3歳短距離路線の充実

2015年06月26日(金) 18:00


◆重要度、注目度を増す優駿スプリント

 今週はホッコータルマエが貫録勝ちの帝王賞で盛り上がった大井競馬場だが、その前日に行われた3歳馬による優駿スプリント(1200m)も印象的なものだった。勝ったのは1番人気に支持されたルックスザットキル。他馬の行き脚をうかがいながら先頭に立つと、直線では後続をまったく寄せ付けずの楽勝だった。

 ルックスザットキルは、デビューから4月のマーガレット特別まで、1200mに限れば5戦負けなし。ところが1400m以上になると3戦して5着が最高という、1200m以下の短距離に特化した馬。それゆえ6月1日の優駿スプリントトライアル(1200m)では単勝1.2倍の断然人気に支持された。しかし直線半ばで急ブレーキ。まさかの9着に沈んでいた。それでも今回の優駿スプリントでは、僅差ではあるものの再び1番人気に支持されたのは、この距離における期待からだろう。「前回の敗戦をふまえ、さまざまな課題を克服して臨んだ」(中村護調教師)とのことで、直線では後続の脚色を測りながら、軽く気合をつけただけで差を広げる余裕の勝利。トライアルを制していたアクティフに3馬身差をつける完勝だった。

 優駿スプリントは今年で5回目となったが、昨年の勝ち馬アピアも短距離に特化した馬だった。デビュー以来ただ1度の敗戦が1600m戦で、それ以外1400m以下では負けなし(現在は中央に移籍)。そして昨年までは、南関東格付けがSIII、1着賞金1200万円だったものが、今年からSIIの1着賞金2000万円と、格付け、賞金ともにアップ。それだけ3歳のこの時期の短距離戦として重要度、注目度を増している。

 そうであるならば、近い将来、全国の3歳馬の目標となるよう地方全国交流にすることも考えるべきではないか。

 近年、地方競馬の3歳戦では“ダービーウイーク”が定着して全国的な盛り上がりを見せているが、さすがに主催者ごとに3歳戦でダービー路線も短距離路線もという距離体系を整備するほどに層は厚くはない。地方の多くの競馬場では、距離に疑問を感じながらも、実力上位の馬は“ダービー”を目指さざるを得ないという状況は少なからずあるはず。

 近年では南関東の重賞や特別戦が徐々に地方全国交流ととして開放され、その賞金の高さから南関東以外の所属馬にとっては南関東で勝つことがひとつの目標ともなっている。たとえばお盆の時期に行われている3歳馬の黒潮盃(大井1800m)は、JpnIのジャパンダートダービーではハードルが高すぎるからと、各地のダービー戦線で活躍した有力馬が参戦するケースが目立っている。

 全国交流にするには時期的なことを考慮する必要はありそうだが、優駿スプリントを全国に開放すれば、中距離路線の黒潮盃に対して、3歳の短距離馬たちの目標としてさらに盛り上がりを見せると思う。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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