『ドゥラメンテ秋断念 3歳馬の骨折と今後への影響』JRA競走馬研究所(1)

2015年08月10日(月) 12:00

おじゃ馬します!

▲今月のゲストはJRA競走馬研究所・運動科学研究室の高橋敏之室長

今月は“競走馬のフシギ”に迫る1か月間。JRA競走馬研究所(運動科学研究室)の高橋敏之室長に、最近の競馬の気になるトピックスから、夏にまつわるテーマまで、じっくり分かりやすく教えていただきます。初回のテーマは『3歳馬の骨折』について。二冠馬ドゥラメンテ(両前脚の橈骨遠位端骨折)、リアルスティール(左第1指骨剥離骨折)らが相次いで故障。将来有望な3歳馬だけに、この時期の骨折というのは今後に影響してくるのでしょうか。(取材:赤見千尋)


2、3歳というのは化骨の途中段階

赤見 高橋さんにご出演いただくのは今回が2度目ということで、前回は肺出血のことや重度の骨折などについて教えていただきました。あれから2年が経ちますが、競馬を見ていくうちにまた数々の疑問がわいてきたので、教えていただきたいと思っています!

 まずは、この春の大きなトピックスとして、ドゥラメンテやリアルスティールというダービー上位馬が骨折。とても残念なことになってしまったのですが、3歳時の骨折のその後の影響というのは、どんなふうに捉えたらいいんでしょうか?

高橋 ドゥラメンテの場合は、腕節の骨折ということになるのですが、競走中の発症事故を前肢の部位別の割合で見ていくと、今回の腕節が48.9%と、全体の約半分を占めているんですね(続くのが前肢腱靱帯が11.5%、第1指骨が6.1%)。

おじゃ馬します!

赤見 比較的発症しやすい箇所ということなんですか。

高橋 そういうことになります。それで、今から25、26年前に、関節鏡手術というものができるようになりまして。人間でいう内視鏡手術のようなものなんですけど、以前ですと、全身麻酔をして関節を大きく開けて、実際に獣医師が目で見て骨を取り出す必要があったんですね。関節ってばい菌が入りやすい所でもありますし、大きく開けてしまうことで術後の動きが鈍くなるところもあって、案外大変ではあったんです。

 それが今ですと、小さな穴を2カ所開けて、片一方にカメラを入れて、カメラで見ながら鉗子で取っていくという手術ができるようになったんですね。小さな穴を開けるだけで済むので、より少ない負担で手術ができます。その分、その後の影響というのもあまりなくなってきたと思います。

赤見 以前伺ったときに、若馬は骨片などの軽度の骨折になりやすくて、古馬は重度な骨折をしやすいと教えていただきましたが、その辺りは原因があるんですか?

高橋 はっきりとした原因というのは分かっていないんですけど、古馬になると骨折以外でも屈腱の断裂といった障害ですとか、競走能力喪失以上の障害が起きやすいという調査結果があるんです。今年の研究なのですが、第1指骨のつなぎの骨折や、球節上の第3中手骨の骨折について調べていったところ、この部分に関しては若い馬の発症が多いという結果になりました。つまり全般的に、骨折については若い馬、腱の損傷については古馬がなりやすいという結果になるかなというのが分かってきたんです。

赤見 年齢の面は、成長過程ということも関係しているんでしょうか?

高橋 これは一昨年の研究になるんですけれども、腕節の骨折がどういう馬で起きやすいのか、どういう条件で起きやすいのかというのを調べた調査結果があるんです。それで見ますと年齢の面では、2、3歳の馬は5歳以上の馬に比べると、2.6〜3.2倍ぐらいなりやすいということになります。ですので、若馬にはどうしても起きやすい障害と言えると思います。

 その他にも特徴的なデータを挙げますと、これはダービーにはあてはまりませんが、短距離のレースで起きやすいということ。あとは、馬体重が重い馬の方がなりやすいという結果もありますね。

おじゃ馬します!

赤見 若い馬、短距離、馬体重というのがキーワードという。

高橋 そうですね。骨折に関しては、昔は骨硬化が原因と言われていたんです。調教が進んでいくと骨の硬くなった所ができて、柔軟性がなくなり、そこに大きな力がかかることによって折れるんだと、私たちが研究を始めた頃には言われていました。ところが、骨折の調査を進めていくうちに、調教を多く行い、骨が硬くなっているはずの年上の馬が骨折の危険性が低い結果になっているので、どうもそうではないな、と思っています。

赤見 それは?・・・

続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

登録済みの方はこちらからログイン

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

東奈緒美・赤見千尋

東奈緒美 1983年1月2日生まれ、三重県出身。タレントとして関西圏を中心にテレビやCMで活躍中。グリーンチャンネル「トレセンリポート」のレギュラーリポーターを務めたことで、競馬に興味を抱き、また多くの競馬関係者との交流を深めている。

赤見千尋 1978年2月2日生まれ、群馬県出身。98年10月に公営高崎競馬の騎手としてデビュー。以来、高崎競馬廃止の05年1月まで騎乗を続けた。通算成績は2033戦91勝。引退後は、グリーンチャンネル「トレセンTIME」の美浦リポーターを担当したほか、KBS京都「競馬展望プラス」MC、秋田書店「プレイコミック」で連載した「優駿の門・ASUMI」の原作を手掛けるなど幅広く活躍。

関連情報

新着コラム

コラムを探す