マイペースの逃げなら強いノブワイルド/オーバルスプリント回顧(斎藤修)

2018年09月25日(火) 18:00

重賞初制覇がダートグレードのタイトルとなったノブワイルド(撮影:高橋正和)

 自己条件のA2特別までは圧倒的なスピードを見せていたものの、重賞では結果を残せていなかった浦和のノブワイルドが鮮やかに逃げ切り、重賞初制覇をダートグレードの舞台で果たしてみせた。

 まずはスタートがひとつポイントだった。ノブワイルドはゲートの中で横を向いたり、ガチャガチャとうるさく、そのままスタートを切られれば出遅れるかもしれないところだった。それでもおそらくスターターがちゃんと見ていたのだろう、一瞬落ち着いたタイミングでゲートが開き、好ダッシュを見せた。

 もうひとつのポイントは枠順。5月のさきたま杯でもネロと先行争いとなって、そのときは外枠だったノブワイルドが1、2コーナーで無理やりという感じでハナを主張する形でオーバーペースとなり共倒れ。しかし今回は枠順が逆。ノブワイルドは絶好の2番枠で、ネロは9番枠から競りかけてはきたが、ノブワイルドはすんなりと逃げることができた。

 予想で「すんなりハナをとれて、前半3Fを36秒前後のペースで行ければ粘り込む場面も十分に考えられる」と書いたが、今回の最初の3Fは35秒2。さきたま杯のときよりコンマ1秒遅いだけ。稍重の湿った馬場で、たしかにさきたま杯のときより時計の出やすい馬場ではあったが、それにしても前半そのペースで逃げ切ることができたのは、相当にパワーアップしていたのか、能力を十二分に発揮できる状態にあったのだろう。最後の2ハロンは12秒6、14秒2と、さすがに脚は上がったが、3コーナーから後続との差を広げたぶんの貯金があって押し切ることができた。このあたりは鞍上の好判断だった。

 直線、外から迫って3/4馬身まで差を詰めたのはオウケンビリーヴ。1、2コーナーを回るところでは差のある7番手あたり。そこから徐々に位置取りを上げ、3コーナーあたりからは、ここで行かないと間に合わないだろうとスパート。そのままの勢いで直線も伸びた。中央のダートでは1200メートルのみを使われていたが、川崎・スパーキングレディーCでは小回りの1600mにも対応できるところを見せたように、地方のコーナーを4つ回るコースでも器用に立ち回る。ラブミーチャンのときにもさんざん書いたのだが、牝馬限定のダートグレード(2歳戦は除く)は1600m以上の距離しかなく、ダートの短距離を目指すなら牡馬との対戦が避けられない。

 驚いたのはオウケンビリーヴにハナ差まで迫って3着のトーセンハルカゼ。4コーナー9番手から短い直線を追い込み、上り3Fがメンバー中最速の35秒9という数字を見て、あらためて驚いた。中央時代は芝も含めて1700m以上しか使われたことがなく、1400mは2走前に一度大井で経験しただけ。さすがにここで馬券圏内を予想するのは難しい。

 さきたま杯で3着と好走していたアンサンブルライフだが、ここでも馬場の内目をうまく立ち回って、これまた際どい4着。それにしても4頭出しだった小久保智厩舎の1、3、4着という結果には恐れ入った。

 ネロは5着。予想でも指摘したように、地方の小回りのコーナーを4つ回るコースは合わない。

 断然人気の支持を受けたウインムートは、3番手を追走したものの向正面半ば過ぎからムチが入って一杯になり、直線ではほとんど追うのをやめて8着。状態に問題があったのか、馬場やコースが合わなかったのか。

 勝ったノブワイルドは、中央でのデビュー戦は芝で7着だったが、2戦目のダート1000mの未勝利戦で2着に1秒7の大差をつける圧勝。ヴァーミリアンの初年度産駒としてダートでの活躍がおおいに期待された。しかし早めに見切りをつけ、中央時の戦績は2歳時のみで浦和の小久保厩舎に移籍してきた。

 ちなみに、4戦目のダート500万下、オキザリス賞でも2着の好走があり、このときの勝ち馬はブルドッグボス。ともに小久保厩舎に移籍して、左海誠二騎手の鞍上でダートグレード勝ち馬となった。

 ノブワイルドは途中、落ち込む時期もあったが、6歳のここまで時間をかけて一流馬に育て上げられた。小久保厩舎では5日前の東京記念でもシュテルングランツが7歳にして重賞初挑戦での勝利を挙げていたが、一度落ち込んだ馬を立て直す厩舎力というか、その技術はすばらしい。

 ノブワイルドの馬主はTUBEのボーカル、前田亘輝さん。中央の所有馬では1000万条件を突破した馬はなく、地方競馬でも南関東以外も含めて下級クラスがほとんどで、馬運に恵まれていなかった。上級クラスでの活躍馬はノブワイルドが初めてといってよく、重賞初制覇がダートグレードのタイトルとなった。

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