日本産馬による北米ダートG1制覇なるか、ベルモントS展望

2017年06月07日(水) 12:00


※編集部注:クラシックエンパイアは、ベルモントSの出走を回避いたしました(6月8日、15時更新)。

◆エピカリスはルッキンアットリーと同等の評価

 今週土曜日(10日)にニューヨーク州ベルモントパークで行なわれる、北米3歳3冠最終戦のG1ベルモントS(d12F)の展望をお届けしたい。

 ケンタッキーダービー馬オールウェイズドリーミング(牡3)もプリークネスS勝ち馬クラウドコンピューティング(牡3)も回避した影響からか、一時期は、1983年に記録された15頭立てという、このレース史上の最高出走頭数に匹敵する数の馬が出てくる可能性もあったが、その後回避する馬が出て、12〜13頭立てとなる模様だ(現地5日現在)。 

 当日、1番人気が予想されるのが、クラシックエンパイア(牡3、父パイオニアオヴザナイル)である。昨年の全米2歳牡馬チャンピオンだが、今季初戦となった2月4日のG2ホーリーブルS(d8.5F)で、レース前にひどいイレ込みを見せて、勝ち馬から8.3/4馬身差の3着に敗退。なおかつレース後、右前脚の蹄に膿腫を発症していることが判明し、戦線を離脱することになった。

 復帰したのは4月15日のG1アーカンソーダービー(d9F)で、ここを勝って3度目のG1制覇を果したが、大目標だったG1ケンタッキーダービー(d10F)では4着に敗退。続くG1プリークネスS(d9.5F)では、逃げたケンタッキーダービー馬のオールウェイズドリーミングに真っ向から喧嘩を売りに行き、オールウェイズドリーミングを競り落として直線で先頭に立ったものの、先行争いを3番手で傍観していたクラウドコンピューティング(牡3)に、ゴール寸前で差されて2着に終わっている。

 前走の内容は「敗れて強し」を思わせるもので、ケンタッキーダービー馬もプリークネスS勝ち馬もいないこの顔触れならば、能力的に抜けているとの見方が一般的だ。なおかつ父は、15年の3冠馬アメリカンフェイローを輩出した種牡馬で、その父エンパイアメーカーは2003年のベルモントS勝ち馬だから、距離延長も問題ないと見られている。

 クラシックエンパイア同様、3冠皆勤となるのがルッキンアットリー(牡3、父ルッキンアットラッキー)だ。しかも、ケンタッキーダービー2着、プリークネスS4着と、クラシックエンパイアに匹敵する安定した成績を収めている。ただし、クラシックエンパイアとの直接対決で先着したのはケンタッキーダービーのみで、2歳時のG1ブリーダーズフューチュリティ(d8.5F),G1BCジュヴェナイル(d8.5F),3歳春のG1アーカンソーダービー、そして前走G1プリークネスSでは、いずれもクラシックエンパイアの後塵を拝しており、序列という意味ではクラシックエンパイアの下に置かざるを得ないのが実情だ。

 父ルッキンアットラッキーは、G1プリークネスSを勝った後、G1ベルモントSを回避しているが、その父スマートストライクは、G1BCターフ(芝12F)勝ち馬イングリッシュチャネルや、G1ベルモントS2着馬カーリンらを出しており(そのカーリンは種牡馬としてベルモントS勝ち馬パレスマリスを輩出)、10Fを越えたからと言ってパタっと止まるサイヤーラインではない。一方、母の父は8F以下の距離で活躍したラングフュールだけに、こちらの影響が強いとゴール前で失速する危険性もありそうだ。
  
 ブックメーカーの前売りオッズを見ると、ルッキンアットリーと同等の評価を受けているのが、日本から参戦するエピカリス(牡3、父ゴールドアリュール)である。機材トラブルで出発便の離陸が10時間遅延になったと聞いた時にはおおいに心配したが、遅延が判明したのは美浦を出発する前で、その10時間余りを美浦で過ごせたのは幸いであった。現地時間の木曜日午後2時50分にベルモントパークに到着し、土曜日のお昼前に着地検疫期間が明け、早速サブトラックで運動をしたとの報告が入っている。

 日本では4戦無敗の同馬は、前走G2UAEダービー(d1900m)でサンダースノウ(牡3)に短頭差敗れて初黒星を喫したが、そのサンダースノウが5月27日にカラ競馬場で行われたG1愛二千ギニー(芝8F)で、欧州3歳マイル路線の最強馬チャーチル(牡3)から2馬身半差の2着に好走。UAEダービーが高水準であったことを実証した。

 エピカリスの父ゴールドアリュールは3歳時、G1日本ダービー(芝2400m)で勝ち馬タニノギムレットから0.3秒差の5着に健闘。この距離に対する適性を持っていたことが窺える。そしてエピカリスの母の父は、G1凱旋門賞(芝2400m)勝ち馬カーネギーだ。12Fへの距離延長は、歓迎したい1頭であろう。

 果たして、日本産馬による北米ダートG1制覇という、歴史的快挙が達成されるのか。最終的な結論は、現地水曜日に発表される枠順などを見た上で、週末に改めてネットケイバの読者の皆様にお伝えしたいと思っている。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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