【オールカマー 勝負の分かれ目】ライバルの癖を利用して進路を確保したルメール騎手の冷静さ

2018年09月23日(日) 19:50

ルメール騎手の冷静な騎乗も光った(撮影:下野雄規)

 昨年のダービー馬レイデオロ、同世代の皐月賞アルアインら12頭が出走する第64回オールカマーのゲートがあいた。

 1枠1番を引いた北村友一アルアインが好スタートを切り、馬なりで先頭に立った。が、4番枠のマイネルミラノが激しく追われて外から並びかけてくると、正面スタンド前でハナを譲り、2番手で1コーナーへと入って行く。

「道中は気分よく走っていました」と北村が振り返ったように、気持ちよさそうに四肢を伸ばしている。

 1番人気に支持されたレイデオロもまずまずのスタートを切り、ゲートを出たなりで中団につけた。「調教ではまだ100%ではないと感じましたが、すごくいい馬なので自信があった」と鞍上のクリストフ・ルメール。脚を溜めさえすれば最後は必ず伸びる、という、騎乗馬に対する信頼が伝わってくる位置取りだ。

 12頭は2コーナーを回りながら外回りコースに出た。先頭のマイネルミラノは1000mを1分0秒5で通過した。

 アルアインはその3馬身ほど後ろ。単独でハナを切っているような展開だ。

 レイデオロは、その5、6馬身後ろで折り合いをつけている。すぐ前の内には、武豊が手綱をとる2番人気のダンビュライトがいる。ライバルの動きを見ながら仕掛けどころを決められる、絶好のポジションと言える。

 3コーナーを回りながらラスト600mを切ったあたりで、馬群が凝縮しはじめた。

 それでも、逃げるマイネルミラノから離れた2番手がアルアイン、という構図は変わらない。

 4コーナーに入ると、レイデオロに乗るルメールの手の動きが大きくなった。アルアインのほうが楽な手応えに見える。ラスト400m地点でも、北村は手綱を持ったままだ。

 アルアインが直線入口で先頭に躍り出た。

 外からガンコエアアンセムらが差を詰めてくる。それらの内からレイデオロが脚を伸ばす。勢いではずば抜けている。が、問題は、前を行くアルアインの内と外のどちらに進路をとるか、だ。

 ラスト200m。ルメールは迷わずレイデオロアルアインの内に誘導した。

 アルアインの北村は左鞭を入れて併せ馬の形にしようとしたが、2頭が並走したのはほんの一瞬だった。「ラスト100mは彼の能力を出せました」と言ったルメールのレイデオロが力強く抜け出し、先頭でゴールを駆け抜けた。

 勝ちタイムは2分11秒2。

 クビ差の2着はアルアイン、そこから3馬身遅れた3着はダンビュライト。戦前に三強と目されていた4歳勢が3着までを占めた。

「最後の坂の苦しいところで脚色が鈍りました」と言った北村は、何度も左鞭を入れて修正しようとしたのだが、アルアインは左、つまり外に張り出そうとした。そこをルメールに突かれた格好になった。アルアイン皐月賞のゴールでも、今日と同じコースでルメールが乗ったセントライト記念(2着)でも、また、今年の京都記念(2着)の直線でも、外に張り出すところを見せていた。

 ライバルの癖を利用して進路を確保した、ルメールの冷静な騎乗が光った。それ以上に、彼が「まだトップコンディションではない」と言った状態でありながら素晴らしい走りを見せたレイデオロの強さを讃えたい。

(文:島田明宏)

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