ブリーズアップセールの季節を迎える北半球

2018年02月28日(水) 12:00


◆老舗市場のバレッツはリニューアルオープン

 北半球のブラッドストックマーケットはいよいよ、調教済みの2歳馬が上場されるブリーズアップセールの季節を迎える。

 皮切りになるのは、3月13日・14日の両日に北米フロリダ州のオカラで開催される「OBSマーチセール(公開調教3月8日〜10日)」だ。これに続くのが、3月28日に同じく北米フロリダ州のガルフストリームパークで開催される「ファシグティプトン・ガルフストリームセール(公開調教3月26日)」である。

 そして、開催フォーマットに変更があったのが、2歳セールという概念を日本の競馬社会に持ち込んだ「バレッツ」である。バレッツは従来、2歳のセレクトセッションを「マーチセール」と銘打って3月に、2歳の一般セッションを「メイセール」と題して5月に行ってきた。しかし、今年からこの2つのマーケットを統合。「バレッツ・スプリングセール」として4月4日に開催されることになったのだ。

 またバレッツは昨年から、セール開催地を従来のフェアプレックスパークから、風光明媚なリゾート地デルマーに移しており、4月2日に行われる公開調教も4日のセールも、デルマー競馬場が開催地となっている。昨年のアメリカにおける競走馬市場は概ね好調に推移した中、最も活発だったのが2歳セールだった。21日にザ・ジョッキークラブが発表した「ファクトブック」によると、2017年にアメリカでは、2214頭の2歳馬が総額1億9791万4980ドルで購買されており、平均価格は前年比にして18.8%も跳ね上がる8万9392ドルをマーク。

 1歳セールにおける平均価格も前年比13.8%アップの6万8933ドルと急伸したものの、2歳セールの伸びには追い付かず、端的に言えば「1歳馬より2歳馬の方が高い」時代が、アメリカでは既に14年続いている。果して今年も2歳市場は好調を維持できるかどうか、そしてそんな中、日本人購買者は思い通りの仕入れを出来るどうか、おおいに気になるところである。

 前年の677頭から今年は573頭と、上場頭数を大きく絞り込んできたのが、「OBSマーチセール」だ。アメリカは生産頭数が減少していることが背景にあろうが、量より質をという主催者サイドの意図も当然あるかと思う。アメリカのスーパーサイヤー・タピット産駒が3頭いる他、15年の当セールにて購買されて日本へ渡り、準オープンまで出世しているゴルゴバロースの父スキャットダディの産駒が6頭含まれているなど、楽しみな品揃えとなっている。

「ファシグティプトン・ガルフストリームセール」も、前年の160頭から今年は154頭と、わずかではあるがカタログ記載馬数を減らしている。このセールでは昨年、4頭が日本人馬主に購買されているが、このうちの1頭が、2月4日に京都で行われた未勝利戦を経験馬相手に圧勝してデビュー勝ちしたコパノキッキング(セン3、父スプリングアットラスト)である。

 ここも、タピット産駒が3頭上場を予定している他、メダグリアドーロ産駒が7頭、スキャットダディ産駒が7頭、カーリン産駒が5頭、ゴーストザッパー産駒が5頭、クオリティロード産駒が3頭と、全上場馬の2割近い30頭が、2017年の北米トップテンサイヤーの産駒という、豪華なラインナップとなっている。

「バレッツ・スプリングセール」は、前述したように前年との比較は出来ないが、今年は157頭が上場予定。ブラックタイプなど上場馬の詳細は、今週末までには、バレッツ社のウェブサイトにアップされる予定だ。昨年の「バレッツ・マーチセール」では4頭が日本人馬主に購買されているが、このうちの1頭が、デビュー2戦目から3連勝で1月27日のOPクロッカスS(芝1400m)を制したリョーノテソーロ(牡3、父ジャスティンフィリップ)である。

 今年のバレッツは、言ってみれば老舗市場が装いも新たにリニューアルオープンするわけで、例年以上に注目を集めそうである。さて、4月になると、2歳セールサーキットはヨーロッパに舞台を移し、4月17日・18日の両日に英国のニューマーケットで開催される「タタソールズ・クレイヴン・ブリーズアップセール(公開調教4月16日)」。5月12日に仏国のドーヴィルで開催される「アルカナ・ブリーズアップセール(公開調教5月11日)」と続いていく。

 POG戦略の参考にもなる2歳マーケットの動向に、皆様もぜひご注目いただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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