2008年07月15日(火) 23:16
このところやや下火だった「セレクトセール」における外国人購買が、今年は久しぶりに大幅な増加を見せている。
シェイク・モハメドの代理人として知られるジョン・ファーガソン氏が参戦している他、昨年に続いて香港ジョッキークラブも担当者を派遣。ヨーロッパの大手商社ブランドフォード・ブラッドストックや、世界各国にクライアントのいるトップエージェント、ジョン・マコーマック氏ら、世界のプレミア市場では必ずと言って良いほど顔を見せる人たちが、今週は苫小牧のセレクトセールに参集している。
今年は洞爺湖サミットの影響でセレクトセールの開催が1週間遅くなり、ケンタッキーで行われる1歳セールのメジャーなマーケット「ファシグティプトン・ケンタッキーイヤリング」と日程が重なったにも関わらず、これだけの顔触れが日本に集まると言うのは、世界の競走馬流通市場における画期的出来事と言えよう。
また、北半球の市場へはこれが初参戦となるオーストラリアの馬主ネイザン・ティンクラー氏の参戦も、話題の1つである。炭鉱を所有するティンクラー・グループの総帥なのだが、御本人は弱冠31歳という青年実業家で、昨年あたりからニュージーランドやオーストラリアの市場で活発に購買を行うようになった新興馬主である。馬を買うだけでなく、牧場も買収しており、今後は生産と競馬の両面で、大々的な世界戦略を考えておられるという。
今回は、初日に5頭の1歳馬を総額1億2950万円で購入。2日めの当歳市場でも、ディープインパクト産駒としては最初に登場した牝馬を落札するなど、旺盛な購買意欲を見せた。
現在のところ、外国人は日本で馬主になることは出来ないが、今後このルールが変わることがあれば、ぜひ日本でも馬主になりたいと語ったティンクラー氏。今回の購買馬については、フランスで競馬をさせる予定だという。
残念ながら、セレクトセール初日の結果は、総売り上げも平均価格も前年を25%ほど下回る数値を記録した。かつてセレクトセールと言えば、一般景気の動向とは無縁の、ここだけ異次元の空間だったが、さすがに景気後退の風がここまで強くなると、セレブの市場と言われたこのマーケットも逆らいきれなかったようだ。
今回もし、外資によるサポートが無ければ市場はもっと冷え込んでいたわけで、海外からの資金流入をいかに促すかが、今後の競走馬市場における大きなポイントとなりそうだ。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。