2008年07月22日(火) 23:50
今週の土曜日(7月26日)、英国のアスコット競馬場で、12f路線の前半戦の総決算「キングジョージ6世&クイーンエリザベスS」が行われる。
21日(月曜日)、現地時間の正午に締め切られた「5日前登録」で、エントリーを行った馬は10頭。その中で、ブックメーカー各社がいずれも2倍を切るオッズを掲げて大本命に推しているのが、エイダン・オブライエン厩舎の4歳牡馬デュークオブマーマレイド(父デインヒル)である。
元来がクラシック候補として期待をされていた馬だったのだが、年度代表馬ディラントーマスの2着となったG1愛チャンピオンSをはじめとして勝ち切れない競馬が続き、結局6戦して勝ち星を挙げることが出来ずに3歳シーズンを終えたデュークオブマーマレイド。ところが、古馬を迎えて「イマイチ君」のキャラが一変。緒戦となったロンシャンのガネー賞(仏G1、2100m)を制して重賞初制覇をG1で飾ると、続くカラのタタソールズGC(愛G1、10f110y)も連勝。前走6月18日にロイヤルアスコットで行われたプリンスオブウェールズS(英G1、10f)でも、後続に4馬身の差をつける圧倒的な強さを発揮してG1・3連勝を達成。磐石の強さで、キングジョージを目指すことになった。
ポイントは、デュークオブマーマレイドにとって初めてとなる、12fという距離にありそう。父デインヒルで母の父キングマンボだから、配合的には12fを守備範囲としても何の不思議もないが、一方で母ラヴミートゥルーの現役時代の主戦場は7fから8fであった。スウィンリーボトムからの長くてきつい坂を登り切ってなお、デュークオブマーマレイドにスタミナが残っていれば、楽勝のケースも考えられるが、一方でゴール前の勝負処でエンストの可能性もあるように思う。
各社3.5倍から4倍のオッズで2番人気に推しているのが、5歳牡馬のユムゼイン(父シンダー)だ。昨年はキングジョージ2着、凱旋門賞2着と、デュークオブマーマレイド同様の「イマイチ君」だったこの馬。今季2戦目となったエプソムのコロネーションC(英G1・12f)で前年の愛ダービー馬ソルジャーオブフォーチュンの2着になった時には、「勝負弱さ健在」を思わせたのだが、前走6月29日に行われたサンクルー大賞(仏G1、2400m)では鋭い切れ味を発揮してソルジャーオブフォーチュンに雪辱。1年9か月振りの勝ち星を挙げて、自身2つめのG1獲得した。スタミナでは明らかにデュークオブマーマレイドを上回っており、力の競馬になった時にはこの馬に勝機が巡る場面もありそうだ。
3番人気以下は、ブックメーカーによってまちまち。
コーラルが7.5倍のオッズで3番人気に掲げているのが、4歳牡馬マッカーサー(父モンジュー)だ。ダービー馬モティヴェーターの全弟という良血馬で、当然のようにクラシックへの大きな期待をかけられていたのだが、愛ダービートライアルS・3着、セントレジャーの前哨戦グレートヴォルティジュールS・3着など、これもまた「イマイチ君」だったのが、3歳時のマッカーサーだった。そしてこの馬も、古馬を迎えてキャラが変わり、今季2戦目のオーモンドS(英G3、13f89y)で重賞初制覇。続くコロネーションCでソルジャーオブフォーチュンの3着に健闘すると、前走6月21日にロイヤスアスコットで行われたハードウィックS(英G2、12f)では息の長い末脚を繰り出して優勝し2度目の重賞制覇。本格化の兆しを見せている今、良血馬ならではの頂点まで突き抜ける急上昇があってもおかしくないと、期待するファンは多い。
ラドブロークスが9倍のオッズで3番人気に支持しているのが、5歳牡馬アスク(父サドラーズウェルズ)だ。今季緒戦のゴードンリチャーズS(英G3、10f7y)で3度めの重賞制覇を果たした後、プリンスオブウェールズSでは2番人気で5着と不甲斐ない競馬をしたが、4歳時に13f89yのG3オーモンドSを勝っていたり、3歳時にセントレジャーで入着していたりと、適性的には10fより12fに向いていることは明らか。更にプリンスオブウェールズSの時は、この馬には不向きな固い馬場だったことを鑑みると、馬場が軟らかければプリンスオブウェールズS時にデュークオブマーマレイドつけられた6馬身の差を逆転出来ると見るファンも少なくない。ラドブロークスがアスクと横並びで、ウィリアムヒルが単独で、それぞれ9倍のオッズで3番人気に推しているのが、昨年のセントレジャー(英G1、14f132y)勝ち馬である4歳牡馬ルカーノ(父ダイナフォーマー)だ。今季は緒戦のブリガディアジェラードS(英G3、10f7y)11着、続くサンクルー大賞6着と出足が悪かったが、前走7月10日にニューマーケットで行われたプリンセスオブウェールズS(英G2,12f)を制して、今季初勝利を挙げるとともに自身3つめの重賞を獲得。ここへきて調子を上げている馬として、直前に人気が急上昇している。
キングジョージの模様は27日(日曜日)に、グリーンチャンネルの競馬中継内や、各競馬場・ウィンズの場内で放映される予定なので、ぜひ御注目いただきたい。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。