「馬に乗ってレースに行けることが最高です」難波剛健騎手にインタビュー

2014年10月28日(火) 18:00

競馬の職人

難波剛健騎手


難波剛健騎手「初騎乗も初勝利もそして初重賞も全て永井啓弍さんの馬なんです。だからそんな出会いを大切にして恩返ししたいと思っていました」

 先週の菊花賞ではトーホウジャッカルと菊花賞初騎乗の酒井学騎手が見事に菊の大輪を咲かせましたね。おめでとうございます。(パチパチ)

 今年で開業20年目となる谷潔調教師のGI初制覇。記録づくしの中には、いろんな苦労があったんですね。スタッフの必死の努力で立ち直り、入厩したのが3月。デビューがダービーの前日。デビュー戦は出遅れ10着に敗れましたが直線で伸びる脚や身のこなしは普通じゃなかった。その時の走りが実を結んだと思います。

 酒井学騎手は馬からゾクゾクと伝わって来るものを感じ、その感触をスタッフに伝えずっと乗せて欲しいと懇願していました。2戦め以外はずっと手綱を取り一戦一戦ごとに力をつけてきた。諦めない心が大きな喜びになりでっかいものになったんですね。

 熱い思いをもらって人馬ともこれからの成長と活躍がたのしみです。

 ある調教師がインタビューの時に、長距離を乗り切る馬がどこに隠れているかわかりませんからね…。と言われたことが思い出されます。

 記録づくしといえば調教師の開業後GI初勝利が続いています。新しい旋風が巻き起こり秋のGI戦線から年末までのレースが面白くなってきました。なにが起こるかわからない? だから競馬はおもしろい!!

 初勝利といえば難波剛健騎手も10月13日の東京ハイジャンプでデビュー以来、初の重賞勝利、それもいきなりJGIIを制覇。

常石 ナンチャン、おめでとう! サンレイデュークでやったね。是非取材お願いします。

難波 ありがとうございます。足震えましたよ(笑)。こちらこそぜひ取材しいいコラム書いてください。

常石 よろしくお願いします。改めておめでとう! うれしいやろ・・・。勝ったと思った瞬間どんな気持ちやった?追い込みすごかったもんね。

難波 んー、後ろから行く馬だからどんどん加速して追い込んでいった時は、「勝てる!」と思いました。飛びがしっかりし、上手いからずっと中山向きやなと思っていたので、まさか東京で勝つとは考えていなかったのでやっぱり嬉しいです。どこでも使えるのは、幅が広がってきますからね。

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東京ハイジャンプで差し切りを決めたサンレイデューク(撮影:下野 雄規)

常石 後ろから行く馬は、むずかしいところがあるでしょう。飛越ではなかなか追い越せないないから直線勝負になることが多いもんね。跳びが上手いっていいね。

難波 上手いし、しっかリ跳んでくれます。ちょっと跳びすぎるとこがありますが、バンケット上手いんです。だから中山なんですよ。

常石 バンケットは中山しかないもんね。僕が乗ったときは、スクーリングに行きましたが、行きますか?

難波 はい、行きますよ。ベストフォームで腰のスイングが上手いんです。しまいもよく伸びてくれるので後ろからでも安心して追えます。中山でオープンクラスのレースを(2回)勝っているのでずっと中山向きに仕上げてきましたが、東京の跳びプラススピードにも対応できたのは、大きな収穫です。(東京ハイジャンプは)この馬で3回目の挑戦でした。

 ここでタイミングよく高田騎手が来て応援メッセージをくれました!

高田  ナンチャン、うまかったやろ。仲間が活躍してくれるのはうれしいわ。(これは上辺だけ。本音は悔しい!(爆笑))

 つねさんは「いつも乗馬はむずかしい」っていうけど馬は腰が入るか入れへんかで動きが変わってくる。ここが一番大事やなー。男やったらわかるやろ!(と実践してくれました。(爆笑))

常石 なるほどなー。(ナンチャンと2人でうなずく)。潤ありがとう!。仲間は、いいよな。競走中はライバルでも、バンケットなどを跳んだ時、ファンの皆さんが拍手してくれると全馬無事に飛んだんだなーとわかり嬉しくなり、さあー次へいくぞーって思います。やっぱり全馬無事に飛んでほしいですよね。

難波 そうそう同じレースで落馬すると落ち込みますよね。お互い気をつけていますがこればっかりは仕方ないですね。

常石 この馬とはずっとコンビを組んでいるからしっかり手の内に入れてるんでしょう。

難波 はい。僕がデビュー時にお世話になった高橋成忠先生からの引き継ぎ馬です。成忠先生にはずっとお世話になり大事にしていただきました。そして息子さんの義忠先生やスタッフの皆さんにも良くしてもらっています。今着ている服は、成忠先生の厩舎服ですが、厩舎へ行くと義忠厩舎服で作業をします。

 成忠先生に教えていただいたことを忘れないためにも調教の時は、このピンクを着ています。今では、僕のトレードマークです。

常石 ナンチャンってすぐにわかるよな。オリジナルになってるね。そういえば僕もピンクがメインでしたね。(古い話ですが)ピンクってなんか癒し色でいいですよね。

難波 服も思いも大事にしたいので。同じ馬で挑戦できるのは嬉しいです。ずっと乗せてもらえることに感謝したいです。勝負の世界なので“勝つ”こと、結果が一番だと思いますけど、やっぱり無事に帰ってくることが大事だと思います。そうしたらまたチャンスがあるでしょう。

常石 1頭の馬にずっと騎乗できるのは嬉しいですよね。飛びの癖もよくわかるし。馬のほうが乗り手のことをよく理解してくれてるから安心して跳びができる。障害馬の騎手としては最高の条件ですよね。この馬との出会いは、どこであったんですか?

難波 成忠厩舎にいた馬なんですがこの馬の馬主さん、永井啓弍さんにはずっとお世話になっています。僕の初騎乗も初勝利もそして初重賞も全て永井啓弍さんの馬なんです。だからそんな出会いを大切にして恩返ししたいと思っていました。ですから前日の毎日王冠でサンレイレーザーが2着になり兄のデュークが勝つことができて嬉しかったです。

 厩舎も今リズムがいいんです。先週は4勝2着1回と好調。クリノスターオーでシリウスSも勝ち、このリズムで行ってほしいですね。

常石 そうそうリズムって大事ですよね。結構そんなときは何をやってもいい具合にいくんですよね。その勢いで中山大障害も頑張ってくださいね。ナンチャンとの相性もいいので楽しみにしています。

難波 デューク担当の吉田さんもずっと一緒なんですよ。ベテランで馬の手入れがとっても丁寧で肝っ玉も大きいです。いつも「何事もどぉーんとこいやー」って言っています。

 いつもブログを書いてる渋川さんも「デュークの追い込みに興奮したわ」と声をかけてくれました。前日の毎日王冠であと1歩という悔しい思いをしたので、デュークが借りを返してくれるというドラマチックな展開にびっくりしたわと言ってくれました。

常石 デュークはしばらく放牧ですか?

難波 ちょっとゆっくりして中山大障害の準備に入ります。

常石 盛り上がってきましたね。自分のことを思い出します。中山は難コースだけどデュークとの相性もいいし飛びもうまいから安心して騎乗してください。馬場を一度自分の足で歩いてみるのも作戦だと思います。

難波 ずっと歩くんですか?4000m以上で山あり谷ありでしょう。馬が走るんですからね。ぼくもやってみます。4000mの長距離といえばつねさんも長距離に挑戦するんでしょう?

常石 大阪マラソンに挑戦します。今年で4回目になるんですが、1回目は完走したのですが2、3回は38キロでリタイアしてしまいました。今年はリベンジです。ここを完走しないとちょっとはずかしいかな? ナンチャンのパワーを分けてもらうわ。そうだ、段幕にサインしてください。お願いしますね。

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大阪マラソンの応援段幕にサインしてもらいました

難波 是非書かせてください。それからまたつねさんに取材してもらえるように頑張ります。

常石 何回でもナンチャンのコラム書きたいのでウイナーズサークルで待ってます。僕も頑張るわ。ありがとうございました。最後にメッセージをお願いします。

難波 落馬をしたり怪我をしたり乗り馬がなかったりなどいっぱいあるけど馬に乗ってレースに行けることが最高です。そこにファンの方やいろんな方が応援してくれると頑張ろう!!と思います。ずっとずっと応援していただいてありがとうございます。

 これからも平地だけではなく障害競走も面白いので応援してください。障害馬は現役が長い馬が多いので追っかけると面白いです。ずっと騎手を続けられるように頑張ります。ありがとうございました。

常石 こちらこそ今日はありがとうございました。

***

 とっても素直で誰にでも好かれる難波騎手です。人望も厚くみんなに期待されています。僕の応援もしていただきました。感謝です。

 話は変わりますが、JRA60周年を記念するイベントの一環として[馬]をテーマにした写真展などが開催されています。10月22日から28日までですがこのコラムが掲載されるのは最終日で17時で終了なんですね。残念…

 写真はもちろん競馬の歴史や馬の博物館から70点の絵画なども展示されていて素晴らしかったです。オルフェーヴルの実物大の像もいましたよ。大阪か東京でもう1度して欲しいですね。

 またまた話は変わり私事ではありますが、菊花賞の記録づくしの日に僕は大阪マラソンに挑戦し自己最高タイムの6時間57分で42.195Kを完走。9時スタートから約7時間走ったり歩いたりした自分に驚いています。制限時間ギリギリ7時間制覇、やったー!!

 ですが自己管理の大切さを痛感しました。左親指に血豆ができ激痛で途中何度か諦めムードでしたがマラソン仲間のお姉様方がハロウィンのコスチュームを身にまとい僕の応援に駆けつけてくれました。

 サポートしてくれた小川さんにも助けてもらいギリギリセーフで大阪マラソンの大きなメダルをかけてもらいました。
この瞬間、諦めないで走りきってよかった。と思いました。

 応援してくれる人が周りにいることは、人間の心を強くします。これからも競馬を応援してください。一緒に楽しみましょう。つねかつこと常石勝義でした。

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常石勝義

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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