2008年08月19日(火) 23:50
8月15日から18日まで、フランスのドーヴィルで行われた「アルカナ・オーガスト・イヤリングセール」は、総売り上げが前年比6.72%アップで歴代のレコードとなるの39,966,000ユーロ、平均価格が前年比13.25%アップの111,017ユーロ、中間価格が前年比17.7%アップの7万ユーロ、昨年は21.4%だったバイバックレートが、今年は23.4%という市況を残して終了した。
ヨーロッパで最も早い時季に行われるこのセールは、その年のイヤリングマーケットがどんな動き方をするかの指針になると言われているが、誰もが予想だにしていなかった好結果に、関係者からは一様に、“Pleasant surprise! (好ましい驚き)”との声が上がっている。
昨今の一般景気の動向を鑑みれば、開催前の市場周辺に悲観論が漂っていたのも当然で、ましてや昨年のこのセールが一昨年に比べて大きく売り上げを伸ばしていただけに、「昨年並みを維持できれば、御の字」というのが、大方の見るところだったのである。
それでは、「驚きの」好結果をもたらした原因は何だったのか。
まずは、上場馬の質が大変高かったことは確かである。ことに、オープニングセッションとなった15日の品揃えは、ほぼ同じ時季にアメリカで行われた「ファシグティプトン・サラトガイヤリングス」を明らかに上回っており、この市場としては過去最上級と言っても過言ではないレベルだった。
これに敏感に反応したのがトップバイヤーたちで、シェイク・モハメド御本人の御出馬があったのをはじめ、メジャーな市場には必ず顔を揃える大物がこぞって参集。一般景気とは掛け離れたマネーフローが出来上がった。
最高価格馬となったのは、上場番号30番の父ガリレオの牡馬だった。血統的には、母、祖母ともに準重賞の勝ち馬と、カタログに8頭いた父ガリレオの牡馬の中でも地味な方だったが、馬の出来が非常に良く、7月のセレクトセールにも参戦したオーストラリアの馬主ネイザン・ティンクラー氏の代理人が、77万ユーロで購買した。同馬はこのままフランスに留まり、リチャード・ギブソン厩舎からデビューする予定とのことだ。
日本人によると見られる購買は、1頭平均15万ユーロで3頭だった。昨年のこの市場における日本人購買は1頭(9万ユーロ)だっただけに、マル外パワーという点ではおおいなる前進となった。
価格的に最も大きかったのは、21万ユーロで購買された父ガリレオの牝馬(上場番号232番)だった。ガリレオらしい、線の綺麗なエレガントな馬で、大きくはないが俊敏さと弾力を感じさせる馬体の持ち主であった。POG的にもおおいに気にかかるところだが、場合によっては欧州で競馬をする可能性もあるようだ。
確実に日本に来る馬では、17万ユーロで購買された上場番号329番に大物の相がある。これも父がガリレオで、母の父がダルシャーン。その血統通り、馬体の作りもヨーロピアンタイプの馬だ。海外セールでの購買経験という点では現役でも屈指という調教師さんが、自ら現場に足を運んで、敢えてこういうタイプを選んだところに、底知れない魅力を感じる馬である。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。