オジュウチョウサンに挑み続けたアップトゥデイトも暮れの中山を盛り上げる

デイリースポーツ

2018年12月11日(火) 11:00

中山大障害の直線で逃げるアップトゥデイト(右)と追うオジュウチョウサン=2017年12月23日

 障害界の絶対王者オジュウチョウサン有馬記念ファン投票で10万382票を獲得。見事3位にランクインし、グランプリ出走の切符をつかんだ。暮れの中山は例年以上に盛り上がりを見せそうだ。

 有馬記念もそうだが、個人的に注目したいのは前日に行われる中山大障害(22日・中山)だ。その出走予定馬の中でもクローズアップしたいのが、かつてオジュウのライバルとしてしのぎを削ったアップトゥデイトだ。栗東トレセンにおいて障害騎手を取材させてもらう機会が多く、改めてこれまでの戦いを振り返って見たくなった。

 そもそもなぜ障害へとかじを切ったのか。その過程には、生産者であるノースヒルズの、前田幸治氏の進言があったという。

 中京のダート戦でデビュー勝ちを収め、順調な滑り出しを見せたが、3歳になると成績が振るわず。今後について佐々木師は頭を悩ませていたが、「会長から障害やらんかと言われて。僕も合うんじゃないかと思っていた。実際に練習をしたら、体幹が良くて、着地がすごい上手だった。着地してからの一歩が素晴らしく、名ジャンパーの素質があると感じた」と当時を振り返る。

 指揮官は98年に管理馬の落馬事故で北村卓士騎手に大けがを負わせてしまったことを契機に、それ以降障害レースへの道を閉ざしていたが、「あれから時間もたったし、みそぎも済んだかなと。考えが変わり、会長にやらしてくださいと。それからの活躍は見ての通り。会長は先見の明があると思った」と障害挑戦の理由を明かす。この決断がアップの障害馬としての才能を開花していくことになる。

 初挑戦となった14年の小倉未勝利戦は2着もその後、未勝利、オープンを連勝。メキメキと頭角を現すと15年の中山グランドJで鞍上の林満明騎手ともに人馬念願のGI初制覇を果たす。林騎手は「おとなしくて学習能力が高い。跳びがうまく乗りやすい馬」とパートナーの特徴をこう評した。その勢いは止まらず、暮れの中山大障害も勝利。15年のJRA最優秀障害馬に選出され、一躍名ジャンパーの仲間入りを果たした。

 しばらく主役を張る存在と思われたが、強敵が出現する。それが障害の絶対王者オジュウであった。アップが骨りゅうのため回避した16年の中山グランドJを制覇し、GI初勝利を飾るとその勢いのまま東京ジャンプS東京ハイJを連勝。暮れの中山大障害は直線でアップを大きく離しての完勝。1年前に大差をつけた相手にいとも簡単に敗北を喫した。「びっくりした。オジュウ半端ないなと思った(笑)。3年ぐらいはうちの天下が続くと思っていたけど」と佐々木師が話せば、「まだアップの時代が続くぞと思ったらあっさりだった」と林騎手もオジュウの強さにあぜん。陣営は悔しさより驚きの方が強かったのかもしれない。

 17年に入ってもその強さは衰えず、中山グランドJもオジュウが勝利。同じ相手に3度も負けられんとリベンジを誓った昨年の中山大障害は障害レースで1番と言っても過言ではないほどの名勝負が生まれた。林が「これしかないと思った」と後続に10馬身差以上離した大逃げを打ち先頭で直線へ。しかし、しぶとく食らいついたオジュウにゴール手前で差されまたしても悔しい2着。負けはしたが、今度は惜敗。3着以下には大差をつけていたように、アップの能力を全て出し切った競馬だった。

 佐々木師はアップの1番のベストマッチとしてこのレースを挙げる。「やった!と思った瞬間にかわされた。悔しいと言うよりかは感激した。相手を褒めたい。化け物でした」 今年4月の中山グランドJは大差をつけられて2着。これを機にオジュウは平地参戦を表明することになる。通算成績はアップの1勝5敗。障害界を去るライバルに指揮官は「獲るべきものはとったし、(平地挑戦は)素直にいいと思った。寂しくはなるけれどね」と話せば、林も「また障害に戻って来てくれないかな」と率直な心境を吐露する。

 オジュウだけでなく、アップにも変化が訪れる。主戦の林騎手が引退し、夏の小倉サマーJから白浜雄造騎手に手綱がバトンタッチされた。白浜騎手は「林さんの後を受け継いでこの馬に乗れているのがうれしい。スタミナがあるし、能力は発揮できると思う」と暮れの大一番に向けて意気込みを口にする。

 あの激闘から1年。かつてのライバルは新天地へと向かったが、アップ陣営の熱い思いは今もなお消えてはいない。

 「GIを勝たしてもらった馬で思い入れがある。頑張って勝ってほしい。自分の子どもを応援しているみたい。オジュウがいたからあれだけ頑張れた。アップが勝って、有馬でオジュウがいいレースすれば盛り上がるね。今は一番のファンですよ」と林騎手。

 これからの障害界を背負う存在へ。陣営やファン、そしてオジュウ。たくさんの思いを背負った芦毛の8歳馬が、暮れの中山を熱くする。(デイリースポーツ・赤尾慶太)

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