トラストへの期待

2016年09月09日(金) 18:00


◆あらためて能力の高さを見せたといっていい

 川崎でデビューした期待馬、トラストが札幌2歳Sを制した。クローバー賞こそスタートでダッシュがつかず最後方からとなって、直線で内から抜け出したブラックオニキスをとらえきれず。後手を踏んだぶん、4コーナーで大外を回らされたというロスもあった。しかしそこで2着は確保して、札幌2歳Sの出走権を獲得。今回はスタートを決めて逃げると、一度も他馬に並びかけられることのないままの完勝。クローバー賞の1、2着が逆になっただけという決着だった。

 それにしても直線を向いてからのトラストは物見をしていたようで、頭を高く上げてまるでブレーキをかけているかのような走り。それでいて後続を寄せ付けずの完勝だったのだから、あらためて能力の高さを見せたといっていいだろう。

 地方馬のJRA重賞勝ちは、2014年1月の京成杯以来のこと。勝ったプレイアンドリアルは、馬主が岡田繁幸さん、河津裕昭調教師、柴田大知騎手ということで、今回のトラストもまったく同じチームだった。そして札幌2歳Sを地方馬が制したのは、2003年のモエレエスポワール以来13年ぶり。かつてはシーズン中に地方馬の何頭かが勝利を挙げていたJRA北海道シリーズでの地方馬の勝利も、2012年9月のすずらん賞をシーギリヤガールが勝って以来のことだった。

 レース後、トラストの中央入りが発表され、ネットなどには批判的な意見も散見された。岡田繁幸さんにとっては、地方に在籍したままでJRAのGIを勝つというのがコスモバルク以来の悲願だが、同時に日本ダービーのタイトルも1986年に14番人気のグランパズドリームで2着(勝ち馬はダイナガリバー)に入って以来の悲願となっている。

 コスモバルクではそれを同時に狙ったものの、日本ダービーでは好位から早めに先頭に立って8着。JRAのGIということでは皐月賞とジャパンCで2着に入ったが、勝利には至らなかった。それでも2006年のシンガポール航空国際Cで、地方馬による海外GI初制覇と同時に、日高の生産馬による海外GI初制覇という快挙を達成した。今回のトラストでは、ひとまず日本ダービーだけでもということで中央移籍という決断となったのだろう。

 コスモバルクの時には、ジャパンCや有馬記念など一部を除き、ほとんどのGIに出走するにはステップレースで一定の結果を残す必要があり、本番の前から常に目いっぱいの仕上げで臨まなければならないというリスクがともなった。それがプレイアンドリアルのときにはステップレースを経なくてもJRAの重賞である程度の賞金を稼いでいればGIへの出走が可能となり、コスモバルクの時代よりも多少は条件が緩和された。

 □地でなくとも、◯地の中央クラシック制覇は、2002年に桜花賞を制したアローキャリーが最後。牡馬では1989年に皐月賞を制したドクタースパート以来のこととなる。トラストの飛躍に期待したい。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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