話題性豊富なラインナップで、目まぐるしく過ぎた2日間

2018年07月11日(水) 18:00


セレクトセールならではの“絶景”はいくら時間があっても足りず…

 9日、10日の2日間にわたり苫小牧市のノーザンホースパークで開催されていたセレクトセールが無事に終了した。

 セール結果についてはすでに様々な報道によって詳細に伝えられているのでここでは割愛させて頂いて、2日間の私自身の主な動きについて書かせて頂く。とてもセール全体を見渡せるような状態ではないまま、あっという間に時間だけが過ぎて行ったような気がするからだ。いつにも増して慌ただしいムードの漂うセールであった。

 おそらく、その原因は、相次ぐ高額馬、注目馬の登場によるところが大きい。初日、会場入りしたのは午前9時前のこと。セリ会場の、ステージに向かって右側の壁沿いにプレスセンターが設置されている。取材申請した各社(個人)に、それぞれデスクが用意され、PC用電源が確保されている。私の場所は「J-1」となっていた。ほぼ昨年と同じ場所であった。

生産地便り

プレスセンターの様子

 そこでまずPCを立ち上げたが、会場内は電波事情があまり良好とはいえず、PCの動きが遅い。今回もまた画像送信が主な業務になるのでまず「試験送信」してみるものの、なかなかスンナリとは送れない。その原因はおそらく回線が混雑しているためだろう。立ち写真を原寸大で送信するのは難しく、一度大幅に縮小し直す必要があった。一抹の不安を覚えながらも、取りあえず最初の画像送信は何とかうまく行った。

 そうこうしている間に次々に顔見知りの取材陣が到着する。東京から飛んできた連中は口々に「涼しい」と連発する。曇り空の苫小牧市は気温が15度前後で、半袖ではちょっと辛いくらいの気候だ。そんな彼らと挨拶したり、立ち話をしたりしている間に、セール開幕の時刻が迫る。

 セレクトセールでは、毎年、セリに先立ち、過去1年間のセール出身G1優勝馬、2歳重賞優勝馬の特別表彰が行なわれる。このセール出身のG1馬は数多く、今年も7人のオーナー(代理)が表彰を受けた。それを祝ってノーザンホースパークの人気ポニーが登場し、芸を披露するのもお馴染みの光景である。

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セール出身のG1馬の表彰式。今年は7名が表彰を受けた
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表彰を受ける野田みづき氏
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ポニーが芸を披露するお馴染みの光景も

 セレモニーが終わると、もう定刻の10時。さっそく、初日の1歳馬市場がスタートした。1番の上場馬が入場してくるのを見計らうようにして、場内からどんどん声がかかって行き、価格がみるみる間に上昇する。トップを切って登場したのはサマーハの2017、ハーツクライの牡馬で半兄にシャケトラ(日経賞)、半姉にモルジアナ(春風Sなど4勝)がいる。

 毎年、最初の上場馬は比較的高額になるのがセレクトセールだが、今年は、いきなり競り合いがヒートアップし、1番からいきなり億超えの落札価格(1億3500万円=税抜き)になった。慌てたのは取材陣で、さっそくカメラマンたちがズラリと並んで落札場面を収める。そして、すぐに外の立ち写真撮影現場に直行する。

 乱暴に言うと、ほぼこの行動パターンの繰り返しであった。初日は、233頭(名簿上では243頭)の上場馬のうち、前半の100番までの間に億超えの落札馬が18頭(初日全体では23頭)も出たことから、撮影→画像送信を反復しているうちに時間が経過してしまった。

 撮り逃しもあった。落札場面は早々に諦めて立ち写真の撮影のみに専念したつもりだが、プレスセンターに戻って送信している間に次の1億円馬が続いて出てしまうケースもあり、撮影できずに終わった馬もいる。また、億に届かずとも、話題性のありそうな上場馬や、注目の落札者などが続々と登場し、とても手が回らない状況に陥った。

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立ち姿撮影には多くの人が

 2日目も事情はそれほど変わらなかった。2日目の当歳市場では、まずセール開始直前まで全ての上場馬が一斉に展示される。午前8時から2時間、231組(名簿上では239頭)の母仔ペアが等間隔に並び、その間を購買関係者が1頭ずつ上場馬を見て歩く。

 これぞセレクトセールならではの“絶景”で、いくら時間があっても足りないほどだ。

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展示風景はまさに“絶景”の一言

 5月初めにカタログ用に依頼されて立ち写真を撮ったダイワパッションの2018(父ドゥラメンテ)もいた。ちょうどタレントのDAIGOさんがこの馬を見に来ている場面に遭遇した。周知の通り、皐月賞馬エポカドーロの半弟で、タイミングとしてはこれ以上ない好機に上場されることになったが、結果もまた7200万円という高額でノーザンファームに落札され、生産者の田上徹氏にとってもひじょうに満足の行く結果になったことだろう。

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立ち姿写真を撮ったダイワパッションの2018の姿も

 基本的には2日目も仕事の内容に大差はなかった。高額馬や注目馬が出ると立ち写真を撮り、送る。この繰り返しである。時間帯によって、プレスセンターのネット環境が混雑したり比較的空いていたりしてやや不安定だったが、それでも何とか画像を送信できたのは幸いであった。

 2日目は、雨予報になっており、セール開始後は終日降雨になるかも知れないと覚悟していたが、幸いにも午後かなり遅くなるまで天候が崩れずにいてくれて助かった。

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寒い雨の中での撮影風景

 ただ、体感温度は低く、2日間とも涼しいを通り越して「寒い」くらいの気候であった。東京から来ていた友人知人たちはみんな「東京は気温がここの2倍にはなっている(15度→30度)だろうから、帰りたくない」などとぼやいていた。

 気温の低さもさることながら、このところの北海道の悪天候には驚くばかりで、セレクトセール終了後、友人たちを千歳空港に送り届けた帰り道、いきなり雨脚が強くなり、そのうちに豪雨になってしまった。ワイパーを最速で動かしながら見通しの悪い中を2時間走り続けて何とか無事に帰宅できたが、苫小牧〜日高沿線はずっと雨であった。

 余談ながら、一番牧草がどんどん刈り遅れており、一雨ごとに品質が低下してきている。収穫しようにも、この不安定な空模様がかれこれ1ヶ月近く続いており、終日カラッと晴れる日がほとんどないまま7月中旬になってしまった。夏らしい気候になるのはいつのことになるだろうか。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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