ケンタッキーダービーへ向けた「ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー」

2017年03月29日(水) 12:00


◆マスターリー回避でますます混戦模様に

 4月に入るといよいよ、5月6日(土曜日)にケンタッキー州のチャーチルダウンズで行われる第143回“ラン・フォー・ローゼス”ケンタッキーダービー(d10F)へ向けた「ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー」戦線が、最終局面へと突入する。具体的に言えば、3月25日にドバイで行われたG2UAEダービー(d1900m)がそうであったように、ケンタッキーダービー出走枠を巡るポイントシステムが「1着・100点、2着40点、3着20点、4着10点」という、ダービープレップの中でも最もポイントが高いレースが、4月1日にフロリダ州のガルフストリームパークで行なわれるG1フロリダダービー(d9F),同日にルイジアナア州のフェアグラウンズで行われるG2ルイジアナダービー(d9F)を皮切りにして、全米各地で施行される時季を迎えるのである。

 前記した2レースの後は、4月8日にニューヨーク州のアケダクトで行われるG2ウッドメモリアルS(d9F)、同日にケンタッキー州のキーンランドで行われるG2ブルーグラスS(d9F)、同日にカリフォルニア州のサンタアニタで行われるG1サンタアニタダービー(d9F)、4月15日にアーカンソー州のオークローンパークで行なわれるG1アーカンソーダービー(d9F)までの6レースが、米国を舞台とした「最もポイントの高い」プレップレースとなる。

 そこでこの機会を捉えて、現段階でのケンタッキーダービー戦線を整理しておきたいと思う。

 ここまで西海岸のこの路線をリードし、全米的に見てもケンタッキーダービーへ向けた最有力馬と目されていたのが、7.1/4馬身差で制したG1ロスアラミトスフューチュリティ(d8.5F)を含めてデビューから無敗の4連勝で来ていたマスターリー(牡3、父キャンディライド)だった。だが同馬は、3月11日にサンタアニタで行われた、今季初戦のG2サンフェリペS(d8.5F)で勝利を収めた直後、左前脚に骨折を発症。戦線離脱を余儀なくされることになり、そうでなくとも混戦模様と見られていた今年のケンタッキーダービー戦線が、ますます混沌とすることになった。

 マスターリー以外の西海岸組となると、G2サンヴィセンテS(d7F)勝ち馬で、G2サンフェリペSは2着だったイリアッド(牡3、父ゴーストザッパー)、G1フロントランナーS(d8.5F)を含む重賞2勝馬で、G2サンフェリペSは4着だったゴームリー(牡3、父マリブムーン)らということになるが、やや小粒感を否めない。両馬はいずれも、4月8日のG1サンタアニタダービーに出走を予定している。

 一方の東海岸。この時季における表街道となるのが、フロリダ州のガルフストリームパークを舞台とした一連のダービープレップで、そんな中で現段階において頭1つ抜け出した存在となっているのが、3月4日に行われたG2フォンテンオヴユース(d8.5F)を制したガネヴェラ(牡3、父ダイアルドイン)である。2歳時は6戦し、サラトガのG2サラトガスペシャルS(d6.5F)、5.3/4馬身差で快勝したG3デルタダウンズジャックポットS(d8.5F)の2重賞を含む3勝。今季初戦となったG2ホーリーブルS(d8.5F)はアイリッシュウォークライ(牡3、父カーリン)の逃げを捉えられずに2着に敗れたが、G2フォンテンオヴユースSでは、そのアイリッシュウォークライを含むメンバーを後方から豪快に差し切り、最後は後続に5.3/4馬身差をつける快勝を演じている。ガネヴェラは今週末のG1フロリダダービーに出走を予定している。

 フロリダ州における裏街道となるのが、タンパベイダウンズを舞台としたプレップレースだが、今年はここに進路を取ったマクラケン(牡3、父ゴーストザッパー)の評判も非常に高い。

 2歳時の戦績、3戦3勝。そのいずれもが、ケンタッキーダービーと同じチャーチルダウンズを舞台としたレースで、3連勝目となったのが重賞初制覇となったG2ケンタッキージョッキークラブS(d8.5F)であった。同馬の今季初戦となったのが、2月11日にタンパベイダウンズで行われたG3サムデイヴィスS(d8.5F)で、マクラケンはここも後方からしっかりとした末脚を繰り出して差し切り、デビュー4連勝を果たしている。ところが2月末、そのマクラケンが左前脚の球節に炎症を発症。予定していた3月11日のG2タンパベイダービー(d8.5F)を回避することになった。疾病はごく軽いもので、そのタンパベイダービーが行われた3月11日には本格的な調教を再開。4月8日のG2ブルーグラスSで戦列復帰を予定している。

 マクラケン不在のG2タンパベイダービーを4.1/2馬身差で快勝したのが、G3サムデイヴィスSでマクラケンの2着だったタップリット(牡3、父タピット)である。G1スピナウェイS(d7F)勝ち馬アピーリングゾフィーの2番仔で、ファシグティプトン・サラトガ8月市場にて120万ドルという高値が付いたのがタップリットだ。次走は4月8日のG2ウッドメモリアルSかG2ブルーグラスSの予定だ。

 中部地区にも、デビューからここまで無敗で来ている期待馬が2頭いる。

 1頭は、2月20日にオークローンパークで行なわれたG3サウスウェストS(d8.5F)を3.1/2馬身差で快勝し、デビューから3連勝を果たしたワンライナー(牡3、父イントゥミスチフ)で、次走は4月8日のG2ウッドメモリアルSの予定。

 もう1頭は、3月18日に同じくオークローンパークで行なわれたG2レベルS(d8.5F)を2馬身差で制し、こちらもデビューから3連勝を飾ったマラガシー(牡3、父シャックルフォード)で、次走は4月15日のG1アーカンンソーダービーに向かう予定だ。

 ここまでお読み下さって、「あの馬はどうした?!」と思っていらっしゃる方も多いと思う。G1BCジュヴェナイル(d8.5F)の勝ち馬で、エクリプス賞2歳牡馬チャンピオンとなったクラシックエンパイア(牡3、父パイオニアオヴザナイル)の名前が出てきていないのだ。

 同馬は、2月4日にガルフストリームパークで行なわれたG2ホーリーブルS(d8.5F)で今季初出走を果たしたのだが、パドックでも馬場入場でもひどいイレコミを見せ、ゲートに入る頃にはレースが終わった状態で3着に敗れてしまった。クラシックエンパイアは2歳9月にも、G1ホープフルSで発馬直後に回れ右をして騎手を落としたことがあるように、気性的な難しさを秘めた馬である。その後は立て直しを図られ、4月8日のG2ブルーグラスSか4月15日のG1アーカンソーダービー出てくる予定。そこは2歳チャンピオンにとって、内容次第で戦線上位に再浮上する可能性もある一方で、場合によっては完全に圏外に去ることにもなりかねない、瀬戸際の戦いとなりそうである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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