JRA通算4000勝達成の武豊騎手 サイレンススズカについて、いま語れること

2018年10月04日(木) 19:00

武豊騎手(著)による新刊『名馬たちに教わったこと 〜勝負師の極意III〜』

 9月29日、阪神10R・芦屋川特別でメイショウカズヒメが優勝し、武豊騎手が史上初のJRA通算4000勝を達成しました。

 この度、双葉社よりこの偉業達成のタイミングで、武豊騎手(著)による新刊『名馬たちに教わったこと 〜勝負師の極意III〜』が発売されます。10月23日に全国発売、一部都内書店やamazonなどのネット書店では10月20日から購入可能となります。

 4000勝には4000の物語があります。そのひとつひとつを思い出しながら、今回は武豊騎手がこれまで出逢った33頭とのエピソードを綴っていきました。その中から稀代の快速馬・サイレンススズカとの思い出を抜粋でお届けします。
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 もしも……もしも……、あの府中の4コーナーを、何事もなく回っていたら、どうなっていただろう……。今でも、ふとした拍子に、そんなことを考えてしまうことがあります。20年経った今でも、彼のことを思い出すと、喉に刺さった棘のようにちくりと胸が痛みます。

 スタートからスピードの違いで先頭を走り、道中はスピードを維持しながらしっかりと折り合ってリズム良く進み、最後の末脚は追い込み馬よりも切れる……究極の強さを追い求めれば、行き着くのはそこです。そして、サイレンススズカは、それを実現できたサラブレッドでした。

 自分から橋田満先生にお願いし、はじめてそのスピードを体感したのは、97年の香港国際カップ(芝1800メートル)です。レースは5着に終わりましたが、1600メートルの通過タイムは、同日に行われた香港マイルの勝ち時計を上回るペースでした。そこから、バレンタインS中山記念小倉大賞典と3連勝。そして迎えたのが、今も伝説として語り継がれる「金鯱賞」です。

――彼が彼の走りをしたら、負けない!

 レース前は自信にあふれていました。そしてその結果は、その自信をはるかに上回る、圧倒的な大勝利。乗っていた僕が呆れるほどの強さでした。

――今日のような競馬ができたら、もう世界中のどんな馬が相手でも負けません。

 レース後、みなさんの前で宣言した言葉も、100%本気のものです。

 続く、秋初戦となった「毎日王冠」では、無敗の4歳馬(当時=現3歳)エルコンドルパサーグラスワンダーを完封。1000メートルを57秒というハイペースで通過したにもかかわらず、上がり3ハロンは驚異の35秒1――。エルコンドルパサーに騎乗していた同期のマサヨシ(蛯名正義)に、「影さえも踏めなかった」と悔しがらせた走りは、“怪物”を通り越し、サラブレッドとしては“究極”の強さでした。

 サイレンススズカとの思い出は、たくさんあります。語るべきことも、まだ、まだ、あります。でも、今もまだ、その傷口は膿んでいて、瘡蓋をはがすと、血が噴き出してきます。忘れることは生涯ないと思いますが、いつか……そう、いつか……傷が癒え、瘡蓋を剥がしても血がにじむ程度になることがあったら、そのときは、彼の話をしたいと思います。
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出版社:双葉社
発売日:2018/10/23(全国発売)
定価:1,100円+税

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