コパノリッキー田辺裕信vsアウォーディー武豊/JBCクラシック・スプリント・レディスクラシック

2016年11月02日(水) 18:01


舞台の川崎競馬場、大規模リニューアル完了

 11月3日(祝・木)は地方競馬ファン待望の一日。1日に3つのJpnI競走が行われるスペシャルデー。川崎競馬場では4年ぶり3回目となる開催に向け、施設・設備の大規模なリニューアルを実施。ここで紹介しきれないほど場内は大きく生まれ変わりました。当日、現地観戦する方はぜひご自身の目でお確かめください。

 無料バスの発着所でもある第1入場門の頭上には広報用の大型ビジョンを新設。隣接するショッピング施設「マーケットスクエア川崎イースト」のお客様も思わず入場したくなるのでは。第2入場門も8色の枠色にカラフルにリニューアル。門を入ってすぐの広場にはパラソルが並べられ、オシャレなカフェテラスのよう。1号スタンド1階から2階へ上り下りできるエスカレーターも取り付けられました。

DGに魅せられて

▲第1入場門に新設された大型ビジョンには「JBC」のロゴが

DGに魅せられて

▲カフェテラスのようなオシャレな広場

 向正面の巨大なドリームビジョン。そしてパドックの大型ビジョンも全面リニューアルされ、今まで以上に鮮明で見やすい画面に。馬場内には大きな可動式の屋根や、新たな投票所も設けられ、馬場内でも快適に競馬を楽しむことが出来ます。サイズが広がり、新たに川崎競馬場のロゴマークも入ったエレガントなウイナーズサークル。JBC当日、この場所に立つのはどの馬の関係者の皆さんでしょうか?!

DGに魅せられて

▲向正面の巨大なドリームビジョン、今まで以上に鮮明で見やすい画面に

DGに魅せられて

▲パドックの大型ビジョンも全面リニューアル

DGに魅せられて

▲エレガントなウイナーズサークル、当日この場所に立つのはどの陣営か?!

 それでは3つのレースをひとつずつ展望していきましょう。

【JBCレディスクラシック】ブルーチッパー、堂々の逃げ宣言

 11月3日、川崎9Rはダート1600mで争われる『第6回JBCレディスクラシック』。2011年に創設された日本唯一の牝馬限定ダートJpnI競走。ミラクルレジェンド、メーデイア、サンビスタと名牝が歴史に名を残している女王決定戦。今回、ホワイトフーガが連覇に挑みます。

DGに魅せられて

▲連覇を狙う、昨年の女王ホワイトフーガ(撮影:高橋正和)

 昨年、サンビスタの連覇を阻んだのは4番人気だったホワイトフーガ。控える競馬でラチ沿いをロスなく回り、直線抜け出して5馬身差の圧勝。3歳馬による制覇はレース史上初めてのこと。その後、今年1月のTCK女王盃を快勝。牡馬との戦いに挑んだフェブラリーSは10着、さきたま杯は5着でしたが、続くスパーキングレディーC(今回と同じ川崎の1600m)を鮮やかに制しています。

 前走・レディスプレリュードは人気に応えられませんでしたが、それでも逃げ粘ったトーコーヴィーナスと同着2着まで最後伸びてきたのは立派。今年は連覇に向けて主役の1頭としてレースに臨みます。

 アムールブリエは昨年4着ののち名古屋グランプリ、エンプレス杯を制覇。8月のブリーダーズゴールドCでは2着タイニーダンサーに7馬身の差を付け、連覇を飾りました。今年はJBCクラシックに参戦するプランもありましたが、こちらに矛先を向け、JpnIタイトル奪取を狙います。JBCクラシックに出走するアウォーディーの半妹。兄妹同日JpnI制覇も夢ではありません。初めての1600mがどうかが、ポイントとなります。

 前哨戦レディスプレリュードを制したタマノブリュネット。4番人気の伏兵でしたが、後方からの競馬で前を行く有力馬たちをまとめて差し切った脚は本物。昨年6月に川崎の1600m(JRA交流’15スパーキングナイトチャレンジ)で勝ち鞍があるのも不気味。連勝中の勢いもあります。

 タイニーダンサーは昨年ホッカイドウ競馬所属時代にエーデルワイス賞、北海道2歳優駿を制し、今年JRAに移籍後3戦目で関東オークスを勝利。その後のレースはホワイトフーガ、アムールブリエらに敗れ、勝ち星を挙げていませんが“関東オークスを制した”という点は昨年のホワイトフーガを彷彿させます。

 JRA勢は他にも昨年のJBCレディスクラシック3着のトロワボヌール、初めてのダート戦に挑戦する桜花賞馬レッツゴードンキなど魅力的な馬が勢揃い。

 地方勢からは大井・荒山勝徳厩舎の2頭、ブルーチッパーとララベルを挙げておきましょう。

 まず今回、吉原寛人騎手と初コンビを組むブルーチッパー。川崎の1600mは牡馬を相手にスパーキングサマーCを連覇している得意の舞台。「ブルーチッパーの持ち味が活きるのは逃げたとき。テンに多少無理をしても逃げれば最後まで我慢する勝負根性の持ち主。吉原騎手には徹底して逃げてくれと言うつもりです」と、荒山調教師から堂々の逃げ宣言をいただきました。

DGに魅せられて

▲吉原寛人騎手と初コンビを組むブルーチッパー

DGに魅せられて

▲管理する荒山勝徳調教師

 ララベルはローレル賞、東京2歳優駿牝馬、浦和・桜花賞、ロジータ記念、しらさぎ賞を制している地方重賞5勝馬。レッツゴードンキと同じ4歳の桜花賞馬対決にも注目が集まります。荒山調教師は「レディスプレリュードはJRAの古馬と初めての対戦でしたが、一戦級とも互角のレースができることを証明できたと思います。そこからさらにステップアップできれば、JBCレディスクラシックも手の届くところにあるんじゃないかな」と大きな期待を寄せています。

DGに魅せられて

▲地方重賞5勝のララベル

 かつてクラーベセクレタが2着に健闘した(2012年)JBCレディスクラシック。ついに地方勢の優勝なるか?!ブルーチッパーとララベルの応援に力が入ります。

【JBCスプリント】1400mの距離を最も味方につける馬は?

 続いては川崎10R。ダート1400mで争われるダート短距離王決定戦『第16回JBCスプリント』。2007年、第7回をフジノウェーブが制し、JBC競走の中で唯一地方所属馬が歴史に名前を刻んでいます。今年のこのレースを紐解くカギとなる1400mという距離に焦点を当てて出走馬を紹介していきましょう。

 JRA勢の筆頭は連覇のかかる快速牝馬コーリンベリー。昨年もメンバー中唯一の牝馬として出走し見事逃げ切り、第3回を制したサウスヴィグラスとの父子制覇を果たしました。1400mの成績は[4-2-0-2]で連対率75%。川崎コースは初めてですが、気分よく自分のペースで逃げることができた時の爆発力は実証済み。

DGに魅せられて

▲昨年のゴール前、逃げるコーリンベリーに追いすがるダノンレジェンド(撮影:高橋正和)

 昨年1番人気に推されながらコーリンベリーに屈し2着に敗れたダノンレジェンド。その後、黒船賞、北海道スプリントC、クラスターCと次々に重賞を制していますが、東京スプリントで出遅れて敗れるなど取りこぼしも。実力馬が昨年の忘れ物・JpnIのタイトルを奪取し、リベンジなるか。1400mは[6-2-1-3]で連対率66.7%です。

 1400mの距離で浮上するのはベストウォーリア。[3-2-0-1]で連対率83.3%はメンバー中随一。川崎コースは初めてですが、東京、中京、盛岡でも重賞勝ちがあり左回りは大丈夫。得意の距離で昨年3着以上のパフォーマンスを見せてくれそう。

 前哨戦・東京盃を制した9歳でも衰え知らずのドリームバレンチノ。1400mは[1-4-1-4]で連対率50%。テレ玉杯オーバルスプリントを連覇したレーザーバレットは1400m[3-2-2-5]で連対率41.7%。この2頭にも注意が必要。

 地方馬の大将格はテレ玉杯オーバルスプリントでJRA勢相手に1番人気に推されたソルテ。ゴール前、レーザーバレットに差されてしまいましたが、休み明けのレースで57kgを背負い、逃げて2着(レーザーバレットは55kg)。負けて強しの内容で、今回も当然有力馬の1頭です。

 マイル戦で活躍している印象がありますが、1400mでも[2-2-0-1]と連対率80%。川崎コースも[3-1-0-1]と好相性。今年のJBCスプリントが川崎の1400mで実施されるという巡り合わせもソルテにとっては最大の勝機。フジノウェーブに続く2頭目の地方所属馬による制覇に期待が集まります。

DGに魅せられて

▲1400mでも実績のあるソルテ、川崎コースも好相性(撮影:武田明彦)

【JBCクラシック】無敗で頂点狙う武豊騎手×アウォーディー

 さあ最後は川崎11R。ダート2100mで争われる『第16回JBCクラシック』。ダート界に君臨してきた名馬たちが制してきた文字通りの頂上決戦。これまでアドマイヤドン(2002年、2003年、2004年)とヴァーミリアン(2007年、2008年、2009年)が3連覇を達成。今回、コパノリッキーがその偉業に挑戦します。

 かしわ記念、帝王賞、マイルCS南部杯とJpnIレース3連勝中のコパノリッキー。特に前走・南部杯のレースぶりは素晴らしく、6歳の秋を迎えさらに地力強化。心肺能力や精神面での落ち着きも増し、王者の貫禄を見せつけました。

DGに魅せられて

▲素晴らしいレースぶりを披露した前走の南部杯、引き続き田辺騎手とのコンビで(撮影:高橋正和)

 唯一の不安は初の川崎2100mという点ですが、自分の形で競馬ができればGI・JpnI8勝馬にとって「向かうところ敵なし」と言ってもいいでしょう。南部杯に続いて田辺裕信騎手とのコンビで臨みます。

 そのコパノリッキーの背中を知り尽くした武豊騎手が騎乗するのはアウォーディー。昨年の秋、5歳でダートに矛先を変えてから5連勝中。そのうちシリウスS、名古屋大賞典、アンタレスS、日本テレビ盃と重賞4連勝。ダートで無敗のまま頂点まで上りつめるのか大注目です。

 GI・JpnI10勝の記録を持つホッコータルマエも忘れてはいけません。南部杯のあと「年内で引退する」という発表があり、残すはJBCクラシック、チャンピオンズC、東京大賞典の3戦となりました。JBCクラシックと同じ舞台・2100mで行われている川崎記念を3連覇(2014年、2015年、2016年)。3戦3勝無敗のコースで、さらに記録を伸ばそうと意欲を燃やしています。

 去年の2着馬サウンドトゥルー。昨年暮れの東京大賞典を制しJpnIホースの仲間入りをしましたが、その後勝ち星からは遠ざかっています。今年の川崎記念ではホッコータルマエの2着。巻き返しはあるでしょうか?

 帝王賞2着ののち、夏の休養中にセン馬となったノンコノユメ。思えばサウンドトゥルーも4歳の夏にセン馬となってから徐々に力を付けていきました。ジャパンダートダービー馬の巻き返しにも期待。

 9月に新設された韓国のGI・コリアCを圧勝したクリソライト。JBCクラシックは2013年5着、2014年2着、2015年4着という成績で、JpnIを勝つには少し足りない印象でしたが、コリアCで強い競馬をしたことで、馬が自信をつけている可能性大。今までとは違う走りを見せてくれそうです。

 地方勢からはユーロビート。前走・東京記念で1番人気に応え、去年のマーキュリーC以来の勝利を挙げました。管理する渡邉和雄調教師は「ひとつでも上の着順を目指したい」とコメントしています。

DGに魅せられて

▲前走の東京記念は堂々1番人気に応えての勝利、渡邉師「ひとつでも上の着順を」(撮影:高橋正和)

 アメリカのブリーダーズカップを模範にしたレースとして2001年に創設されたJBC競走。今年もJBCクラシック、JBCスプリント、JBCレディスクラシック、3つのカテゴリーそれぞれに層が厚く、魅力あるメンバーが揃いました。トップホースたちの戦いはもちろん、ジョッキーたちの駆け引きからも目が離せません。ダート競馬の祭典にふさわしい一日になるよう、我々競馬ファンも各々の場所で特別な思いを持って観戦しましょう!

※次回の更新は11月21日(月)の18時。浦和競馬場で行われる「浦和記念」のコラムをお届けします!


JBCクラシックの出馬表はこちら→→→JBCスプリントの出馬表はこちら→→→JBCレディスクラシックの出馬表はこちら→→→場外発売所一覧はこちら→→→川崎競馬のホームページはこちら→→→地方競馬情報サイトはこちら→→→

【ダートグレード競走とは】
中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

荘司典子

埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。

関連情報

新着コラム

コラムを探す