【有馬記念】豊&キタサンブラック伝説完結 誰も止められなかった集大成の快逃劇

デイリースポーツ

2017年12月25日(月) 09:10

 有馬記念を制したキタサンブラックと武豊騎手と北島三郎オーナー(馬の左)

 「有馬記念・G1」(24日、中山)

 まさに独壇場だ。ラストランとなったキタサンブラックが、断然の1番人気に応えて有終の美を飾った。武豊に導かれて危なげない逃げ切り勝ち。JRA最多タイのG1・7勝目をつかみ、獲得賞金も歴代トップに立った。まだ現役を続けられる-。そう感じさせるほどの完勝劇。歴史的名馬は惜しまれながらターフを去る。

 影をも踏ませぬ完勝劇で締めた。クリスマスイブのキタサンブラック最終章。武豊が見事な“V締め”を全国のファンに贈った。

 迷いはなかった。好発を決めてハナへ。「スタートが良ければ先手を取ろうと思っていた」。15頭を引き連れてのラストラン。一完歩、一完歩をかみしめるように駆ける。先頭のまま迎えた最終コーナー。後続を待つ必要はない。「手応えが良かった。昨年よりも強くなっていると感じていた」。相棒の実力と出来の良さを信頼して、早めにスパート。後続の“渋滞”を尻目に、大歓声を受けながらゴールラインを駆け抜けた。

 10万人の“ユタカコール”が祝福する。「ホッとした。どうしても勝ちたかった」。引退レースのVは90年オグリキャップ、06年ディープインパクトに続く3回目。そんなユタカでも「緊張した」と吐露するほどの大一番だった。ファン投票1位で出走し、単勝も1・9倍の圧倒的な人気。「楽観視することは一つもなかった。1メートル、1メートルを丁寧に乗って、1メートルずつクリアした」と会心の騎乗を振り返った。この日の中山では一鞍入魂。他のレースの依頼を断り、ブラックのラストランのみに集中して、見事にミッションを完遂してみせた。

 国民の馬。自身がこう表現する歴史的名馬だ。負けた時の悔しさも忘れていない。有終V、そしてJRA最多タイのG1・7勝目へ導きたかった。「集大成という気持ちがあった。結果の大きさは昨年の2着で分かっているから。コンビを組めて、騎手冥利(みょうり)に尽きる」とうなずいた。

 レース後はキタサンブラックのお別れセレモニーに参加。北島オーナーからは歌うことも求められた。「サビだけね。歌手じゃなくて騎手なので。もし負けていたらと思うと…ねぇ…。勝って良かった」と笑みを浮かべる。

 無事是名馬-。王道G1は皆勤で出走した。「すごいG1ばかり」と7つの勲章に誇らしげ。ひとつだけ惜しまれるとすれば、かなわなかった海外遠征だろうか。「それを言うと、きょうがなかったかもしれない」。流れに逆らわなかったからこそ、最高のエンディングでドラマが完結し、21年には産駒と巡り合える。「種牡馬として成功する。(騎手を)辞められない」。2世と歩む新たな道を楽しみにする名手は「成長させてもらった。“ありがとう”しかない」と感謝の言葉を送った。日本競馬史の記録に残る7冠馬の蹄跡は、ファンの記憶にもしっかりと刻み込まれた。

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