セレクトセール

2015年07月15日(水) 18:00

セレクトセール

セレクトセール・展示後の引き上げ風景


結果はすでに各種報道で触れられている通り、売れに売れたセールであった

 先週の八戸市場に続いて、今週はセレクトセールであった。当初は、初日と2日目ともに曇り一時雨というような天気予報であったが、終わってみれば、初日に一時パラついたものの、ほぼ晴れまたは曇りのひじょうに良い天候に恵まれた。ただ、この時期の北海道としてはかなり蒸し暑く、不快指数の高い2日間ではあったのだが。

 結果はすでに各種報道で触れられている通り、売れに売れたセールであった。とりわけ初日の1歳市場は、238頭中210頭が落札され、88.2%という驚異的な売却率を記録し売り上げも71億450万円(税抜き)に達した。午前10時のセリ開始からいきなり火がついたような状態になり、上場される馬たちが全て落札されて行く。6600万円、2600万円、2100万円、4400万円というような金額の取引が続く。50番目が終わった段階で、主取りはわずか2頭。100番まで進んでも7頭しかいない。それ以外はすべて売れているのだ。驚異的なペースでセリが進行した。

 最初のミリオンホースは19番「キングスローズの2014」(父ディープインパクト、牡青鹿毛)の19500万円。母はニュージーランド3歳牝馬チャンピオンで本馬が初仔だ。落札者はサトノの冠名で知られる里見治氏。生産はノーザンファーム。

 次々に登場する億超えの落札馬に、私たち取材陣も振り回された。あらかじめ名簿をチェックしこれはという上場馬に付箋をつけておくのだが、写真は場内の落札場面と場外の立ち写真のセットが基本になるため、まず場内のステージ真正面でカメラを構える。そして落札の瞬間の写真を撮り終えると、小走りで場外に出て行き、撮影場所の集団に交じって上場馬が戻って来るのを待つ。この繰り返しである。

落札馬の撮影風景

多くのカメラマンが撮影する落札馬の撮影風景

 時には落札者を囲んで取材が入る場面もある。体がいくつあっても足りないような状態になった。

 初日のハイライトは、107番「ジョコンダIIの2014」(父ディープインパクト、牡鹿毛)と108番「シャンパンドーロの2014」(父Tapit、牡芦毛)の2頭が続けて23500万円、23000万円で落札された場面であった。

ジョコンダIIの2014

「ジョコンダIIの2014」の落札風景

ジョコンダIIの2014

「ジョコンダIIの2014」の立ち姿

 ジョコンダIIは周知の通りサトノクラウンの母。この馬は里見治氏が、そして、シャンパンドーロの方は、金子真人ホールディングス(株)がそれぞれ落札した。

シャンパンドーロの2014

「シャンパンドーロの2014」の落札風景

シャンパンドーロの2014

「シャンパンドーロの2014」の立ち姿

 この段階でミリオンホースは計8頭になり、まだ半分も終わっていない段階でこの数字ならば後半もどこかで必ず億超えの落札馬が出てきそうだと考えてしまう。その結果、最後の最後まで片時も現場を離れられないような状況になった。

 話題に事欠かない初日であった。武豊騎手を始め、ミルコ・デムーロ、クリストフ・ルメール騎手なども来場し、あちこちで囲まれていたし、オーストラリアからGIレースを120以上も勝っているという女性調教師のゲイ・ウォーターハウス氏も来場。175番「アワーオアシスの2014」(父バゴ、牡青鹿毛)を1000万円で落札し、取材攻めに合う場面もあった。

ゲイ・ウォーターハウス調教師

オーストラリアから来場したゲイ・ウォーターハウス調教師

落札した「アワーオアシスの2014」と撮影

落札した「アワーオアシスの2014」とゲイ・ウォーターハウス調教師ご一行

 初日の終了は午後6時半。長い長い一日が終わった。

 2日目は当歳市場。この日は午前8時の展示から始まる。幸い、天候は崩れず、徐々に晴れてきた。全上場馬232頭が、親子で一斉に展示される光景は月並みな表現ながら、圧巻の一言だ。当歳に加え、その母、そして来年出産予定の胎児の分まで計算すると、いったい総額いくらになるのかというような感慨に襲われる。

当歳展示風景

当歳の展示風景

 展示はたっぷり2時間取ってある。以前は入れ替えて半数ずつ行っていたが、今は全馬が一度に展示される。木々が生い茂る空間を利用して各馬が展示されている中を、購買関係者が丹念に1頭ずつ見て歩く。全馬をチェックするにはどうしてもこれくらいの時間が必要なのである。

 セリ開始は午前10時。さすがに初日ほどのことはないものの、大半の上場馬が落札されて行く。今年はディープインパクトやキングカメハメハ産駒などに加え、新たにオルフェーヴルとロードカナロアの初年度産駒が登場し、注目馬の多いセリとなった。

 オルフェーヴル産駒は17頭中13頭が平均4107万円余で、またロードカナロア産駒は20頭中17頭が平均約2853万円でそれぞれ落札され、注目度の高さが窺えた。

 だが、当歳市場でもやはり圧倒的な存在感を示したのは、ディープインパクト産駒。ミリオンホース7頭中4頭がディープ産駒であった。

 1歳市場でもそうだったが、当歳でも、やはり高額馬がノーザンファームと社台ファームからの上場馬に偏る傾向は否定できず、日高を中心とした非社台グループからの上場馬は苦戦するケースが少なくなかった。

 なお、当歳の最高価格馬は371番「ウィーミスフランキーの2015」(父ディープインパクト、牝鹿毛)の1億8000万円。母のウィーミスフランキーは北米でGIを2勝している実力馬で、本馬は第2仔。ノーザンファーム生産。(株)ダノックスが落札。ここまでのレベルになると、まず他では滅多にお目にかかれない名血であり、むしろ繁殖牝馬としての期待値も加味される分、牡馬よりも高い評価になるということか。セリ終了後に吉田照哉氏がコメントしていたように「数年前、円高の時代に多くの優秀な牝馬を導入して、それらの産駒が今回上場され、高額で取引される好結果に結び付きました」ということのようだ。

ウィーミスフランキーの2015

当歳の最高価格「ウィーミスフランキーの2015」落札風景

ウィーミスフランキーの2015

当歳の最高価格「ウィーミスフランキーの2015」立ち姿

 さて八戸に始まった今年の1歳市場は、セレクトも空前の売れ行きで、来週のセレクションセールでもこの流れは変わらないのでは? と見る向きが多い。ここで予算オーバーのため買い切れなかった購買層も多くいるはずで、そういう方々が日高の市場に足を運んで頂けると、セレクションセールはより期待の持てるセリになりそうだ。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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