トレセンの安全を守る「栗東保安隊」隊長の大谷さんに直撃!

2017年11月07日(火) 18:00

栗東保安隊

隊長の大谷さんにインタビュー!


放馬の時は毎回緊張します

 競馬日和の3日間開催を楽しまれましたか?京都・東京・福島の中央3場と大井競馬場でのJBCレース、週初には北海道2歳優駿が門別で開催され、騎手や関係者の皆様お疲れ様でした。ファンの皆さんはもりもり競馬を楽しまれたことでしょう。

 ミルコ兄弟の大活躍と豊騎手の活躍、そして花の12期生の一人、古川騎手のみやこS「テイエムジンソク」の完勝に思わず歓声をあげました。やっぱり同期の活躍は、うれしいですね。年末が楽しみになりますね。

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 さて、栗東トレーニングセンターの新スタンドが完成し、10月25日に竣工式を終え引っ越しも済ませ、ピッカピカのスタンドに戸惑いながらウロウロする関係者がたくさんいました。なんといっても最高なのは3階建てから4階建てになり、さらにエレベーターが付いたことです。

 トレーニングセンター全体を警備している保安隊の方々は「ますます気を引き締めて警備しないといけないですね」と話されていました。

 今週は、栗東トレーニングセンターの安全を守ってくださる「栗東保安隊」に密着、隊長の大谷さんに「保安隊の仕事」についてお聞きしました。

常石 今日は保安隊のお仕事についてお聞きしたいので、よろしくお願いします。早速ですが、保安隊は、日ごろどんなお仕事をされているんですか?

大谷 そうですね、簡単に言うと競馬の公正確保のために、栗東トレーニングセンターの管理地域及びその周辺において、厩舎関係者の方々や競走馬が安全に過ごせるように見守るのが、私たち保安隊の主な仕事です。

常石 厩舎エリアだけではなく、社宅の方へも見まわりをしてくれていますよね。危険な箇所も多いでしょうね。僕も以前社宅に住んでいたので、夜中に保安隊の巡回のバイクの音が聞こえると、なんとなくホッとして、安心した気分になりました。

大谷 そう感じてもらえたなら、うれしいですね(笑)。

常石 厩舎地区の巡回で何か気を付けていることはありますか?

大谷 色々ありますが、例えば、厩舎巡回時は、特に調教時間中は馬を驚かせないように、バイクの音を避けるために自転車を使用したり、その際にもブレーキ音など異音がする自転車は使わないようにするなど、常に馬優先、運動の邪魔をしない様に、細心の注意を払っています。

栗東保安隊

調教時間中は馬を驚かせないよう自転車を使用

 また、厩舎作業が終わり厩舎関係者の方々が少なくなる時間帯や夜間の見回りでは、五感を働かせて、火災予防や防犯等にも着意しています。

常石 そんなに細かいことまで、配慮しているんですね。ところで、先日放馬があったときには驚きましたが、そのような時、保安隊の皆さんはどんな対応をされるんですか?

大谷 放馬については調教時間中のみならず、いつ発生しても迅速・的確に対応できるように、日頃から警戒心を持ち勤務しています。そして、放馬発生時は直ちに各ポスト等で勤務中の隊員に放馬発生を一斉に連絡し、各通用門を閉めたり、隊員が馬の後を追ってその状況を遂一把握、相互に情報を共有して、放馬を絶対に厩舎地区外に出さない様に迅速・的確に行動します。

 放馬の時は毎回非常に緊張しますね。厩舎関係者の方々が、いつも積極的に放馬を捕まえてくださるので、大変感謝しています。

常石 保安隊員として必要なことは、どんなことがありますか?

大谷 どんな仕事にも言えると思いますが、「やる気・元気・根気」が必要です。特に昼夜勤務ですから健康維持が大切で、隊員は公休日にもジムや各種スポーツを通じて鍛錬に励み、たまには温泉にでも入って心身をリフレッシュしています。

常石 最近は、事故など無かったですか?

大谷 ちょっとした事故はありましたが、大事には至っていません。私たちにとって、厩舎関係者が安心してお仕事をしていただけることが一番うれしいので、抜かりなく緊張感をもって勤務しています。常石さんたちも、そうではないですか? 馬に跨るときは、いつも真剣勝負ですよね。

常石 任された馬はいつも責任感をもって乗ってきたように思います。昔の話ですが…(笑)。今は乗馬をやっているんですが、競馬とは違って乗馬はとってもおとなしく、お尻の方へ行っても危険なことは少ないのですが、それでも危ないと思うことはあります。でも、馬乗りはやめられないんです。ところで24時間体制での勤務ですよね、仕事内容も多いでしょうね。

大谷 重要な仕事の1つは、各通用門での入場チェックです。

栗東保安隊

通用門での入場チェック

常石 厳しくチェックされ、通行章が無いと入門できませんよね。

大谷 その通りで、通用門管理は、公正を確保するために、一番大切なことです。厩舎関係者の方々には、通門する際、通行章の提示にご協力をいただいており助かっています。みなさんのご協力があるからこそ出来ることで、非常に感謝しています。

 面会者については、その目的を確認し、被面会者の承諾を得るなどの定められた手続きをしていただいています。

栗東保安隊

入場時は通行章の提示がないと入れません!

常石 以前、通行章を落としたことがあったんですが、保安隊の方が徹底的に探してくれたのには、驚きました。その時、通行章の大切さを痛感しました。ありがとうございました。

 もう1つ、苦くて嬉しい思い出があるんですよ。落馬して怪我した後も、どうしても馬に会いたくて毎日毎日、通用門まで来るんですが、その度に、保安隊の方が中尾正調教師に連絡を取っていただき、調教師が迎えに来てくれて、中尾厩舎で過ごしたことを覚えています。

 余談ですが、ほうきをもって寝藁作業をしようとしても、怪我の後遺症麻痺があるために上手く使えずにいると、厩務員さんから「つねちゃん、今綺麗に寄せたのに、またバラバラにするんか?」と苦情をいわれたことがありました。それでも、馬に会い、触れているだけで、心地よかったです。馬からパワーとエネルギーをいただき、僕は生きているんですね。

 そして皆様から応援していただき、そのおかげで、コラムのお仕事をいただけたんです。いつも周りの方々が親切にしてくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。記憶障害がありますが、当時の保安隊の方々の献身的な行動は、今でもしっかり覚えています。当時は、大変迷惑かけました。ありがとうございました。

大谷 そうだったんですね…そんなこともあったんですよね。当時、中尾調教師から頼まれていたんです。常石さんが通用門に来られたら連絡をもらいたい、と。人を大切にする、先生の懐の大きさに感動しました。

常石 今でも、先生のお宅にお邪魔し、競馬談義をしたりアドバイスをしていただいたりしています。息子さんの秀正調教師にもお世話になっています。ところで、これからGIが始まり、ファンの方の調教見学も多くなってきますよね。

大谷 JRA(栗東トレセン)の計画する調教見学ツアー等で、ファンの方が見学に来ていただけるのは大歓迎です。JRA職員の方が、見学を楽しんでいただけるように考え、工夫しています。騎手の方に会えるサプライズがあったりするそうですよ。

 トレセン内では、競走馬をはじめ貴重なものに巡り合えますから、きっと楽しめると思いますね。これからは、新スタンド見学も楽しみになってきますね。新設された4階からは、調教の様子が一望できることでしょう。私たちは、調教時間帯にはスタンドの中には入れないので、外から眺めているだけですからね(笑)。

常石 調教見学には、僕もときどき参加しますが、イヤホンをつけて細かく説明をしてくれたり調教コースの感触を体験できたり魅力いっぱいですね。

 今日は、いろんなお話を聞かせていただき、ありがとうございました。いつも、みんなの安全を守っていただき、ありがとうございます。

大谷 大きな事故もなく、無事にここまで来られているのは、関係者の皆様のご協力があってのおかげと、重ねて感謝いたします。これからも、厩舎関係者の皆様も馬も、安全に、かつ安心して過ごせるように、縁の下の力持ちとして頑張ります。

***

 とっても気さくに話してくださり、保安隊のお仕事について教えてくれました。最後に…保安隊の皆さんが、毎朝されているラジオ体操に参加させていただきました。ひさしぶりだな〜。

栗東保安隊

保安隊の皆さんとラジオ体操!

 ファンの皆様も調教見学に是非応募してみてください。魅力モリモリですよ!!

つねかつこと常石勝義でした。

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常石勝義

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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