2日間で10重賞が行われる「アイリッシュ・チャンピオンズ・ウィークエンド」が開催

2014年09月10日(水) 12:00


愛国の平地競馬にクライマックスとなる開催がない現状を変える必要があるとの認識で一致し、そこから計画が動き出すことに

 今週末の13日と14日、アイルランド平地競馬における初めての集中開催となる「第1回アイリッシュ・チャンピオンズ・ウィークエンド」が開催される。13日(土曜日)はレパーズタウン競馬場を舞台に、3歳以上の牝馬によるG1メイトロンS(芝1600m)、愛国における10F路線の総決算となるG1愛チャンピオンS(芝10F)の2つのG1を含む5つの重賞が。14日(日曜日)にはカラ競馬場を舞台に、2歳牝馬のG1モイグレアスタッドS(芝7F)、2歳馬のG1ナショナルS(芝7F)、3歳以上のG1愛セントレジャー(芝14F)の3つのG1を含む5つの重賞が組まれ、2日間で5つのG1を含む10重賞が開催される豪華な週末を迎える。

 2日間で10重賞というアイディアの骨格となったのは、昨年春にバリーヘーン・スタッドのジョー・フォーレイ氏が作った「メモ書き」だったと言われている。

 2012年秋、かねてからの友人であるトゥウィーンヒルズ・スタッドのデイヴィッド・レッドヴァース氏に招待されて英国のブリテイッシュ・チャンピウオンズ・デイに臨場した際に、舞台となったアスコット競馬場を埋め尽くした雰囲気の良さに感動したフォーレイ氏。英国にチャンピオンズ・デイ、仏国にアーク・ウィークエンド、米国にブリーダーズCと、世界の主要な競馬開催国にある1点豪華主義的「集中開催」が、なぜ愛国にはないのか、という、極めてシンプルな発想が原点となった。それぞれの国に、平地シーズンのクライマックスを華々しく飾る節目の開催がある一方で、愛国はと言えば、平地シーズンは何気なく終わり、気がつけばいつの間にか障害シーズンに突入しているのが現実だった。

 何か「節目」となるものが欲しい、というコンセプトをファーレイ氏は、ヨーロピアン・ブリーダーズ・ファンド(EBF)のアイルランド共同代表を務めるハリー・マコーモント、ジョン・オコナーの両氏に伝達。3人は更に、統括団体のホール・レーシング・アイルランド(HRI)代表のブライアン・カヴァナー氏に接触。愛国競馬サークルで指導的立場にある全員が、愛国の平地競馬にクライマックスとなる開催がない現状を変える必要があるとの認識で一致し、そこから計画が動き出すことになった。

 アイリッシュ・チャンピオンズ・ウェークエンドの創設は、昨年8月には公に発表されていたから、ジョー・フォーレイ氏の着想からわずか10か月、業界の重鎮たちが発足に動き出してからわずか半年という短期間で日の目を見たことになる。

 その背景にあるのは、昨年までの愛国にあった特殊な事情だ。そもそも愛国で、平地の重賞競走の舞台となっている競馬場は9つあったが、G1・12競走、G2・7競走の合計19競走は、レパーズタウンとカラという、たった2つの競馬場のみが開催場となっていた。このうち、春の3歳クラシックなどを除くと、両競馬場を舞台とした主要な重賞は多くが9月を開催時期としており、つまりは、2つの競馬場が既存の重賞の開催時期を少しだけずらせば、一極集中開催のプログラムが出来上がるという背景があったのである。

 具体的には、愛セントレジャーとナショナルSはもともと9月第2週にカラ競馬場で組まれていたG1だったし、愛チャンピオンSとメイトロンSは9月第1週にレパーズタウンで組まれていたG1であった。ここに、8月末の開催が定着していたカラのモイグレアスタッドSを移設してくれば、骨格は出来上がるわけで、それぞれの主催者が各競走の後援企業の説得を積極的に行った結果、交渉はおしなべてスムーズに運び、「アイリッシュ・チャンピオンズ・ウィークエンド」の創設が決定した。

 続いて関係者が着手したのは、「馬集め」だった。レースのラインナップだけ充実させても、出走メンバーが物足りなくてはファンを呼ぶことは出来ず、興行としては失敗に終わる。良い馬を集めるためには、賞金の充実も必要で、これも関係者が奔走した結果、後援企業から前年を大幅に上回る賞金提供があって、2日開催の総賞金は前年の250万ユーロから380万ユーロに増額することになった。

 この原稿を起こしている段階では、まだ各競走の出走メンバーは確定していないが、英愛ダービー連覇に加えてG1インターナショナルSで古馬を撃破したオーストラリア(牡3、父ガリレオ)が土曜日のG1愛チャンピオンS(芝10F)に出走予定なのを筆頭に、そうそうたる顔触れが集まることになっている。

 世界各国に「競馬の日」と言える集中開催が出来ている中、毎度引き合いに出されるのは日本である。春と秋の季節の良い時期になると、週末ごとにG1を開催し、いずれも非常に大きな馬券売り上げを誇るという、日本だけにある特殊な事情を鑑みると、おいそれと追随するわけにもいかない現実もよく理解出来る。だがそれでも、普段は競馬に興味のない人が競馬場に足を運びたくなるような、ビッグな「競馬の1日」を、日本でもいつかは見てみたいと、思わざるを得ないのも事実である。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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