オーストラリアの2歳勝ち馬頭数歴代最多記録に並んだスニッツェル

2016年07月27日(水) 12:00


40年にわたって生き続けてきた記録に肩を並べたスニッツェル

 7月23日(土曜日)にオーストラリアのニューキャッスル競馬場で行われた開催の第2競走に組まれたメイドン戦(芝1150m)で、1.55倍の1番人気に推されていたブクゼル(牡2)が優勝。同馬の父スニッツェルにとって、今シーズン30頭目の2歳勝ち馬となり、オーストラリア供用種牡馬が1シーズンで送り出した2歳勝ち馬頭数の歴代最多記録に並んだ。

 従来の記録は、1975/1976年シーズンにウィズアウトフェアがマークしたもので、スニッツェルは実に40年にわたって生き続けてきた記録に肩を並べたことになる。

 スニッツェルは、2007年と2011年の2度にわたって、シャトル種牡馬として社台スタリオンステーションで供用され、100頭を超える日本産まれの産駒もいるから、日本のファンの皆様にもお馴染みの種牡馬と言えよう。

 1200mから1300mの距離で、AJCサファイアSなど2つの準重賞を含む7勝を挙げた母スニペッツラスに、豪州の名種牡馬リダウツチョイスを交配され、2002年8月24日にオーストラリアで生まれたのがスニッツェルだ。

 現役時代の成績は15戦7勝。デビューするやいきなり3連勝を飾っているから、仕上がり早の特質は確かに持っていたようである。2歳時、3歳時の2シーズン走り、コーフィールドのG1オークレイプレート(芝1100m)、ワーウィックファームのG2チャレンジS(芝1000m)、カンタベリーのG3スカイラインS(芝1200m)、ランドウィックのG3アップアンドカミングS(1200m)と、4つの重賞を制した他、フレミントンのG1ニューマーケットH(芝1200m)2着、ランドウィックのG1TJスミスS(芝1200m)3着などの成績を残し、トップクラスのスプリンターとして高い評価を受けた。

 3歳シーズンをもって現役を退き、2006年にアロウフィールドスタッドで種牡馬入り。初年度の種付け料は3万3千豪ドル(当時のレートで約290万円)だった。

 最初に日本にやってきたのは、初供用の半年後だったから、社台スタリオンの先見の明には改めて驚かされる。ただし2007年と言えば、ディープインパクトとハーツクライが同じ社台スタリオンで種牡馬入りした年で、上質の牝馬がこの2頭に集まりがちだったというのは、スニッツェルにとっては不運であった。

 豪州におけるスニッツェル産駒は、2009/2010年シーズンから走り始め、初年度産駒からG2シルヴァースリッパーS(芝1100m)勝ち馬チャンスバイらが出たが、一方でいきなり大ブレークしたわけではなく、2010年の種付け料は2万7500豪ドルまで下がっている。

 だが2世代目の産駒から、2歳時から活躍し、古馬になってG1BTCカップ(芝1200m)を制することになるホットスニッツェルが出現。3世代目の産駒から、イーグルファームのG1ザTJスミスS(芝1600m)勝ち馬シズリング、2歳時からG1ゴールデンスリッパーS(芝1200m)2着などの成績を挙げた後、古馬となってG1ライトニングS(芝1000m)を制することになるスニッツァーランドらが現れるなど、世代を経るごとに成績が向上。そして4世代目の産駒となる2010年生まれから、G1コックスプレート(芝2040m)やG1オーストラリアンギニーズ(芝1600m)を制したシェイマスアワード、G1ギャラクシーS(芝1100m)勝ち馬スウィートアイディアらが。5世代目の産駒となる2011年生まれから、G1オーストラリアンギニーズ(芝1600m)勝ち馬ワンドジーナや、香港に渡ってHKG1香港クラシックマイル(芝1600m)、HKG1香港クラシックC(芝1800m)を制したサンジュウェレリーが出るなど、毎年コンスタントに大物を輩出し、押しも押されぬトップサイヤーの座に上り詰めている。

 産駒がこれだけ走れば、市場における産駒の評価が高まるのも当然で、今年1月に行われたマジックミリオン・ゴールドコースト1歳セールでも、4月に行われたイングリス・イースター1歳セールでも、最高価格馬はスニッツェル産駒だった。

 そして、産駒が走って、セールでも子供が高く売れるとなれば、自ずと上がるのが種付け料で、2012年には3万3千豪ドルだったのが、2013年には4万9500万豪ドル、2014年には7万1500豪ドル、2015年には8万8千豪ドル、そして2016年には11万豪ドル(現在のレートで約875万円)まで高騰している。

 一方で、日本における初年度産駒からは、G3函館2歳S(芝1200m)3着馬ルリニガナ、オープン特別のクリスマスローズS(芝1200m)2着馬ファーマクリームらが出た程度だったスニッツェルの日本での2度目の供用となった2012年生まれ世代からは、G3アーリントンC(芝1600m)勝ち馬ヤングマンパワー、G3小倉2歳S(芝1200m)2着馬レオパルディナらが出現。最初の世代よりは成績が向上している。ことにヤングマンパワーは、すぐにでも2つ目の重賞を手にして良いだけの力を示しており、スニッツェルの名が改めて日本の競馬でクローズアップされる機会もありそうだ。

 さて、オーストラリアのシーズンが閉幕するまで、残すところあと数日で、その間に、スニッツェルに果たして新記録となる31頭目の2歳勝ち馬が出るかどうかが、大きな焦点となっている。シーズン最終日となる7月31日にホークスバリー競馬場で行われる開催で、3頭のスニッツェル産駒がデビューを予定しているとの情報もあり、その結果が注目されている。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

関連情報

新着コラム

コラムを探す