ディープスカイ号優勝祝賀会

2008年09月30日(火) 23:49

 やや古い話題になってしまったが、去る9月22日、浦河町総合文化会館ふれあいホールにて、第13回NHKマイルCと第75回日本ダービーを制覇し、変則ながら二冠馬となったディープスカイ号の優勝祝賀会が開催された。

 主催は、同馬を生産した(有)笠松牧場のある浦河町荻伏(おぎふし)地区の荻伏軽種馬生産振興会。午後6時より、同振興会会長・中山一寿氏の主催者挨拶にて祝賀会が幕を開けた。

 会場内にはひな壇が設けられ、生産者である水上行雄氏とふじ子夫人、馬主の深見敏男氏と昌代夫人、そして昆貢調教師、四位洋文騎手が盛大な拍手とともに厳かに入場し、着席した。

 ひな壇に勢揃いしたディープスカイの関係者が改めて一人ずつ紹介され、まずは花束贈呈。その後、生産牧場に各団体より記念品が次々に贈呈され、来賓からの祝辞が続いた。

 日高支庁長・前山啓二氏、道議会議員・金岩武吉氏、浦河町長・谷川弘一郎氏の3人が次々にマイクの前に立ち、ディープスカイの偉業を称えた。谷川弘一郎町長は、祝辞の中で、来春より新運営母体でスタートする予定のホッカイドウ競馬について触れ、「日高管内を挙げてバックアップして行くつもりだ」と力強く決意を述べた後、馬主の深見氏に「どうか、ホッカイドウ競馬にもぜひ所有馬を入厩させて走らせて頂きたい」と熱いエールを送った。

 司会者により祝電が披露され、恒例の鏡開き。用意されたのは北海道の代表的な銘酒「千歳鶴」の樽酒。ひな壇に並んだ関係者がそれぞれ木槌を手に掛け声とともに樽を開け、JRA日高育成牧場副場長・山野辺啓氏とHBA日高軽種馬農協組合長・荒木正博氏が受杯をし、そのまま荒木組合長の発声で乾杯となった。

鏡開き

 祝宴に入ってからは、場内に用意された大型スクリーンにNHKマイルCと日本ダービーを制したディープスカイの勇姿が映し出され、それぞれのレースにゴールした瞬間には会場から大きな拍手が湧き起こった。また祝宴に華を添えるべく、浦河若駒会の面々による「よさこいソーラン」なども披露され、会場を盛り上げた。

深見敏男氏

 祝宴が終わりに近づき、馬主の深見敏男氏は「日本ダービー優勝は、まさしく家庭の宝とも言うべき快挙であり、関係者の皆様に深く感謝したい」と謝辞を述べ、また生産者の水上行雄氏は「2つのGIレースは皆様の熱い応援のおかげ。馬主にも恵まれ、昆調教師や四位騎手などの厩舎関係者の努力の賜物であり深く感謝申し上げる次第。今後とも従業員ともども強い馬作りに邁進する所存ですのでご指導ご鞭撻を賜りたい」と締めくくった。

水上行雄氏

 最後は、会場を埋め尽くした約200人の参会者とともに、ひだか東農協組合長・谷口貢氏による万歳三唱で祝宴は無事終了した。

 浦河産馬としては一昨年のメイショウサムソン以来2年ぶりだが、荻伏産馬となると、11年前のサニーブライアンまで遡らなければならない。だいたいこの同じ町に軽種馬生産振興会という名の生産者団体が2つに分かれて存在していること自体が不自然なのだが、その昔、荻伏村と浦河町はそれぞれ別の町村でもあった。合併したのは昭和31年というからもう50年以上も前のこと。しかし、未だにこうして浦河と荻伏は、別々に組織を作り現在に至っている。因みに、毎年発行される生産馬名簿の類も、浦河と荻伏とは明確に区分されている。

 さて、余談だが、こうしたGI競走の優勝祝賀会にも、年々目減りしつつある生産牧場賞の影が微妙に影響している。今回は6000円の会費制で開催されたが、過去には、生産牧場や馬主が全ての費用を負担して実施された例もある。とはいえ、その費用たるや大変な金額に上り、今となっては簡単にできることではなくなった。

 今年の交付基準一覧表によれば、日本ダービー優勝で、生産牧場賞が200万円、繁殖牝馬所有者賞が500万円の計700万円。ただし、仮に、オーナーから預かった繁殖牝馬の産駒が優勝した場合には、当然のことながら、生産牧場賞のみの交付である。

 今を去る10年前の平成10年度には、日本ダービーに優勝すると、一般生産者賞740万円、繁殖牝馬所有者賞740万円。そしてディープスカイを例にとると、父がアグネスタキオンでいわゆる父内国産馬となるためさらに200万円が加算され、計1680万円にも達する交付金であった。仮に、それが市場取引馬だったりすると、210万円が上乗せされ、1890万円にもなったのである。

 GI競走優勝の名誉は変わらずとも、こうした部分は、かなり事情が一変してしまった。これも元を糺せば4兆円から2兆8千億円まで馬券売り上げが目減りしてきていることに起因する。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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