英国における芝平地シーズンが開幕

2015年04月01日(水) 12:00


2000ギニーで人気が急上昇したのがグレンイーグルス、ダービーではジョンエフケネディー

 近年の傾向として、どうしてもドバイ開催の裏に隠れる形となっているが、3月28日のドンカスター開催を皮切りに、英国における芝平地シーズンが開幕した。

 ここまで来ると、3歳クラシック緒戦のギニー開催まであと1か月、その前哨戦となると既に目の前に迫っており、有力な3歳馬を抱える陣営の動きも慌ただしくなってきている。

 現在のアンティポスト(長期前売り)のオッズを、昨年のクリスマス時点と比較すると、2000ギニーで人気が急上昇したのがグレンイーグルス(牡3、父ガリレオ)である。ラドブロークスのオッズを例にとると、クリスマスの段階で15倍だったのが、現在はオッズ4倍で抜けた1番人気に支持されているのである。

 昨年のG1愛1000ギニー(芝8F)勝ち馬マーヴェラスの全弟にして、ジャイアンツコーズウェイの甥にあたるという超良血馬がグレンイーグルスだ。昨年6月にデビュー2戦目のメイドン(芝7F)で初勝利を挙げると、G3タイロスS(芝7F)、G2フューチュリティS(芝7F)、G1ナショナルS(芝7F)と、格付けを1つずつ上げながら重賞を3連勝。続くG1ジャンルクラガルデル賞(芝1400m)こそ1着入線しながらも進路妨害を犯して3着降着となったが、素質の高さを存分に見せつけた2歳シーズンとなった。

 グレンイーグルスのオッズが下がり始めたのはここ最近で、ブックメーカー各社によると、3月中旬頃から2000ギニーのグレンイーグルスに大量の買いが入るようになったそうだ。同馬を所有するクールモアグループ、管理するA・オブライエン厩舎には、グレンイーグルスだけでなく、オルマンリヴァー(牡3、父モンジュー)、ハイランドリール(牡3、父ガリレオ)、ジョンエフケネディー(牡3、父ガリレオ)など複数のクラシック候補がいるが、おそらくは関係者の間から、中でも2000ギニー候補の筆頭はグレンイーグルスであることを示唆する情報が流れたのであろうと、消息筋は分析している。

 これに呼応するように、オブライエン調教師がメディアに対して現状を語ったのが、3月29日(日曜日)だった。この日、60頭以上の管理馬をカラ競馬場に運び、レースコースギャロップを行ったオブライエン師は、その後に取り囲んだ記者たちに対し、「2000ギニーに向ける主力は、グレンイーグルスとハイランドリールになる」と言明したのである。

 ハイランドリールもまた、豪州のG1クラウンオークス2着馬ヴァルデモロの半弟で、同じく豪州で複数のG1を制しているハラダサンやエルヴストロームの甥にあたるという良血馬だ。2歳時は3戦し、G2ヴィンテージ(芝7F)を含む2勝を挙げている。

 逆にここへ来て、2000ギニーのアンティポストから姿を消したのが、ジョンエフケネディー(牡3、父ガリレオ)である。

 05年に2歳G1を2勝したランプルスティルトスキンの4番仔で、昨年のG1ヨークシャーオークス(芝12F)でタグルーダを破る金星を挙げたタペストリーの全弟にあたるという、これも関係者ならヨダレの出そうな超良血馬がジョンエフケネディーだ。昨年8月にカラのメイドン(芝8F)を制してデビュー2戦目にして初勝利を挙げると、続くレパーズタウンのG2ジュヴェナイルターフS(芝8F)も快勝。シーズンオフを通じて、クラシックの有力候補に挙げられていた馬である。

 この馬に関してはオブライエン師が、3月25日の段階で、2000ギニーには向かわずに、ダービー路線を進むことを表明。具体的には4月12日にレパーズタウンで行われるG3バリーサックスS(芝10F)から、5月10日に同じくレパーズタウンで行われるG3愛ダービートライアルS(芝10F)に向かうことを明らかにしたのだ。

 もともとダービーの前売り1番人気に推されていたジョンエフケネディーだが、この発表を受けラドブロークスは、クリスマスの段階で9倍だったダービーにおける同馬のオッズを、6倍に下方修正させている。

 一方、牝馬戦線に目を転じると、1000ギニー、オークスともにファウンド(牝3、父ガリレオ)が抜けた1番人気である情勢に変わりはない。ラドブロ−クスは、クリスマスの段階で5倍だった同馬の1000ギニーにおけるオッズを、現在は4倍まで下げている。

 ファウンドとは、牡馬を破ったG1ロッキンジS(芝8F)を含めて2つのG1を制したレッドイヴィーの4番仔で、G2パークS(芝7F)勝ち馬マジカルドリームの全妹という、これも超のつく良血馬だ。2歳8月にカラのメイドン(芝8F)でデビュー勝ちを果たし、続いていきなり挑んだG1モイグレアスタッドS(芝7F)では勝負どころでフラフラする若さを見せて3着に敗れたものの、改めて挑んだG1マルセルブーサック賞(芝1600m)を完勝している馬である。

 そしてファウンドもまた、管理するのはA・オブライエンだから、今年の英国における春のクラシック4競走はすべて、オブライエン勢が1番人気の座に就いているのである。

 そのオブライエン厩舎から、芝平地シーズン開幕を前にして、もう1つビッグなニュースが聞こえてきた。

 調教師の子息で、厩舎の主戦を務めるジョゼフ・オブライエン騎手(21歳)が、体重調整に失敗し、29日に行われたカラ競馬場におけるシーズン最初の開催に騎乗できないという事件が勃発したのである。

 身長が6フィート(約183cm)あるといわれるジョセフは、平地の騎手として騎乗するには元来からして大きすぎ、2歳牝馬戦などには騎乗せずにここまでの現役生活を送ってきた。それでも減量は過酷でそれゆえ、それほど長くは騎手を続けないであろうと言うのが一般的な見方である。

 29日にジョセフはレースには騎乗したものの、その姿があったのはライムリック競馬場で、彼が騎乗したのが障害戦だった。同じ日、カラで出走した父の管理馬に騎乗したのは、ドバイから帰国したばかりのライアン・ムーアであった。

 ジョゼフは、現在の体重はわずかに規定を上回る程度で、まもなく平地での騎乗を開始するとしているが、クラシック候補を多数抱えるオブラエイン厩舎が、当面はムーアの力を借りざるを得ない情勢にあることは間違いない。ジョゼフがいつ戻るか、戻ったとして100%フィットした状態を保てるのかどうか、大きな注目を集めることになりそうだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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