2017年06月28日(水) 18:00
戸崎圭太騎手といえば、昨年中央で187勝を挙げて3年連続でリーディングジョッキーとなった現役トップの方である。しかも、昨年は制裁点ゼロでのリーディングとなり、これは史上初めての大記録であった。1980年7月生まれの現在36歳。1998年、大井競馬でデビューし、2013年に地方からJRA騎手に転じた経歴は、すでによく知られたことだ。
6月26日(月)、その戸崎騎手が夫人と子息を伴って浦河を訪れた。招待したのは、BTC利用者振興会(高樽秀夫会長)。優駿ビレッジ「アエル」の1階レストランを貸し切りにして、この日の夜、「戸崎圭太騎手との夕べ」と題する懇親会が開催された。約100人の参加者が9つのテーブルに分かれて座り、戸崎騎手との質疑応答や、プレゼント抽選会なども行なわれ、ひじょうに盛大であった。
参加者の大半は、日頃BTCで育成馬の調教に従事する若者たちである。利用者振興会によれば「彼らに笑顔になってもらいたいと考えて」企画した懇親会だという。やはり、戸崎圭太騎手の知名度と存在感は抜群で、歓談が始まると、次々にサインや記念写真を求める人々の列ができていた。
戸崎騎手からは、ムチやゴーグルなどの品々がプレゼント用に提供され、あらかじめ配布されていたパンフレットに付された番号を抽選する方式で進行した。また、各育成牧場からも様々な品物が拠出され、商品券や折り畳み自転車、テレビなどもあって、場が異様に盛り上がった。
戸崎騎手は、疲れた表情も見せず、マイクを持って質問に丁寧に答える姿が印象的であった。誠実で落ち着いた人柄が伝わってきた。
普段、中央の騎手と接する機会のない民間の育成牧場で働くスタッフにとって、戸崎圭太騎手はいわば「雲の上の存在」である。また、牧場間の枠を超えた横のつながりがあまりないのが現状で、こうした試みは、とても意義深いと感じた。同じテーブルにそれぞれ違う育成牧場のスタッフが座っており、そこから新たに交遊関係が生まれると、仕事に対しても励みになる。この懇親会の最後に、テーブルごとに戸崎騎手との記念撮影で幕を閉じた。
さて、その翌日27日(火)。今度は、戸崎騎手がBTCの調教場を歴訪し、個別に技術指導をして頂くスケジュールである。あいにくの曇り空でやや肌寒いくらいの気温であったが、午前9時に、利用者振興会・高樽会長の車に同乗してまず戸崎騎手が訪れたのは、屋内600mダートコースである。前夜のうちに、翌日のおおまかな予定を聞かされていた各牧場の調教主任や現場の責任者クラスが次々に集まってきた。
数頭ずつキャンターで周回した後、出口付近で輪乗りになり、そこで騎乗者から実際の騎乗姿勢などについて質問し、戸崎騎手がそれに答えるという形式で、いくつかの牧場の調教風景を見学しては、その都度、身振り手振りで熱心に指導していた。
BTCは面積が広く、しかも、調教場が屋内と屋外を合わせて何か所にも分かれている。600m屋内ダートの後は、直線1000mの屋内ウッドコース、さらに1600mダート(外)、そして坂路と、それぞれ30分間隔で、各牧場の調教風景を見て回っていた。
戸崎騎手によれば、BTCを訪問するのはこれで二度目だという。「前回は15年くらい前でしたね。まだ地方にいた時代でした」とのこと。おそらく15年前と現在とでは風景も印象も一変していることと思われるが、今回の訪問が戸崎騎手に果たしてどのように映ったものか。
浦河は千歳空港からも2時間余かかるので、やや遠いのが難点だが、ここBTCで育成された馬は中央競馬で年間700勝以上、地方競馬でも2000勝を挙げており、日本の競馬を語る上で欠かすことのできない一大拠点である。こうした中央騎手の来訪は、育成スタッフたちにとっても何より大きな刺激になり、もっとあっても良い気がする。今回の戸崎圭太騎手の来訪はひじょうに良い企画であった。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。
プロフィール
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