17年ぶり高知の2歳新馬戦

2015年07月10日(金) 18:00


◆またひとつ復活の象徴が

 高知競馬の復活については、このコラムでも何度か取り上げてきた。たとえば売上だけを見ても、2008年度には1日平均の売上で約4千万円までに落ち込んだものが、2014年度には約1億5千万円と劇的なまでの復活を遂げている。そして今週、またひとつ復活の象徴ともいえるニュースが、7月11日に2歳新馬戦が行われるということ。

 2歳新馬戦なんて競馬をやっていれば当たり前と思われるかもしれない。ところが高知競馬でサラブレッドの2歳新馬戦が行われるのは1998年8月12日以来、じつに17年ぶりのことだそうだ(アラブ系では2003年7月5日に行われている)。

 かつて地区同士の交流がほとんどなかった時代の地方競馬は、それぞれが独立した形で競馬が行われ、2歳戦から始まって、3歳になるとダービーに相当するレースがあってという、主催者ごとにレース体系がほぼ完結していた。ところが交流が進むとともに分業も進み、特に2歳戦は馬産地・北海道に一極集中したため、賞金が高くない地区には2歳馬がほとんど入厩しなくなってしまった。そもそも高知競馬は中央や南関東など賞金が高い競馬場の受け皿的なところがあり、バブル崩壊以降の売上減と賞金額の下落にともない、そうした傾向はますます強くなっていた。

 高知競馬のサラブレッドの2歳重賞として歴史を重ねてきた金の鞍賞も2002年度限りで休止となり、それが復活したのが、売上がようやく前年比でプラスに転じた2009年度のこと(2010年1月1日に行われたため明け3歳馬による重賞だったが)。

 とはいえ高知に入厩してくる2歳新馬はごくわずか。昨年の金の鞍賞出走馬でも12頭中11頭が北海道か中央からの転厩馬で、高知デビュー馬はわずかに1頭。たとえ新馬として入厩しても頭数が少ないため、すでに北海道などで何度もレースを経験した馬たちと対戦しなければならず、新馬として入厩するメリットはないに等しかった。

 そうした状況を思えば、7月のこの時期に2歳の新馬戦が組まれるというのは、売上が回復基調を見せはじめてからのわずか7年での劇的な変化と言っていい。

 7月11日の第1レースに行われる2歳新馬戦は、レースが成立するギリギリの5頭立て。とはいえ、1着賞金はなんと50万円。昨年の金の鞍賞の1着賞金(40万円)よりも高い。

 高知では、重賞の1着賞金でも、3歳重賞が27万円、古馬重賞(黒船賞、高知県知事賞は除く)が50万円という時期が何年か続いたが、今年度は、金の鞍賞60万円、3歳重賞80万円、そして古馬重賞(同)100万円というまでに回復している。

 また低迷した時期には6頭立て、7頭立てというレースも珍しくなかったが、今では前半の下級条件のレースでもフルゲートに近い頭数で争われるようになった。

 一方で、ダートグレードの黒船賞は別として、かつて最盛期には1着賞金が1200万円にもなった高知競馬の最高峰・高知県知事賞の1着賞金は150万円のまま。ということはあるにしても、血液がきちんと循環して、さまざまな機能がようやく健康的に動き始めた、というのが今の高知競馬だ。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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