逃げて強さを見せたコパノリッキー/東京大賞典回顧(斎藤修)

2017年12月30日(土) 18:00

完璧な逃げ切りを見せたコパノリッキー(撮影:高橋正和)

 GI(JpnIも含む、以下同)最多勝記録のかかった引退レースで、コパノリッキーは完璧な逃げ切りを見せた。

 逃げ宣言のコパノリッキーに対して、他の有力馬がどう出るのか。逃げる可能性のあった中でインカンテーションは行く気を見せず、競ってきたのは、ひとつ内枠のケイティブレイブだった。近走控えて結果を出していたが、これといった逃げ馬もいないメンバーだけにみずからペースをつくろうとも考えたのだろう。しかし最初のゴール板手前でコパノリッキーがハナをとりきった。

 競り合ったぶん、2F目が11秒1と速くなり、最初の3F通過が35秒5で、1000m通過は61秒3。近年の大井2000mの古馬GI(帝王賞東京大賞典JBCクラシック)では62秒台前半が平均的なペース。この舞台で1000m通過が61秒台だったのは2年前の東京大賞典以来のこと。そのときも逃げたのはコパノリッキーで、まったく同じ61秒3で1000mを通過。しかしそのときは直線失速し、勝ったサウンドトゥルーから1秒5も遅れて4着に沈んでいた。違いは、1000mを過ぎてからのペースにある。2年前の東京大賞典ではホッコータルマエに半馬身ほどの差でぴたりと付かれて突かれる形になって、6F目11秒9、7F目12秒0と、勝負どころを迎える前にペースアップせざるをえず、息の入らない流れになってしまった。

 しかし今回は6F目12秒9、7F目12秒9とペースを落として息を入れることができ、上り3Fは、12.6- 11.7- 12.8= 37秒1でまとめた。後続にしつこくからまれなかったのは幸運というべきで、レース半ばで息を入れることができ、直線を向いたところでペースアップ(11秒7のところ)して後続を突き放すという、逃げ馬としては完璧なレースになった。

 中団追走から上り3F=36秒5という末脚を存分に発揮したサウンドトゥルーだったが、ゴールでコパノリッキーは3馬身も前にいた。ケイティブレイブがスタート後の直線でもう少し突っ張るか、もしくは向正面で突いていれば、まさにサウンドトゥルーの末脚が生きる展開となったであろうが、もしそうしていれば、コパノリッキーもろともケイティブレイブも共倒れとなっていただろう。そうでなくともケイティブレイブは最後に脚が上がって2着のサウンドトゥルーから2馬身半差。いかにコパノリッキーが完璧な逃げ切りで強いレースをしたかがわかる。

 コパノリッキーが今年のJBCでは、クラシックではなくスプリントに出走したことでは、賛否があった。いや、否の意見のほうが多かったというべきか。南部杯を制してホッコータルマエのGI・10勝の記録に並び、その記録を更新するには、引退が決まっているだけに、秋3戦のうちどれかひとつを勝たなければならない。7歳になって、過去に経験のない1200m戦ということでは、残り3つのうちの1つを捨てに行くのか、と思われても仕方ない。しかし陣営は、JBCを捨て石にして、最後に残された2つを獲りに行った。そこには、まだ勝っていないチャンピオンズCを勝ちたいという想いもあっただろう。

 結果的に、JBCスプリントでもスピード競馬への適応を見せ、よもや勝ったかという惜しい2着。そこでのスピード競馬は貴重な経験となった。過去3回とも惨敗だったチャンピオンズCでは、ゴール前まで逃げ粘ってクビ、クビというきわどい決着の3着。そして引退レースとなった東京大賞典での鮮やかなまでの逃げ切りとなった。

 個人的にコパノリッキーのベストパフォーマンスを挙げるとすれば、2014年盛岡のJBCクラシック。スタートして行く馬がないと見た田辺騎手が迷わずハナを切り、スピードの出やすい馬場だったとはいえ、2分0秒8というコースレコードでの逃げ切り勝ち。2着のクリソライトに3馬身差をつけ、さらにワンダーアキュートホッコータルマエらも寄せ付けなかった。今回、年齢を重ねて衰えつつあったスピードを、JBCスプリントを使うことで再び呼び起こさせたと言ったら結果論に過ぎるだろうか。

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