2008年08月05日(火) 23:50
先週のこのコラムで、アメリカに出現した大物2歳馬の話題をお届けしたが、ヨーロッパにも、来年の2000ギニーへ向けて大手ブックメーカーが早くも10倍を切るオッズを掲げる、期待の若駒が登場している。
コーラルが6倍、ウィリアムヒルが7倍というオッズで来年の2000ギニーの本命に推しているのは、エイダン・オブライエン厩舎のマスタークラフツマン(父デインヒルダンサー)だ。
アイルランド生まれの母ストレートドリームスが、アメリカで競馬をして3歳時に2勝。そのままアメリカで繁殖牝馬になった後、02年に故郷のアイルランドに戻り、06年に産んだ子がマスタークラフツマンである。2つ年上の姉に、アメリカで走ってG3ロカストグローヴHを含めて5勝を挙げたジェニュインデヴォーション(父ロックオヴジブラルタル)がいるから、ストレートドリームスは現役馬としてよりも明らかに、繁殖として優秀な馬と言えそうだ。
いとこに、G1ローマ賞を含めて重賞3勝のプレッシング(現役、父ソヴィエトスター)、同じくいとこに、G3ジョンドイルS勝ち馬マズナ(父ケイプクロス)らがいて、近親に凱旋門賞馬サーキーがいる牝系。超良血とは言えないまでも、活力のある悪くないファミリーの出身と言って良さそうである。
父デインヒルダンサーは、1000ギニー勝ち馬スペシオーサや、クイーンエリザベス2世S勝ち馬ホエアオアホエンなどコンスタントに活躍馬を輩出し、リーディング・トップ5の常連となっている欧州の超一流サイヤーだ。なおかつ、シャトルで渡った豪州でもプライヴェートスティーアやショワジールといったチャンピオンを出しており、その父デインヒルの多彩さを色濃く受け継いだ、デインヒルにとっての最良後継馬の1頭となっている。
エイダン・オブライエン厩舎の所属馬となったマスタークラフツマンは、5月5日にカラで行われた6Fのメイドンでデビュー。随分と早いデビューに見えるが、オブライエン厩舎で大物と目された馬には良く見られるパターンで、レース経験を積むことを主眼とした緒戦を鮮やかに制して初勝利。続いて6月29日にカラで行われた、アイルランドで2歳牡馬が走れる重賞としては一番最初に行われるG2レイルウェイS(6F)に出て、ここも連勝。早くも重賞初制覇を飾った。続いてマスタークラフツマンは、7月27日にカラで行われた6FのG1フェニックスSに駒を進め、ここも難なく突破して3連勝でG1制覇を達成。来季のクラシック候補としてもてはやされることになったのである。
フェニックスSにおけるマスタークラフツマンは、単勝5倍の3番人気だった。ロイヤルアスコットのG2コヴェントリーS勝ち馬アートカノスール(父ラッキーストーリー)や、カラのG3アングルシーS勝ち馬ブッシュレンジャーの方が評価が上だったのだが、蓋を開けてみればマスタークラフツマンが2着のアートカノスールに4馬身半の差をつける圧勝。管理するエイダン・オブライエンは、今季15個めのG1を手中にすることになった。
アメリカのデザートパーティー同様、マスタークラフツマンの連勝がどこまで伸びるかに注目したい。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。