圧勝したように、ホワイトフーガがもっとも力を発揮できるのは、左回りでコーナーを4つまわる地方の1400mではないか。

 牝馬限定のダートグレードは1600m以上しかなく、短距離志向の牝馬が活躍しようと思えば、たとえばコーリンベリーのように牡馬相手でも突き抜けるだけのスピードが要求される。以前のラブミーチャンも、そうした舞台でようやく制したのがJpnIIの東京盃までだった。まだそれほど層が厚いとはいえないダート牝馬路線で距離まで細分化してしまうとメンバーが分散してしまうという問題はあるが、地方競馬では多くの競馬場で設定できる1400mで、牝馬限定のダートグレードが1つか2つはあってもいいのではないだろうか。

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