ドバイ&アメリカのダート回帰 オールウェザーの将来性を問う

2014年08月25日(月) 18:00

ジャスタウェイ、ジェンティルドンナが優勝した今年のドバイミーティング。そのメイン競走であるワールドカップについて、『来年からドバイワールドカップはダートで開催』というニュースが飛び込んできた。2010年からオールウェザー(タペタ)で施行されてきた本競走。ドバイがタペタ撤去に踏み切った理由とは。そして、ひと足早くダートへと再転換しているアメリカ。その背景、ヨーロッパの動き、日本への影響を、野元賢一記者が解説します。

タペタ撤去に踏み切った2つの理由

 世界各国の有力馬のレーティングを毎月、発表する「ワールド・サラブレッド・ランキング」の8月版が15日に発表された。3月末のドバイ・デューティフリー(DDF)で2着ウェルキンゲトリクスに6馬身4分の1の大差をつける衝撃的な圧勝を飾ったジャスタウェイが、レーティング130。5カ月連続で首位を守った。

 この先、首位の座が脅かされるとすれば、同馬自身が参戦する10月の凱旋門賞で圧勝する馬が出た場合か。DDFは総賞金500万ドル。ドバイ国際競走の中では、ドバイワールドカップ(DWC=総賞金1000万ドル)の前座扱いだが、ジャスタウェイの快走が国際競走の地位を支えている格好だ。

 半面、賞金の割に位置づけが怪しくなってきたのがDWCだ。今年の勝ち馬アフリカンストーリーは123止まり。メイダンの全天候馬場(オールウェザー=AW)に舞台を移して今年で5年目だが、優勝馬のレーティングは120-126。ニンジンをぶら下げても、世界のトップが集まらない現状に業を煮やしたか、ドバイ国際競走の主催者側は5月14日、現在の米タペタ社のAWを撤去し、DWCをダートに戻すと発表した。

 米国でも後述する事情で、近年はAWからダートへの回帰現象が相次いでいる一方、欧州ではAW導入が目立つ。AWの将来を巡り、相反する流れがせめぎ合っている。

 ドバイがタペタ撤去に踏み切った最大の理由は、前述の通り、肝心要のDWCの地位が上がらない点。AW導入後、米国の有力馬があまり来なくなったことは否定できない。昨年優勝のアニマルキングダムは、2011年のケンタッキーダービー優勝馬だが、キャリア12戦中9戦が芝とAWで、米国競馬の異端児と言える。ナド・アルシバ時代は第1回優勝のシガーを始め、米国のヒーローが歴史を彩り、14回中優勝8回(残りはUAE5回、英国1回)を占めた。

 メイダンの計画が進んだ時期は、米国でもカリフォルニア州を中心にAWの導入が相次いでいた。ドバイの主催者がタペタを選んだ理由を推測するなら、世界一の賞金をかけて米欧の有力馬がぶつかる、真の最強馬決定戦を演出したかったと思われる。ところが、・・・

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野元賢一

1964年1月19日、東京都出身。87年4月、毎日新聞に入社。長野支局を経て、91年から東京本社運動部に移り、競馬のほか一般スポーツ、プロ野球、サッカーなどを担当。96年から日本経済新聞東京本社運動部に移り、関東の競馬担当記者として現在に至る。ラジオNIKKEIの中央競馬実況中継(土曜日)解説。著書に「競馬よ」(日本経済新聞出版)。

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