ディアマルコに見る高知の成功

2016年05月20日(金) 17:59


◆2歳馬入厩促進策の、いきなり初年度からの成功例

 19日に行われた園田・のじぎく賞は、人気の船橋・クラトイトイトイが逃げて直線でも粘るところ、2番手から並びかけた高知・ディアマルコが競り落とすという、見応えのある一戦だった。

 のじぎく賞は、グランダム・ジャパン3歳シーズンの第7戦。同第2戦の若草賞(名古屋)、第4戦の東海クイーンカップ(同)でもこの2頭は対戦し、クラトイトイトイが連勝。ディアマルコは、それぞれ3馬身差、1馬身半差で2着。レース内容的にはクラトイトイトイが着差以上の完勝で、それゆえ今回単勝1.5倍という断然人気となっていたが、ディアマルコの見事な逆転勝利となった。

 ディアマルコは高知の生え抜き。昨年7月25日の2歳新馬戦を9馬身差で圧勝し、2戦目も同じく9馬身差で圧勝と、早くから注目されていた馬だった。

 昨年7月10日付けの本コラム(http://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=30615)で取り上げたが、高知では昨年、1998年以来17年ぶりにサラブレッドの2歳新馬戦が行われた。高知としては高額の1着賞金50万円で、3戦組まれた2歳新馬戦のうち、ディアマルコは2戦目の勝ち馬。ちなみに高知の昨年の2歳戦は、一般戦の1着賞金が10〜12万円で、年末に行われた2歳重賞・金の鞍賞の1着賞金が60万円だから、新馬戦の50万円がいかに高額かがわかるだろう。

 高知競馬は売上げが落ち込んだ時期に2歳馬の入厩がほとんどなくなり、それゆえ2歳重賞の金の鞍賞も2002年を最後に休止となっていた。復活したのが、売上げが上向き始めた2009年度のことで、2010年1月1日に明け3歳馬の重賞として行われ、翌年度からはクリスマス前後に2歳重賞として行われている。

 それでも金の鞍賞の出走馬は、北海道や中央からの転入馬がほとんどという状況。そこで昨年、2歳馬の入厩を促進するため、7月という早い時期から高額賞金の2歳新馬戦が組まれた。

 つまりディアマルコは、高知競馬の2歳馬入厩促進策の、いきなり初年度からの成功例と言っていいだろう。10月までに4勝を挙げたディアマルコの重賞初挑戦は、笠松に遠征してのラブミーチャン記念で4着。その後地元で1勝を追加し、金の鞍賞では1番人気に支持されたものの3着だった。そして3歳になり、前述のとおりグランダム・ジャパンの若草賞、東海クイーンカップはともに2着だったが、今回ののじぎく賞で重賞初制覇となった。

 本コラムでも何度か取り上げていると思うが、高知競馬は1日平均の売得額が2007年度には4千万円余りにまで落ち込み、しかし2015年には1日平均1億8千万円余りと、じつに4.5倍増という劇的な回復を遂げた。これは、2009年7月にスタートした通年ナイター開催が、その後の地方競馬IPAT(地方競馬にJRA-PATで投票できる)をはじめとする時代の流れに見事にハマったところが大きい。

 そして今回の、2歳新馬として高知に入厩したディアマルコの活躍である。もちろん関係者の努力や先見の明があってのことなのだが、売上げの劇的な回復や、他地区に遠征しての活躍馬が次から次へと出てくるところなど、何というか高知競馬の引きの強さには驚かされるばかりだ。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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