競馬場とご当地ソング

2008年08月23日(土) 00:00

 夏競馬もそろそろ終盤戦。今週はローカル競馬の重賞の中で最も格上といっていい札幌記念が行われます。有馬記念馬マツリダゴッホには貫禄を示してほしいところですが、春のクラシックを盛り上げたマイネルチャールズの走りにも期待しています。

 ところで、みなさんは「好きですサッポロ」という曲をご存知ですか? 1980年代、歌謡曲全盛の時代に作られたいわゆるご当地ソングで、さっぽろ雪まつりのテーマソングにもなってヒットした曲です。最近、Jリーグ・コンサドーレ札幌の応援歌としてカバーされましたから、ご存知の方も多いと思うのですが。で、この曲を札幌記念のレース前にマーチングバンドが演奏していたのを聴いたことがあります。その時ひらめいたのが、看板レースをテーマソングで盛り上げたらいいのに、というアイデアです。

 アメリカのケンタッキーダービーには「マイ・オールド・ケンタッキーホーム」(フライドチキンのCMで流れるあの曲)、ベルモントSには「ニューヨーク・ニューヨーク」(ヤンキースタジアムの試合終了後にも流れる曲)、プリークネスSには「メリーランド・マイメリーランド」(言葉で説明するのは不可能ですが、ゼッタイ聴いたことがあるはずの曲)が付き物。観客による大合唱がレース前の恒例行事になっています。先日終わったばかりの夏の高校野球にも、「栄冠は君に輝く」という“国宝級”(だと私は思っています)の大会歌がありますね。この季節にこの曲を聴かないと、夏が来た気がしないほど。開会式でこれが合唱されて大会旗が掲揚されると、「さぁ始まるぞ」と気合いが入ります。アメリカ三冠レースに付き物の3曲も、これがなければ始まらないというものでしょう。お祭りムードを高めるには、そういう曲が必要です。札幌記念のテーマソングは「好きですサッポロ」でいいとして、さぁ、そのほかの競馬場だったら、どのレースにどの曲を当てはめましょうか?

 まず函館競馬場。看板レースはもちろん函館記念。これにはやっぱりサブちゃん(北島三郎さん)の「函館の女(ひと)」でしょう。次に福島競馬場。七夕賞が伝統の一戦です。ところが、福島のご当地ソングって、まったく思い浮かびません。福島県にエリアを広げれば、美空ひばりさんの「みだれ髪」(いわき市の塩屋埼が舞台)がありますが、レースの前に歌うような曲じゃなさそうですし。ここは、同じ東北ってことで、千昌夫さんの「北国の春」でどうですか?

 中山競馬場の看板レースは有馬記念。千葉のご当地ソングなら「矢切の渡し」です。これを歌って有馬記念が盛り上がるかどうかはわかりませんが、ほかに見当たらないのでひとまずこの曲にしておきます。東京競馬場は「中央フリーウェイ」。ちょっと歌いにくい曲ですが、歌詞の中に東京競馬場が出てくるので、これっきゃないでしょう。ここ数年、日本ダービーのレース前は「君が代」の独唱が恒例になっていますから、こちらはジャパンCの前にいかがでしょう?

 新潟競馬場は新潟記念。ご当地ソングには美川憲一さんや黒沢明&ロスプリモスの「新潟ブルース」があります。個人的には小林幸子さんの「雪椿」も好きですねぇ。かたや“ムード歌謡”、かたや“演歌”で、「好きですサッポロ」のような軽快さはありません。でも、前年のヒット曲を選抜高校野球の入場行進曲にアレンジしている人に頼めば、何とかしてくれるはずです。

 京都競馬場は菊花賞。これには、渚ゆう子さんの大ヒット曲「京都慕情」がいいでしょう。表彰式のプレゼンター、祇園の舞妓さんにちなめば、「月はおぼろに東山」で始まる「祇園小唄」という曲もありますが、ちょっと艶っぽすぎますね。阪神競馬場は宝塚記念。こちらは、宝塚歌劇団の“タカラジェンヌ”が表彰式のプレゼンターなので、「すみれの花咲く頃」で決まりです。「すみれの花咲く頃、はじめて君を知りぬ」というおなじみの歌詞が出てくるのは曲の中盤。ここから歌ってもいいでしょう。大リーグのセブンスイニングストレッチで歌われる「テイクミーアウト・トゥ・ザ・ボールゲーム」も、実は原曲の一部分を歌ってるんですから。

 小倉競馬場は小倉記念。村田英雄さんの「無法松の一生」でシブく決めましょう。ただし、「度胸千両入り」だと長すぎますので、1番だけということで(わかる人にはわかる話です)。

 あれ、中京競馬場を飛ばしちゃいましたね。高松宮記念か中京記念のテーマソングを選ばなきゃいけません。でも、名古屋のご当地ソングは、福島以上に思い浮かばないんですよ。以前、ラジオ大阪「ドラマティック競馬」の濱野圭司アナウンサーとカラオケで「全国縦断ご当地ソング大会」を開催したときも、名古屋の歌は出てきませんでした。あるにはあるんですが、どれも聞き覚えがなくて歌えなかったんです。ここは中日ドラゴンズの応援歌「燃えよドラゴンズ」で急場をしのぎましょう。

 今回は、以前、「東京スポーツ」のコラムに書いた、「好きですサッポロ」を札幌記念のテーマソングに、という話と、「月刊ハロン」に書いた、地方競馬とご当地ソングの話を合わせて書き直したものです。なんでまたその話を、と思われるかもしれませんが、ここしばらくカラオケに行っていないもので、禁断症状が出ちゃったようです。あしからずご了承ください。ついでに、私は「好きですサッポロ」の替え歌「好きですばんえい」を作って、よく歌っています。それにしても、ここで取り上げた曲って、どれも懐メロばっかりですね。私ももう、いい歳なんだなぁ…。

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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