【安田記念】血統分析 芝マイル向きの配合も高速決着は歓迎しないリスグラシュー

2018年05月28日(月) 15:55

コラムG1

▲得意舞台で今度こそG1タイトルを手にしたいリスグラシュー(撮影:下野雄規)

高速決着が続く東京芝コース。安田記念が行われる東京芝1600mにマッチした血統は?“血統専門家”望田潤さんに出走予定馬の血統について見解を伺いました。


スワーヴリチャード、距離不足を格で補えるか

大阪杯を勝ったスワーヴリチャードがマイルG1を狙って参戦。14年のジャスタウェイの再現なるかに注目が集まる。香港からはウエスタンエクスプレスが来襲、NHKマイルやヴィクトリアマイルから3歳勢の参戦もあって面白い顔ぶれになった。ちなみに2008年以降の安田記念で牝馬は[2-0-0-13]。この2勝は08年と09年のウオッカの連覇だ。

アエロリット

ミッキーアイルのイトコ。3代母ステラマドリッドからはラッキーライラックなどが出る。テイエムジンソクとは父クロフネと牝系マイジュリエットが同じ。先行ゴリ押し脚質の活躍馬が出る北米A級牝系だ。アエロにしてもラッキーにしてもジンソクにしても、前走は好位で少し丁寧に乗りすぎてしまった部分はあったか。東京でもNHKマイルのように荒っぽく乗ってしまったほうが持ち味が活きるのでは。

距離○ スピード○ 底力○ コース△

ウインガニオン

ダート重賞3勝シルクメビウスの全弟。母チャンネルワンは北米血脈最強のパワーを誇るブサンダのクロス3×5を持つので、ダートを走るパワーやマイルを先行するパワーを伝える繁殖牝馬だ。だからステイゴールド産駒にしてはやや力馬っぽくて、6〜8月は[7-1-0-1]と暑い時期に調子を上げる。京王杯では好位で踏ん張り復調ムードがうかがえた。ここは正攻法ではさすがに苦しいメンバーだが…。

距離○ スピード○ 底力○ コース△

ウエスタンエクスプレス

チャンピオンズマイルと香港マイルでビューティージェネレーションの2着。香港のトップクラスのマイラーの一頭といえる。一方で未だにG勝ちがないように、やや俊敏さや鋭さに欠けるので相手ナリに走るが勝ちきれない。父エンコスタデラーゴはキャンベルジュニアと同じで、母父マローディングはキャンベルの母母父でもある。キャンベルも重賞2着が3回あるが、似た配合の似た者同士というイメージだ。

距離○ スピード○ 底力○ コース△

キャンベルジュニア

ブルーダイヤモンドS(豪G1・芝1200m)2着パリアーのイトコで、母メリトは豪G1を2勝した活躍馬。父エンコスタデラーゴはスプリンターズS勝ち馬のウルトラファンタジーの父でもある。フェアリーキング×デインヒルだからパワーで走るマイラー血統で、サーアイヴァーの継続クロスで高速馬場向きの軽さも兼備。東京マイル向きの斬れ味が抜群とは言いがたいので、先行粘り込みに活路を見出す。

距離○ スピード○ 底力○ コース△

サトノアレス

サトノフェラーリやサトノヒーローの全弟で、ストームキャットやロイヤルアカデミーが出るクリムゾンセイントの牝系。ディープ×デインヒルはフィエロと同じ。フィエロと似たマイラーだが、こちらのほうが少し脚質が軽いというか、軽さ俊敏さに頼った差し方をする。京王杯では直線目につく鋭さで差のない3着。あれでゴール前でもうひと脚使えれば、もうひと沈みあればG1でも圏内だが。

距離○ スピード◎ 底力○ コース○

サングレーザー

母母ウィッチフルシンキングはパッカーアップS(米G3・芝9F)勝ち馬で、産駒にメーデイアやロフティーエイムがいる。パワーと粘りに長けた牝系といえるが、本馬は父がディープインパクトでサーゲイロードのクロスを持つので、しなやかなストライドで斬れるタイプに出た。前の駆動がいいので、京都外マイルがベストコースで東京マイルはセカンドべスト。前走で高速決着にも自信を持って挑む。

距離◎ スピード◎ 底力○ コース○

スターオブペルシャ

ロサギガンティアの3/4弟で、母ターフローズはリディアテシオ賞(伊G1・芝2000m)勝ち馬。母父ビッグシャッフルはボールドルーラーの傍系だがドイツでリーディングサイアー6回。ここへきて準オープンとオープンを連勝し、兄同様古馬になってジワジワ成長してきた感がある。前走谷川岳Sも完勝だっただけに侮れないが、ダイワメジャー産駒だけに、東京マイルで高速決戦になると少しタルいところはありそうだ。

距離○ スピード○ 底力○ コース△

スワーヴリチャード

バンドワゴンの下で、母母キャリアコレクションはBCJフィリーズ2着。母父アンブライドルズソングはトーホウジャッカルやダノンプラチナの母父。大阪杯はペースが緩んだところで押し上げて持続力でねじ伏せたが、マイルのG1では差す形になるだろう。ハーツクライ産駒は芝1600mのG1で[1-3-2-22]、唯一の勝ちはジャスタウェイの不良馬場の安田記念。距離不足を格とコース適性で補いたいが、昨今のマイルG1は中距離馬が格で勝ちきるシーンも多い。

距離○ スピード○ 底力◎ コース◎

タワーオブロンドン

ディーマジェスティのイトコでエルノヴァの甥。父レイヴンズパスはQエリザベス二世S(英G1・芝8F)とBCクラシック(米G1・AW10F)に勝った。ゴーンウエスト≒ミスワキのニアリークロス2×3らしい短距離体型だが、母父にフランス血統の斬れ味が入るので、ルメールを背になかなか味のある差し脚をみせる。ルメールだからマイルまでこなしている部分もあるだろう。いずれは1200〜1400に寄ってきそうな馬だ。

距離○ スピード○ 底力○ コース○

ダッシングブレイズ

マーファやマリアズモンなどが出る北米牝系。父キトゥンズジョイは北米リーディングサイアーでジャンダルムのような機動力が売りだが、本馬はサーアイヴァーとミスワキのナスキロ柔さで走るストライド型。母父にリローンチの血が入るのでマイラーというには少しダラッとした脚質でもあり、ベストは大箱1800mの好位流れ込みだろう。額面どおりエプソムCがベストパフォーマンス。

距離○ スピード○ 底力○ コース○

ヒーズインラブ

サンデーウィザードの半弟で、母シーズインクルーデッドはデルマーデビュタント(米G1・ダ7F)3着。母父インクルードはピムリコスペシャルH(米G1・ダ9.5F)勝ち馬で、ブロードアピールと同じブロードブラッシュ産駒だから追い込みに定評がある血だ。母系にはターントゥやトムフールの軽いスピードが強い。ハービンジャー産駒にしては俊敏で機動力に富む走りで、実績どおり中山向きの差し馬といえる。

距離○ スピード○ 底力○ コース△

ブラックムーン

トムロルフ5×4を持つアドマイヤムーン産駒で、全体にパワーに寄せた配合。芝マイルで1分31秒台の持ち時計もあるが、肩が立っていて掻き込んで走るので、タフな馬場や時計のかかる決着がベターには違いない。京都金杯も米子SもキャピタルSも、西宮SもスピカSもドンカスターCも、勝ったときはほとんどが大外一気。母系に気難しいヴェイグリーノーブルの血が入るので、馬群を嫌う面はあるかもしれない。

距離○ スピード△ 底力○ コース△

ペルシアンナイト

母はゴールドアリュールの全妹にあたる。母系にヌレイエフとニジンスキーが入るのはディアドラやモズカッチャンと同じ「ハービンジャー黄金配合」。ハービンジャー産駒らしい重厚なナタの斬れが武器で、大阪杯2着も最後はよく詰め寄っていた。血統的にはマイラーというより中距離馬で、マイルCS勝ちが稍重で1:33.8。1分32秒決戦になって差し込めるかとなると、パンパンの高速馬場では少し評価を下げるべきかも。

距離○ スピード○ 底力◎ コース△

ムーンクエイク

バウンスシャッセ、ホーカーテンペスト、フロアクラフトの下で、父がアドマイヤムーンに替った本馬はKris=Diesisの全きょうだいクロス4×3。粘着力あるマイラー血脈でまとめた配合だ。京王杯は1400mのHペースを中団から差し切り。洛陽Sではやや行きたがってひと伸び欠いた。ここは1F延長でペースダウンした際に折り合いがつくかがカギだろう。時計や上がりがかかるのはプラス。

距離○ スピード○ 底力○ コース◎

モズアスコット

母インディアは米G2コティリオンBCH勝ち。イトコには北米G1勝ち馬トゥオナーアンドサーヴなどがいる。母父ヘネシーは日本で成功しているストームキャット系でミスエルテの母母父でもあり、本馬とミスエルテは父フランケルも同じで全体の配合パターンも似ている。母方のナスキロ柔さで走る大箱向きマイラーで、距離は1400mがベストだろうが、マイラーズCのようにジワリと先行できればマイルG1でも面白い。

距離○ スピード◎ 底力○ コース○

リアルスティール

母母モネヴァッシアはキングマンボの全妹で、欧2歳女王ランプルスティルツキンの母。ディープ×ストームキャットはキズナ、エイシンヒカリ、サトノアラジン、アユサンなどと同じ。昨秋の毎日王冠でサトノアラジンを降しているのは強調材料だが、1800mがベストなのもたしかだ([4-1-2-1])。ディープ×ストームキャットにしてはストライドで走らないので斬れ味勝負では分が悪く、スローを前々で立ち回りたい。

距離○ スピード○ 底力○ コース○

リスグラシュー

母リリサイドは仏1000ギニーで1位入線(6着降着)。その父アメリカンポストは仏2000ギニーに勝った。芝マイルでみせる斬れ味は牝系譲りといえるが、父がハーツクライだしお尻も小さいので、体型や走りをみてもベストはもう少し長い距離だろう。東京向きなのは間違いないが、芝マイルで1分32秒ソコソコの高速決着になると、ピュアマイラーではないという部分が今回も弱点になるかもしれない。

距離○ スピード○ 底力◎ コース◎

レーヌミノル

祖母プリンセススキーはラジオたんぱ杯3歳牝馬S(G3・芝1600m)勝ち馬で、ダイワメジャー×タイキシャトル×ロイヤルスキーだからマイラー×マイラー×マイラーの配合のマイラー。ダイワメジャー産駒だけにパワーと粘りで走るタイプで、桜花賞勝ちの時計が稍重で1:34.5、マイルCS4着の時計が稍重で1:34.0、時計がかかった際に浮上する。今の東京芝はかなり高速なのでやはり雨が欲しいところ。

距離◎ スピード○ 底力△ コース△

レッドファルクス

母ベルモットはスティンガーやサイレントハピネスの全妹。父系はフォーティナイナーでも柔らかみのあるエンドスウィープのラインだし、いわゆるマッチョで筋力で走るスプリンターではない。しなやかさで短距離を走るタイプで、阪急杯も京王杯SCも58キロを背負って非常に強い内容だったようにベストは1400mだろう。スティンガーも京王杯連覇が最も斬れた。昨年が僅差3着でマイルでもあれぐらいは走れる。

距離○ スピード◎ 底力○ コース○

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