2008年08月16日(土) 23:50
ところで、シャーガーCがどういうイベントなのか、については、JRAのホームページなどを見ても詳しい記述は見あたりません。そこで今回は、今年の“大会概要”をご説明させていただきます。
シャーガーCは、世界のトップジョッキーが一堂に会して腕を競う国際騎手招待競走。日本で言えばワールドスーパージョッキーズシリーズのようなものですが、ユニークなのは団体戦の要素が加味されているというところでしょう。今年は、イギリス選抜としてH・ターナー、L・デットーリ、S・サンダース、アイルランド選抜としてR・ヒューズ、J・スペンサー、K・マニング、ヨーロッパ選抜としてG・モッセ(フランス)、M・デムーロ(イタリア)、H・カラタシュ(トルコ)、他地域(世界)選抜としてR・ベイズ(北米)、J・リカルド(南米)と武豊騎手の総勢12人が参戦しました。
レースは全部で6つ。第1レースが5fの「ダッシュ」、第2レースが牝馬限定7fの「ディスタフ」、以下、6fの「スプリント」、2マイルの「ステイヤーズ」、1マイル4fの「チャレンジ」、1マイルの「マイル」と続きます。各レースとも10頭立て。12人の騎手のうち10人が騎乗し、2人は欠場。これで各騎手は6レース中5レースに騎乗することになります。そして、1着には15点、2着に10点、3着に7点、4着に5点、5着に3点のポイントが与えられ、その合計ポイントで個人とチームの優勝が争われました。騎乗馬が出走取り消しになった場合に4点が与えられるのもおもしろいところ。順位争いに微妙に影響することがあるからです。
今年は、武騎手が「ダッシュ」と「ディスタフ」の連勝で30点を獲得してまずリード。しかし、G・モッセ騎手が「ディスタフ」2着、「スプリント」1着、「ステイヤーズ」2着で35点を挙げて逆転します。さらに、M・デムーロ騎手が「スプリント」取り消し、「ステイヤーズ」3着、「チャレンジ」1着で26点、H・ターナー騎手が「ステイヤーズ」1着、「チャレンジ」3着で22点を獲得して追い上げ、最終戦の「マイル」を迎えました。ところが、このレースでM・デムーロ騎手は欠場、得点を加算するチャンスはなく、個人の優勝争いはモッセ、武、ターナー騎手の3人に絞られました。
例えば最終戦で武騎手が1着、モッセ騎手が3着以下とか、武騎手が3着でモッセ騎手が6着以下になれば、武騎手の逆転優勝という可能性もあったのですが…。結果は3番人気の馬に乗ったモッセ騎手が1着。武騎手はブービー人気の馬を大激走させたものの勝ち馬から2馬身差の3着に終わり、惜しくも優勝を逃しました。
一方、チーム戦は、50点を挙げたモッセ騎手と26点のデムーロ騎手がいたヨーロッパ選抜がダントツの優勝。武騎手がキャプテンを努めた他地域(世界)選抜は2位、以下、イギリス選抜、アイルランド選抜と続きました。他地域(世界)選抜は武騎手が37点を稼いでチームを引っ張りましたが、チームメイトの2人の1万勝ジョッキーのうちベイズ騎手が6、2、8、10、2着で20点にとどまり、J・リカルド騎手に至っては8、7、6、6、8着で無得点とふるわず、ヨーロッパ選抜の独走を許してしまいました。
ちなみにシャーガーCのタイトルは、81年のダービー馬で、その後身代金目的で誘拐され生死不明となってしまったシャーガーにちなんだもの。招待騎手競走のタイトルが馬名というのは、よく考えるとなんだかヘンですが、シャーガーに対する強い思い入れの表れと理解しておきましょう。
合田さんのコラムにもあるように、イギリスでは大人気のこのイベント。武騎手のコメントや現地の競馬情報紙のホームページなどに載ったスナップ写真を見ても、出場騎手自身が楽しんでいる様子が伝わってきます。だからファンも楽しめるんですね。これからも日本のトップジョッキーが必ず選ばれ、大活躍することを期待しています。
では最後にクイーンSの狙いを。ここは月並みかもしれませんが、レジネッタに貫禄を見せてもらいましょう。エフティマイアとの2頭軸で3連複を“当てに行きます”。もうそろそろ当たってもいいでしょう!? では、また来週。
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矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。